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11. KICKOFFではなく、謝罪会見

2015年1月30日土曜日。

東京茅場町にあるco−ワーキングスペース「co-Edo」さんの一画。
(ちなみにco-Edoさんは、令和となった今でもリーマンサットがとっってもお世話になっている場所。田中さんいつもありがとうございます)
https://www.coworking.tokyo.jp/

壁際にあるスクリーン脇に長机が一つ。
それに対面して長机と椅子がいくつも並べてある。
2014年末に展示会で「年始にキックオフミーティングします!」と息巻いていたときは、まあ10人も来れば上々でしょ、と思っていた。
だって、ぼくが聞く側だったらすっごい怪しいもん。人工衛星作りのノウハウも何もない素人5人で集まって「二年以内に人工衛星打ち上げる」なんて荒唐無稽すぎる。数人面白がってくれる人がいたらいいなあ、みたいに思っていたのに。

でも、本日の参加者は数十人規模。
いや、ほんとマジか、と。
だって、休みの日に貴重な時間と交通費と会場利用費払ってきてくれるわけですよ数十人が。
それに対してぼくらは目的以外なんもないわけですよ。
お金とかノウハウとか当然ない。全くない。志はあるけれど、それ以外は全然もうどうしようもないくらいにない。

これからいったい何が起こるのか。
ずらりと机に人が並んで、なんも持ってないぼくらに相対するわけでしょ。
それで、たぶん、
「素人がたった5人集まって人工衛星が作れるんですか?」
「お金はどうするんですか?」
「どうして何も決まってないんですか? 本当にできるんですか?」
「そもそもそんなことしてどうなるんですか?」
「宇宙開発なめてます?」
とかとか、そういう厳しい質問を投げかけられるに違いない。
表面的な答えを出すことはできる。でも詳細に入ったら全然ダメ。
そんな感じで最終的には「なんかもう……ホントすんません」みたいに5人で頭を下げるんだ。きっとそうに違いない。

知っている。こういうシチュエーションをなんというか知っているぞ。
「謝罪会見」だ。なにも決まってないのにノリで人工衛星作るとか2年で打ち上げるとか勝手なことを言ったぼくらは大衆を騒がせた罪で弾劾、いや、処刑されるのだ。そうに違いない。

戦々恐々としながらミーティングの準備を進めていると、どんどん参加者の方々が集まってくる。
「セミナーとかじゃないですからねえ、ははは」とかいいながら頭を抱えたくなるのをぐっと抑える。なんせ始まる直前まで本ミーティングの進行について打ち合わせをしていたくらいだ。気が気ではない。ちょっと他の人たちにまかせてぼくは帰っちゃおうかな、とか考えた。おなかが痛いとか言ったら許してくれるだろうか。

しかし現実は残酷なもので、あれよあれよと定刻になり「リーマンサットプロジェクト(仮) KICK OFF MEETING」が開催されようとしていた。

 まずはぼくら5人の自己紹介とミッションの概要などなどを説明。もともと一緒にやってくれる人がいないと人工衛星を作ることはできないので「どうかぼくらを助けてください」と素直にお願いしてみる。

幸いにも、このプロジェクトに興味を持ってくださったのはみな心の広いお方たちで、弾劾にはならず「なぜここに来たのか、なぜ宇宙開発に関わろうと思ったのか」などなどいろいろお話を聞くことができた。

本プロジェクトは宇宙開発に関わると言うことで、

・宇宙に行きたい! 宇宙から地球を見たい!
・宇宙が舞台の漫画や映画、小説にドハマりしてここまで来てしまった
・宇宙の深淵に惹かれて止まない
・宇宙に関わるのが普通、関わっていないと落ち着かない
など、宇宙に関して深い熱い、でも消化できていない思い持った方が多かった。

ほとんどの人は「学生時代に宇宙について関わっていたが、社会人になったら全く関係なくなった」とか「宇宙への憧れはあるものの、実際に関わる術がない」など、宇宙に関わるハードルはやはり高いようだ。詳細を聞いていくと、プロダクトデザインをしている方、ハードウェアの製造ができる方、宇宙関係分野専攻の学生、そして宇宙開発に関わりのある方(宇宙に関する仕事をガチでやっている、という方も!!??)などなど、「今いる人たちで衛星作って打ち上げられるんじゃね?」と期待してしまうほどの逸材ぞろい。
でも、裏を返せば、あまたあるリソースを宇宙開発に活かせていないという状況が浮き彫りになったともいえる(宇宙に関わる場所が豊富にあればわざわざ来ないだろうし)。

また、実際に宇宙に関わっている人も「一般の人にもっと宇宙を身近に感じてほしい」「宇宙を特別なところだと思ってほしくない」など、宇宙への関わりをもっと社会に広げたいとの思いがある、という話があり、ぼくらは「リーマンサット・プロジェクト(仮)の存在意義は確かにある!」との意識を強めた。

そんなこんなでまずはお互いの自己紹介はつつがなく終了し、次は「リーマンサット・プロジェクト(仮)」として、今後どうしていくかの話に移ることと相成った。

続く。

リーマンサットに興味を持ってしまった方はこちらへ
www.rymansat.com


PHOTO BY NASA

皆さまのご厚意が宇宙開発の促進につながることはたぶんないでしょうが、私の記事作成意欲促進に一助をいただけますと幸いでございます。