40年ぶりに「DUNE 砂の惑星」を読んで思うこと

もうすぐ日本でも公開される映画「DUNE 砂の惑星」。

遙か昔の高校生の頃に偶然出会い、読み始めたことがきっかけで、DUNEの世界に完全にはまり、そこから現在の世界の事へと関心が行ったのが、その後の人生にも大きな影響を与えていたと思う。世の中にSF作品はたくさんあるけれど、このDUNEは完全にSFという範疇を超えた希有な作品だと思う。

著者のハーバートの博識はいうまでもないが、彼が創出した世界は実際に彼が遙か彼方へ時空移動して、DUNEの世界を現実に見てきて書き残したのではないかと錯覚するほどにディテールがしっかりしているし、人物描写や社会構造、信仰やフレメンたちの生き様等々、目の前にその光景が現出するほどだ。

かつて10代のころにも、とくにアラキスの情景が印象的だったし、フレメンたちの暮らしや文化、信仰、あるいは随所に散りばめられたアラビア語由来の言葉の数々も相まって、そこから中東への関心も拡がっていった記憶が蘇る。

当時読んだのは矢野徹氏の翻訳だったが、DUNE砂の惑星以降の作品も全て読み、ハーバートの息子たちが引き継いで書いた 「ハウス・アトレイデス」以降の作品も全部読んだが、その魅力は尽きることがない。さらなる続編も早く邦訳がでることを期待したい。

今回、新しい映画が出来るということで、新訳版を読んでみた。旧訳よりも読みやすい、フランクな面は感じるが、全体のストーリーや登場人物、主立った言葉、用語等、驚くほど憶えている自分にも驚いた。また、ストーリーが以前読んだときよりもわかる部分も多く、またアラビア語やイスラームから引用された用語や、フレメンの慣習のイスラームとの酷似性等が明らかであり、非常に興味深く読むことができた。

それにしても、1960年代にこのスタンスで書いたハーバートはなんとも優れた感性を持っていたのだろう。

ドゥニ・ビルヌーブの新作は、とても期待している。以前リンチの作品を見たが、あまりにも小説のイメージと違ったので落胆したことを憶えている。安っぽいSF映画にしか見えなかった。しかし今回の作品は、予告編などで見る限り、かなり期待出来るのではないかと感じる。主演のティモシー・シャラメが、夢にまで見たポールとイメージがとても近い上に、レト公爵、ハルコンネン男爵、レイディ・ジェシカ、ダンカンやハワトもイメージ通り。アラキスの光景も違和感ない。

この作品は、現在の地球で起きていることの諸々が、数千年後、あるいは一万年後にはこうなっているだろうという世界を描いていて、それが納得出来るハーバートの科学、民族学、生態学等の知識とそれを小説世界に微細なところまで具現化した力量によるものであるが、その質の高さは他の追随を許さないものではないか。もしまだ作品を読んでいない人は、ぜひ読んで貰いたい。新訳で出た三冊の後にも、たくさんあるので、それらも合わせて読んで貰いたいと思う。

さて、来月には映画が公開。余り期待しすぎると、落胆することもあり得るのだが、今度ばかりはかなり良いのではないかと思っている。



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