[アメリカ合衆国] 米国商標近代化法 (3)

2. 不使用取消審判(Non-Use Ground for Cancellation)の新設

査定系再審査手続の他、登録商標が不使用であることを理由に、商標審判部(TTAB)に対する取消審判の請求が可能となりました。

米国法では、継続して3年以上不使用の商標は、放棄された商標と推定されます。改正前から、商標登録の存在により損害を受けると考える者は、商標登録の取消審判を請求することができましたが、権利者が使用再開の意思を立証すれば取消を免れることができました。

今回の改正では、登録日から3年が経過しており、一度も使用されていない商標も取消事由に追加されました。当該事由に基づく不使用取消審判を請求する場合、申立人は、権利者が使用再開の意思を有していないことを立証する必要はありません。

<請求主体>
商標登録の存在により損害を受けると考える者。例えば、先行登録商標が引用された場合の商標登録出願人が該当します。

<請求対象>
登録から3年経過後であって、審判請求時までに指定商品の少なくとも一部が使用されていないこと。

<手続>
取消を回避するためには、権利者は商取引における使用証拠を提出しなければなりません。但し、本国登録に基づく出願またはマドプロ出願に基づく領域指定の場合、不使用に係る特別な事情を証明する証拠の提出が可能です。

<査定系商標登録取消・査定系再審査との違い>
査定系商標登録取消では、申立人は事前調査を行い、商標の使用が判明しなかったことを立証しなければなりません。一方、TTABに対する取消審判では、商標が使用されていないことを主張するだけで十分です。

査定系商標登録取消はUSPTOに対して請求を行います。一方、不使用取消審判はTTABに対して請求し、その手続きは地方裁判所での訴訟と同様の方法で進められます。

3. 情報提供制度の明文化(Letters of Protest)

情報提供制度は、拒絶理由を含む商標登録出願について、USPTOに情報を提供し、登録を防止できる制度です。情報提供は従前から実務上行われていましたが、TMAによって明文化されました。
今回の改正において、先行商標との混同、指定商品について記述的であることに加えて、出願商標の不使用、偽りの使用見本や不正な情報が提出されていることも情報提供の対象となりました。

<請求主体>
何人も請求可能。

<期間>
出願係属中であれば提出可能ですが、公告公報の発行前が好ましいと言われています。公告日以降に情報提供を提出する場合、出願を拒絶すべき一応の根拠を証明する必要があります 。

<手続>
USPTOが提供している専用フォームを使用して手続を行います。情報提供においては、出願を拒絶すべき理由を記載し、証拠を提出します。証拠は理由ごとに10点以内、合計75ページまで提出可能です。

<決定>
USPTOは、情報提供の提出日から2月以内に、提出された情報を出願記録に含めるか否かについて決定します。決定は最終処分であり、不服申立はできません。情報提供が認められた場合、認容された拒絶理由および関連する証拠が出願記録に含まれます。但し、拒絶理由を出すか否かは審査官の判断となります。

<異議申立との比較>
情報提供制度と異議申立は、いずれも第三者による権利化を阻止するための手段です。両制度の違いとしては、費用面及び手続面が挙げられます。異議申立は商標審判部(TTAB)に対して請求し、地方裁判所での訴訟と同様の方法で進められることから、双方にとって費用負担が大きくなりがちです。費用面においては、情報提供制度の方がより利用しやすい制度といえます。

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