[アメリカ合衆国] 米国商標近代化法(2)

1. 新たな不使用商標の排除方法

(A) 査定系商標登録取消 (Ex-parte Expungement)

商品役務の全部または一部について、一度も使用されたことがないことを理由として、登録の抹消を請求できる制度です。

本国登録に基づく出願またはマドプロ出願に基づく米国指定も、適用の対象になります。
登録には使用証拠は不要ですが、従来の5年-6年の使用宣誓の前に、査定系商標登録取消(Ex-parte Expungement)がなされると、権利者は使用の証明が必要になります。

<請求主体>
何人も請求可能です。長官による請求も認められます。

<請求時期>

  •  2023年12月27日までは、登録から3年経過した商標であれば、登録から10年が経過している商標に対しても請求可能。

  •  2023年12月27日以降は、登録から3年以上10年未満の商標に対してのみ請求可能。

(B) 査定系再審査(Ex-parte Reexamination)

虚偽の証拠の提出により登録に至ったことを理由として、再審査を行う制度です。登録商標が、商品役務の全部または一部について「関連日」までに商業的に使用されていないことを理由に請求可能です。

本国登録に基づく出願またはマドプロ出願に基づく米国指定の場合は、登録後5年-6年までは、使用証拠の提出(使用宣誓)が免除されていますので、査定系再審査の対象ではありません。

<適用範囲>
使用に基づく出願、または使用意思に基づく出願に対して請求可能です。

<請求主体>
何人も請求可能です。長官による請求も認められます。

<請求時期>
登録日から5年以内。

<関連日とは>
申立人は、権利者が登録商標を商業的に使用したことがない、または「関連日」時点で商品役務に関連して使用していないと考える根拠を説明し、その根拠となる一応の証拠を示さなければなりません。「関連日」とは、以下のように定義されます。

  • 使用に使用に基づく出願については、その出願日。

  • 使用意思に基づく出願については、使用に基づく出願に補正した日、またはStatement of Useの提出期限の満了日(すべての延長を含む)のうち、いずれか遅い方。

共通事項
請求人は、商品役務の全部または一部を取り消す手続を開始するように要請する嘆願書(Petition)を長官に提出します。嘆願書は包袋に記録され、USPTOのデータベースより閲覧可能となります。また、USPTOは権利者または代理人に対し、嘆願書が提出された旨の通知をEメールで送付します。

嘆願書には、以下の事項を含める必要があります。

  • 不使用に関する「合理的な調査」を実施したことを示す、認証付きの陳述書(verified statement)

  • 商取引における不使用を裏付ける証拠

「合理的な調査」の基準は、商品役務の種類に応じて判断されます。一つの検索エンジンによる一回の検索では不十分と示しつつ、すべての通商経路を完全に網羅することまでは要求されていません。民間業者に調査を委託する必要はありませんが、委託した場合は、調査報告書に結果を記載する必要があります。

<使用について>
権利者の使用は、ランハム法第45条の「商取引における使用(use in commerce)」に合致していなければなりません。第45条の使用とは、通常の取引の過程で行われる商標の誠実な使用を意味し、単に商標の権利を得るためだけの名目的使用では不十分であり、次のことが必要です。

  • 商品の場合、商品、商品の容器、または商品に関連するディスプレイに商標が使用または表示されており、商品が商業的に販売または輸送されていること。

  • 役務の場合、役務の提供または広告に商標が使用または表示されており、役務が商業的に提供されていること。

<手続>
長官は、申立人が一応の証拠を提出したと判断した場合、手続開始の決定を下します。
審査官は最初のオフィスアクションを発行し、当該商品または役務について、使用証拠の提出を要求します。応答期間は3か月で、125米ドルの延長費用を支払うことにより1ヶ月の延長が可能です。
使用証拠が存在しない場合、権利者は1区分につき250米ドルの手数料を支払うことにより、商品役務を削除することができます。

<決定>
権利者が、問題となる商品役務の全部について使用を立証した場合、または不使用につき合理的な理由を立証した場合には、登録を取り消すことなく、手続終了の通知を発行します。
権利者が、問題となる商品役務を削除した場合にも、手続終了の通知を発行します。この場合、登録の全部または一部が取り消されます。
権利者が、問題となる商品役務の全部または一部の使用を立証しない場合、または不使用につき合理的な理由を立証しない場合、問題となる商品役務に係る登録を取り消すべき旨の最終決定が発行されます。権利者が最終決定に不服がある場合、3ヶ月以内に長官への再考請求(Request for Reconsideration)またはTTABへの審判請求をすることができます。


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