インド 著名商標の申請制度(3)

著名商標認定の効果

著名商標一覧に掲載された商標権の効力は、非類似商品(役務)にまで拡大します。
著名商標と同一又は類似する商標を付す行為は、商品(役務)の類否にかかわらず、商標権侵害を構成し、差止請求、損害賠償請求の対象となります。また、著名商標を採用した商号も差止請求、損害賠償請求の対象となります。
審査においても、第三者による著名商標と同一または類似の商標に係る出願は、拒絶され、異議申立の対象となります。

著名商標の維持管理

著名商標の申請制度とは、登録官によって商標の著名性の認定を受けることにより、商標の希釈化を防止する制度です。著名商標そのものには、存続期間は発生しません。
一方、商標がインド国内の公衆の一部に対して著名でなくなった等、著名商標としての要件を満たさなくなった場合には、著名商標一覧から抹消される可能性があります。そのため、権利者は著名商標を正当に使用し、著名性の維持に努めなければなりません。
インドは国土が広く、インターネットが普及していない地域もあります。商標を広告に使用する場合は、印刷物(雑誌、機関紙、チラシ等)に商標を付し、継続的に商標を使用することが重要です。インターネット上での使用のみでは、著名性を十分に獲得していないと判断される恐れがあります。

パッシングオフとの関係

未登録商標の所有者は、パッシングオフに基づく訴訟を提起することができます。パッシングオフに基づく救済は、商標権侵害訴訟に対する救済と同様、差止請求、損害賠償請求となります。
インドにおいて、登録商標が非類似商品に使用されていた場合には、パッシングオフに基づく訴訟を提起できます。
しかし、パッシングオフで定める要件は、商標権侵害訴訟で定める要件よりも厳格であると言われます。パッシングオフが成立するには、(1) 商品又は役務に、信用又は名声が発生していること、(2) 不実表示により、公衆に混同を生じるおそれがあること、(3) 原告に損害が発生していること、が要件となります。しかし、これらの立証は容易ではありません。
この点、商標が著名として認定されていれば、非類似商品に登録商標又は類似商標が付されていても、商標権侵害訴訟の提起が可能となります。登録商標がインドにおいて高い評判を得ており、正当理由のない商標の使用が登録商標の識別性又は評判を不当に損なう場合には、商標権侵害を構成することになる為です。

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