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なんで花火を上げたかったのか?


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■打ち上げ花火の経緯

■なんで花火を上げたかったのか?

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打ち上げ花火、上がりませんでした。

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■打ち上げ花火の経緯

5月頃から、早稲田祭で花火を上げる計画を立てていました。

運スタに新しい部署ができたことがきっかけで、そこに異動し「打ち上げ花火企画」が始動した。

「花火を打ち上げたい」と言ったものの、まず何から始めたらいいか分からない。とりあえず、法律や条例を徹底的に調べる。ネットや色々な記事、都や区などの行政機関に電話で確認もした。

花火について、調べるうちに解決しなければいけない事項が分かり始めた。

〇法律・条令
〇費用
〇場所の選定
〇周辺地域からの苦情

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〇法令・条令

まず、【法律・条令】については確認が取れた。詳しくは割愛するが、東京都には「無許可消費量」というものがあり、この基準を超えない規模であれば、花火の打ち上げが可能との事だ。所轄警察・消防に申請書を提出が必要であるが、無許可消費量の場合、提出だけで打ち上げが可能だという。つまり、審査を経て許可が下りるかどうかではなく、申請すれば打ち上げが可能なのである。

参考:打ち上げ花火無許可消費量について(東京都も同様)

備考:無許可消費量での打ち上げ花火(映像)


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〇費用

次に、【費用】。打ち上げ花火というと、お金がかかるイメージだった。だが、花火は意外とリーズナブルなものだった。

50発打ち上げて、10万円という価格。

参考:打ち上げ花火学園祭プラン

この費用が、「花火できるじゃん」と思うに至る決めてになった。

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〇場所の選定

打ち上げる規模や、玉の大きさによって必要となる土地の面積は変わるが、無許可消費量の内であれば、半径65m程あれば足りる。キャンパス内では多くの飲食屋台やステージが軒を連ねているため、候補地としては最初から考ておらず、半径65mの土地となると、戸山公園がまず思い浮かんだ。

業者の方が早稲田に下見に来てくれ、戸山公園以外にもいくつか候補地を見て回ったところ、戸山公園が、1番実現可能性が高いという事であった。メインターゲットを本格的に戸山公園に絞り、交渉等を始めていった。

(矢印内、半径65mは立ち入り禁止)

運動広場 図面

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〇周辺地域からの苦情

これが1番切実でした。どんなに、法律や規則の面でOKが出ても、地元の人達から批判が出てしまっては企画の実施はできない。如何せん、火気を扱うもののため、地域の人からの理解は絶対に必要だった。

何千人もいる地域の方々に対し、どう説明し、どう理解を得るか、悩んだ。

そんな時、良い機会がくる。大隈通り商店会の会長の方が早稲田大学に講演をしにいらっしゃった。

会長さんは、何十年も早稲田で商店を営んでいる方で、何年も早稲田祭と関わりを持っていた。「過去の早稲田祭はどうだったか?」「過去の学生はどのようだったか?」等々、多くを語ってくれた。

最後に質問する機会が設けられ、そこで、「早稲田祭での打ち上げ花火」を企画しているとの旨を伝えた。この時、緊張してマイクを持つ手がめちゃくちゃ震えてきたのをよく覚えている。

会長さんは、過去に打ち上げ花火を試みた学生がいたと教えてくれた。なんでも、大隈講堂の上から、花火を打ち上げたいと懇願し、大学に掛け合ったそうだ。いや、やばい。ぶっ飛んでる。

実施には至らなかったそうだが、その学生は後に、大ベストセラー『五体不満足』を著したそうだ。



その時、会長さんは本気だと思っていなかったそう。後日、会長さんのお店に行き、話をした。「なんで花火をしたいと思ったのか?」「法律や予算」「リスク対策」「花火によって生まれるメリット」その他いろいろ話をした。

会長さんはノリの良い方で「面白いね!」と仰ってくれた。さらに、「ここまで調べているとは思わなかった、協力しよう!」と二つ返事で了解をしてくださった。

後日、商店会の会合にお邪魔させてもらった。早稲田には、大隈通り商店会の他に6つもの商店会があり、各商店会の会長さんが集う会合だった。そこで、花火の話をさせていただき、事が一気に進んだ。

花火開催が決まれば地域の人たちに向けた説明会の開催。そして、早稲田地域のお宅に花火開催の旨を伝えるビラのポスティングに協力してくれるというお話もいただくことができた。

地域の方々は、最後まで本当に良くしてくださった。

最初は、「花火に対する理解を得る相手」だったが、最後には「花火企画を一緒に進めていく協力者」になっていた。土地探しから、都との交渉まで、多くのことに手を貸してくださり、花火企画を進める上でかけがえのない存在でした。感謝してもしきれないです。本当にありがとうございました。

早稲田の周辺商店会にはこころ温かい方がたくさんいました。

花火ぐる

(地域のおじさん達とのLINEグループ。この時の高揚感はすごかったな....)

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〇その他の懸念点

その他にも多くの障壁があった。戸山公園でやるとは言えど、早稲田祭の名前を借りる以上、早稲田大学の許可がいる。組織内部にも説明責任を果たさなければならない。事故等へのリスク管理は保険から、立ち入り禁止エリアの制定、業者さんとの打ち合わせ等、入念に行った。

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〇断念

「法律・条令」「費用」「場所の選定」「周辺地域からの苦情」「大学」「組織」等々、打ち上げに向けての壁が1つ1つクリアされていった。

1個1個、障壁が消え、前に進むごとに期待の声も大きくなった。「頑張れ!」と言ってくれるのは純粋に嬉しかった。と同時に、とてつもないプレッシャーでもあった。「ここまで来て、ここまで人に協力してもらって、打ちあがらなかったらどうしよう。。。」と考え、朝になってしまうなんてざらだった。実は把握してない法律が存在して、つまらない把握ミスで失敗になるのが1番嫌で、夜な夜なネットで花火関連の法律を漁ったりもした。

もちろん、自分1人だけの力では絶対にたどり着けなった。地域の方々、運スタの地域チーム、同じ部署の先輩、同期、後輩。そして何よりも、代表陣には本当に助けてもらった。

大学に話を持って行ってくれる所もそうだが、ちゃんと、「なんで花火なのか?」を聞いてくれて、それに1番向き合ってくれたと思う。嬉しかったです。最後の審議では、なんか今までの事が走馬灯のように流れてきて、涙してしまった。。。本当にありがとうございました。

そして、「戸山公園の土地利用」の許可が出た。

でも、ここまでだった。

そこから数回やり取りを繰り返したが、「戸山公園での火気利用」の許可は出なかった。

業者の方から安全性についてはお墨付きを貰い、リスク管理についても入念に検討してきた。だが、それでも厳しかった。

その時は、理解できなくてめちゃくちゃ腹が立ったし、気を落とした。だけど、当然といえば当然なのかもしれない。法律的には大丈夫でも、知らないやつが自分の家の庭で「打ち上げ花火をしたい!」と言い出して来たら、さすがにびびる。リスクでしかない。

「戸山公園の土地利用」は許可をいただけていたため、火気を使用しない企画なら可能であった。だが、10月の中旬の時点で、再度企画を考えて、立て直すには、気力も時間も足りなかった。

「戸山公園での火気利用」についての交渉は、大人が受けおってくださり、大人と大人の話合いになっていた。

企画不可を伝えられた時、かなりのショックを受けたが、「学生ができうる範囲のことはやった、あとは天命に任せる!」「今回、企画ができなかったのは自分のせいじゃない!やれることは全部やった!」とも開き直っていた。

でも、今、落ち着いて振り返ってみると、早大生5万人から「花火打ち上げたい旨」の署名を貰い、それを持って都庁に行く、都庁の前に毎日通って土下座でもして、プレゼンをするチャンスをもらうなど、やれることはあったのかなと後悔が残っている。。。

本当に悔しい。

何よりも、お世話になった人、助けてくれた人、応援してくれた人、期待してくれていた人への感謝も込めて、花火は絶対に上げたかった。

書けば書くほど、思い出せば思い出す程、悔しさと情けなさが込み上げてくる。

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■なんで花火を上げたかったのか?


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早稲田祭には多くの「早稲田文化」が集結する。この「早稲田文化」は本当に誇るべきものであり、もっともっと多くの人に触れてもらいたい。18万人よりもさらに多くの人に。今までに早稲田祭に縁もゆかりもなかった人が花火をきっかけに早稲田祭に訪れる。そこで様々な「早稲田文化」に出会い、魅せられるであろうと考える。最終的に、多くの人にとって「打ち上げ花火」が「早稲田文化」に出会うきっかけになってほしいと願っている。
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企画書の冒頭に書いた「なぜ花火をやりたいか?」の部分。ここにある通り、打ち上げ花火が、早稲田文化に出会う「きっかけ」になってほしいと考えていた。

早稲田祭の存在すら知らない人達が、「11月に花火大会があるみたい、行ってみよう」となり早稲田祭に足を運ぶ。早稲田に縁もゆかりもなかった人が、そこで「SHOCKERS」や「早稲田王」、その他多くの「早稲田文化」に触れてほしい。「早稲田文化」への導線になってくれたらよいと考えていた。

もちろん「きっかけ」になってほしいとも考えていたが、これは表向きの理由だ。

もう1つ、「打ち上げ花火」をしたい理由があった。

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〇もう1つの理由

浪人中、早稲田祭の企画Ending Festivalの動画をよく見ていた。公式テーマソングもよく聞いていた。それ等が、勉強の原動力になっていた。

長い間、早稲田祭が憧れの場所であったし、今、早稲田祭の運営に携われていることを本当に誇りに思っている。「早稲田」が好きというよりも「早稲田祭」が好きというまである。

早稲田祭の運営に関わっている中で、生意気ながら、「どうすればもっと早稲田祭が良くなるのか?」とよく考えていた。

そして、自分にとって「良くなる」の基準は、早稲田祭の「来場者数」「規模感」「ブランド価値」の向上だった。

もちろん、「良くなる」の定義は他にもある。さらに、「来場者数」「規模感」が大きくなることによる弊害もあると思う。

「来場者数」「規模感」「ブランド価値」を高めることが、「良くなる」における絶対のアンサーではないが、実感しやすい指針の1つにはなると思うという前提で、今回は話を進めたい。

今の早稲田祭は色々な面で「拡充」することは厳しい。「土地」は、キャンパス内、ほぼ全てのスペースがステージや屋台で使用されている。現在、2日開催の早稲田祭であるが、これを3日にしよう4日にしようと言っても、2日だから良いという点もある。「時間」の拡充もそこまでの効果は得られないと思う。

「予算」面においても厳しいものがある。早稲田祭の予算は年々、増加傾向にあり、4000万円を超える勢いだそうだ。つい数年前まで2000万円代であった事からも、この増加傾向には驚く。今年度は膨張しすぎた予算を抑えようと、多くの予算削減がなされた。ここから、また予算を増やそうというムーブメントは起こしにくい。以上のことから「企画数」を増やしましょう。「名物企画」を作りましょう。と言うのは難しい。

2019年にもなると、早稲田祭の物理的発展余地はもう無さそうに思える。

じゃあどうすれば良いか?

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〇「感情移入してしまう企画」をつくる

自分が企画をするという立場になったとき、おもわず「感情が入ってしまう企画」をつくる方が良いと考えました。(ここから丁寧語にした)

そこで、「早稲田祭の熱狂的なファンを生む、感情が入ってしまう企画」を作ろうとしていました。

例えば、「早稲田祭で、宇宙に向けてロケットを飛ばそう!」という企画が計画されたとします。

はじめに、ロケット打ち上げの構想段階から、その様子を世の中にリリースしていきます。「ロケット会社との交渉」「予算のやり繰り」「土地の選定」「近隣への理解」。懸念点は次から次へと出てくる。かなり多くの壁にぶつかる。そこで、その壁にぶつかる度に、SNS等、様々な媒体を使い、世の中に出していきます。

その企画、「うまくいくの?どうなるの?」というヒヤヒヤ・わくわく(物語性)は、人の感情がぐっと入っていくと思います。

つまり、ヒヤヒヤ・わくわくの過程が共有され、それを一緒に体験できる企画には、強烈なファンがつきます。

ロケットの例で言うと、偶然その場で「ロケット打ち上げ企画」を知り、楽しむのもいいですが、「ロケット打ち上げ企画」実現までにぶつかった苦難の「過程」「エピソード」が共有されている状態で、企画を見ると、やはり感動が違うと思います。

一流進学校から東大に入り官僚になる話よりも、偏差値ドベの学年ビリが一念発起し勉強。苦難の末に、早慶に行ったという話の方が人は好むと思うし、予選から1人で投げ続けた大エースが、甲子園決勝でも、ぼろぼろになりながら球を投げるという話の方が視聴率が高いです。

はじめて早稲田祭を開催したときは、早稲田祭開催し運営すること自体が快挙であったと思うし、どんな企画を打っても目新しいものであったに違いないと思います。

ですが、早稲田祭2019にもなると、過去に、様々な団体が様々な企画をし、その企画書や、ノウハウがドライブに大量に残っています。Google検索をしたり、過去の企画書を見れば、成功までの導線が見える。昔に比べて、クオリティはみな同じように保証されているため、品質(パフォーマンスや企画における)で差別化することができない。さらに、正解(成功)することへのハードルは下がってしまっていると思っていて、そこに狂信的なファンは生まれずらいと思っています。

断じて、現存ある企画が「簡単にできる」「運営が容易だ」「どれも一緒だ」と言いたいのではありません。今から新しく何かしようとする奴が、「早稲田祭を良くしよう!」と考えたときに頭に入れておいた方が良いのではないか?と思うことです。

品質の良い企画やパフォーマンスは、早稲田には沢山あり、そこにサークル・団体・企画それぞれの歴史があり、「ブランド・権威」となっているので品質勝負で勝ちに行く(価値あるものに仕上げていく)のは相当難しいです。品質で差別化が図れなくなった今、「想い入れ」で攻めていく方が良いと思っていて、「どうすれば熱狂的なファンが生まれるか?」「感情移入させられるか?」に向き合う必要があると思います。

「打ち上げ花火企画」は多くの人の「ヒヤヒヤ・わくわく・どきどき」を誘えたのかなと思っています。ですが、まだまだ全然、満足のいくレベルではないです。「打ち上げ花火企画」が計画されていたことを知らない人の方が多いと思います。

もちろん、外部に出してはいけない情報も多くある。でも、「早稲田祭の今後の発展」は、「想い入れ」をつくり、いかに「狂信的・熱狂的な早稲田祭のファン」をつくることだと思っています。ゆえに、全部が全部、機密情報として扱ってしまうのは惜しいと感じてしまいます。(もちろん、本当に出してはいけないものもあるため、一筋縄にはいかないが)

「早稲田祭公式SNSでの企画進捗の発信」「前例がない・困難が予想されることへの挑戦」というのは、文化が変化していかなければ起こりえないムーブメントだと思うので、何年プランで近づいていくことができれば良いんだろうなあと思います。

早稲田祭の色んな団体に、それぞれの「ストーリー」があり、それぞれに「想い入れ」がある。そういった「ストーリー」「物語」はコピー不可能で、マネすることはできません。そうなれば、もう早稲田祭の魅力は、他大学のそれを圧倒します。

ナンバー1であり、オンリー1である文化祭。早稲田祭のブランド力・魅力はどこまでのものになるのでしょうか。

かなり、長くなってしまったので、そろそろ終わりたいと思っています。ですが、最後に1つだけ、早稲田祭が持っている魅力を書きたいです。

「歴史」です。

早稲田祭には特殊な歴史があります。

実は、過去に早稲田祭は中止になっています。

当時の実行委員会は、政治セクトと繋がっていて、大学からの運営資金を政治セクトに横流ししていました。そのお金は、政治セクトの資金源となっていたのです。

大学からの忠告を無視した結果、早稲田祭は中止に。そこから、何年も早稲田祭が存在しない期間が続きます。ある時、学生たちが一念発起し、復活へと動き出す。何万の署名を集めるも開催にこぎつけないなどと不遇の時期を経験する。そして、有志メンバー、サークルが1つとなりやっとの想いで、早稲田祭が復活された。そして今に至る。

この「歴史」を知っているだけでも、早稲田祭に対する「想い入れ」は違ってくると思います。

【参考:早稲田祭の歴史】

【前編】


【後編】


早稲田祭の歴史は、他大学の文化祭がどんなに逆立ちをしたって真似できない財産だと思っています。

「早稲田祭は当たり前のものではない」

来場者の方々や、早大生がもっと深く、「早稲田祭の歴史」を知れば、より一層、早稲田祭に対する「想い入れ」も入ります。見方が変わります。その中からきっと、早稲田祭の熱狂的なファンも生まれてくると信じています。

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〇終わりに


ここまで、読んでくださったことが本当に嬉しいです。ありがとうございます。「花火の経緯」や、「早稲田祭に対する自分の理想論」を冗長に語ってしまいました。

正直、我が子のように、大切に大切に育ててきた企画が、10月中盤に吹っ飛んでしまったため、早稲田祭に100%肯定的かと言われれば、即答できません。

かなりナーバスになりました。

でも、文字にすることで、幾分か気が紛れました。

「打ち上げ花火企画」には本当に多くの人が関わってくださり、協力して下さった為、あと1歩の所までたどり着けました。

関わってくれた人、協力してくれた人、応援・期待してくれていた人には、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。同時に、感謝の気持ちでもいっぱいです。本当にここまでありがとうございました。

早稲田祭まであと1日。早稲田祭当日は、サポートしてくれた人たちの企画を全力で手伝っていきます。

そして、いつか誰かが、早稲田祭で花火を上げてくれると期待しています。

そして、その花火が「熱狂的で狂信的な早稲田祭のファンを生む企画」となることを願っています。

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