精神科専門医 レポート攻略 虎の巻

 どうも、はなまるです。先日、精神保健指定医(以下、指定医)レポートについての記事を書かせていただきました。様々な反響をいただきありがとうございます。その中で精神科専門医(以下、専門医)のレポートについても教えてほしいとの要望をいただきましたので、今回記事にしてみることにいたしました。何か質問等あればtwitter(@ksksk16g)で連絡していただければと思います。

 また、文章作成に関する注意事項の詳細は以前にリリースした「精神保健指定医取得 虎の巻」に記載しておりますので、そちらを参考にしていただけると幸いです。

(https://note.com/ksksk16g/n/n666e73211f57)

 ということで、今回のnoteも一般向けではなく、医学生、初期研修医、精神科専攻医に向けての内容となります。先日の指定医レポートの時と同様に、いかにしてキレイなレポートを仕上げるか、いかに合格するレポートを書き上げるか、に特化した内容とさせていただきます。前回同様、受験を考えている先生方だけでなく、指導医の先生方にも参考にしていただければと思います。

 専門医は、日本精神神経学会による学会資格です。日本全国の精神科医全員が入会していると言っても過言ではない大きな学会です。専門医試験の概要については以前の記事である専門医合格体験記を参考にされてください。今回の記事はその中でもレポート作成について考察していこうと思います。

(https://note.com/ksksk16g/n/n6b5fbef63f7e)

 

 専門医におけるレポートについてみていきましょう。3年以上の精神科臨床経験の中で45例の症例を集め、そのうち症例報告数は全部で10例です。経験すべき治療場面(救急、行動制限、地域医療、合併症・コンサルテーション)が4つ分けられておりそれぞれ症例報告にも1例以上必要となります。また、症例報告のうち入院症例が3例以上、外来症例が2例以上必要になります。さらに診断ごとに報告数が決まっており、統合失調症圏が2例以上、気分障害が1例以上、神経症圏が2例以上、児童思春期症例が1例以上、依存症や中毒症例が1例以上、症状性・器質性症例(認知症含む)が2例以上、パーソナリティ症例が1例以上となっています。

 以前の記事にも書いていましたが、異動なども踏まえ自分が経験した症例の退院サマリーをファイリングしておくことが必須となります。ワイ自身もレポートを作成し始めてから別の症例に変更したものなどありました。できるだけ退院サマリーを集めておき、症例を吟味しやすい状況にしておくべきだと思います。そして必ず、口頭試問の際に症例報告から2例質問されることになります。

 まずレポートの大前提として、指定医のレポートより審査が緩い。これは間違いないと思います。指定医レポートの際は誤字脱字さえも許されない状況でしたが、実際ワイの周囲の合格した先生たちも誤字脱字あって合格している人がいました。口頭試問の際に試験官から誤字脱字を指摘されても合格しているツワモノもいましたw ですので、指定医ほど気をつけなくても良いのかもしれません。しかし、専門用語のミスなどを許されないと思いますので、メリハリは必要かと思います。

 まずは、ワイの10症例を診断名や治療場面をみていきましょう。

1、 統合失調症 入院 非自発 行動制限

2、 統合失調症 入院 非自発

3、 うつ病 入院 非自発

4、 アルコール離脱せん妄 入院 非自発 救急

5、 せん妄 外来 リエゾン

6、 血管性認知症 入院 非自発 地域

7、 適応障害 入院 小児

8、 強迫性障害 入院

9、 パニック障害 外来

10、 境界性パーソナリティ障害 入院

 と言った感じです。(一部、改変しています。) 治療場面を盛り込みつつ、入院症例や外来症例を作っていきます。リエゾンは外来症例となります。字数も指定医と同じく2000字以内であり、固有名詞や月日などに対するプライバシーの配慮が必要です。また、指定医レポートの症例を改変し使用できる症例もあります。ワイも上記のうちのいくつかの症例で指定医レポートと同じ症例を用いています。

 それでは内容に入っていきましょう。基本的な書式やルールは前回の「精神保健指定医 虎の巻」をご参照ください。今回は指定医レポートと異なる点を中心に解説します。

 指定医レポートは、「指定医として法律を理解し患者さんの症状を把握し適切に運用しているか」を問われるレポートでしたが、専門医のレポートは「精神科医療の知識を深め、適切に診断や治療ができているか」という点が問われるポイントになってくると思います。つまり、法律の内容は詳細に記載する必要はありません。

「病識が欠如していたため任意入院への同意が得られなかった。精神保健指定医の診察により○○の同意による医療保護入院となった」

という風にスマートに記載するのみで問題はありません。逆に、鑑別を含めた診断や、治療過程(どういう薬剤をどの程度の量で使用したかなど)を記載する必要があります。診断基準はICD-10を用いて記載されている用語を使用していき、診断基準に当てはめることが重要です。また、血液検査や身体初見など必要項目を記載し鑑別診断としてください。薬剤名は一般名で記載、開始用量や漸増後の治療用量を記載する必要があります。例えば、抗精神病薬においても数種類あり、その中でなぜその薬剤を選択したかの理由などを書いていた方が良いかもしれません。ワイは面接の際に尋ねられました。適応外処方の使用の告知などももちろん必要です。また、非薬物療法についてもより詳細に記載する必要があります。一般的な話だけでなく、個人個人に応じた工夫した点なども一般治療から大きく外れない範囲で記載できれば良いかと思います。ワイは生活記録表の導入程度ですが盛り込みました。そのほかの一般的な書式は指定医同様で良いと思います。

 上記に細かい記載点を書きましたが、この専門医レポートにおける最大の注意点は治療場面の記載となります。わざわざ4つの治療場面を選択させ記載させることにしているため、その記載ができているかどうかが合否の分かれ目となります。実際、ワイの知り合いの先生は治療場面の記載が不十分であり不合格となったケースがありました。治療場面について解説していきましょう。

 まずは、救急です。手引きの定義によると、「診察時間内外を問わず興奮状態、意識障害、昏迷、自殺企図などのために救急対応を必要とした症例」と書いてあります。つまり症例選択の際には上記を含んだ症例を選択する必要があります。【現病歴】に緊急受診が必要である状況を盛り込む必要があると思います。また、【入院後経過】以降にも急を要する治療が必要だった点なども記載した方が良いと思われます。

 次に、行動制限です。これは「個室隔離、身体拘束を行なった症例」とされています。指定医レポートで記載した際には法律を省きながら同様に記載すれば良いと思います。詳細は以前の記事をご参照ください。

 次に、地域医療です。これは「地域の精神保健福祉センター、保健所、福祉事務所、児童相談所、地域包括支援センター、地域活動支援センター、就労支援事業所、地域の作業所、訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、地域のデイケア・ナイトケア、グループホームなどのさまざまな地域資源と主治医として連携して治療を行なった症例」とあります。ですので、入院主治医もしくは外来主治医として上記機関と連携をとり社会資源を導入した点を記載しなければなりません。認知症症例の施設入所、デイケアの利用などが書きやすいかもしれません。

 合併症・リエゾンコンサルテーションについてです。合併症は「精神科に入院中で身体疾患を合併しており、他科により治療が行われたか、あるいは他科の指示を受けて精神科主治医が身体疾患の治療を行なった症例」で治療形態は「入院」になります。本来は身体科病棟で治療すべき身体疾患を有するが、精神症状のためやむを得ず精神科病棟で治療をしなければいけないこと、密接な連携をとりながら診療している場面の記載が必要になります。

 リエゾンは、「精神症状が出現したために診療を依頼され、他科の医師と密接な連携をとって治療に当たった症例」で治療形態は「外来」になります。入院している診療科とリエゾンで関わった期間を経過の中に明示する必要があり、こちらも他科の医師やスタッフと密に連携をとった記載が必要となります。

 また、児童思春期症例は、F4〜9の症例であり、統合失調症は含まれません。外来症例については、外来での診断や治療で重要でありかつ工夫した点を記載する必要があります。

 細かい書式は指定医レポートの書き方を参考にしてもらえればと思いますので今回は省略させていただき、異なる点を中心に解説させていただきました。少し簡単な内容になってしまったかもしれません。有料にはなりますが、かなり細かく解説しておりますので、合わせて「精神保健指定医取得 虎の巻」を読んでいただけると幸いです。

(https://note.com/ksksk16g/n/n666e73211f57)

 今日、専門医は必要なのか必要ではないのかと議論に上がることが多いですが、資格というものは個人の能力を比較する際の担保となります。何を言おうと非専門医の先生はレポートを含め試験を受けていないわけであり、受験された先生方との差はかなりのものと思います。日常臨床でレポートを書くほど症例を吟味し考察することは少ないですからね。ワイの場合は専門医を取得してやっとスタート地点に立てたような感覚です。

 患者さんたちは専門医の診察を求める時代になっています。インターネットの普及など情報が簡単に手に入るようになり、スマホ一つで調べることのできる時代になりました。自身が受診する際にも専門医、非専門医どちらの診察を受けたいでしょうか。

 また、今後の高齢者社会において病院も今よりも減少していき医師が充足するとの予想もされています。その中で資格を有していることが被雇用者として取捨選択される際に重要になってくるかもしれません。

 今後受験される先生がこの記事を参考に1人でも多く合格されることを願っています。何か症例に関することで気になる点があればDMなどで可能な限り対応させていただこうと思いますので、気軽にご質問ください。長文で失礼いたしました。気が向いたらフォローもお願いします。またtwitterであいましょう!

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