考察マン:「ぼくらの血盟」を再度読んでみよう

どうもスイミーです。

ぼくは週刊少年ジャンプを毎週講読しているのですが、先日とある作品が最終回を迎えました。

かかずかず先生作「ぼくらの血盟」です。

2020年41号から連載開始し、2021年8号にて全18話で幕を閉じました。

ある意味話題騒然の作品だったかと思います。

読み切り版の「誓約の紅」では、人間と吸血鬼の兄弟が吸血鬼の存在する世界で身分を隠して拠点を移り住む話だったかと思われますが、連載版「ぼくらの血盟」では吸血鬼が認知されていない世界に加えて吸血獣というモンスターが追加されています。

読み切り版のダークな世界観と一転してやや日常物の空気感を漂わせ、重要な設定開示がいまひとつされていないことから、「本編がどこかにあり、これは二次創作なのではないか」という感想も現れ始めました。

その後も波乱の展開が続き、設定に突っ込みを入れる人が多くいました。

結果的に連載終了となってしまいましたが、連載が終わった今だからこそ、この作品が一体何を書いていたのかを分析できると思い、筆を執りました。

批評はまず分析から!早速見ていきましょう!

Ⅰ.各話情報

第1話
三ツ首種の憑依型吸血獣が家族に憑りついてしまった夕木紫乃くん。彼を救ったのは、吸血鬼の王の血を継ぐ弟「緋月コウ」と無明の血盟契約を結んだ従僕の兄「緋月シン」であった。兄弟はかつて謎の吸血鬼に両親を殺されており、その際にシンはコウを守るため無明の血盟を結んだのだ。兄弟は人間と吸血鬼の共存を目指し人を守っている。

第2話
大問題の回。朝目覚めたコウは屋敷の灯りを付けて回る。兄の不在を知ると不機嫌ながら朝食を摂る。すると現れたのは屋敷に迷い込んでしまった少年「けんと」であった。けんとは屋敷を探索したり、おにごっこを始めたり、昔のシンの写真を見て「ビジン」と評したり、挙句には寝落ちしてしまう。普段の自分も兄に苦労を掛けているのかもしれないと考えつつ疲れ切ったコウの下に、ヒトメバネと呼ばれる吸血獣がけんとの匂いにつられてやってくる。ヒトメバネを退けるコウだが、母体が2体おり、ピンチを迎える。そこにシンが帰宅、無事救出される。シンはフタマタと呼ばれる吸血獣を連れており、ペットとして飼うことになる。

第3話
シンの学校には2大イケメンがおり、それは緋月シンと友人の「西山泉生」である。話は真奈と呼ばれる女子生徒目線で進められる。真奈は何も買えなかった購買でパンを譲ってもらったことをきっかけにシンへ恋心を抱いている。シンの帰り道をストーキングしながらパンを渡すおばちゃん軍団や抱きつくコウを羨望の目で眺める。嫉妬心が生まれたところに吸血獣が憑依、泉生を階段から突き落としたり、彼女持ちの噂が立つシンを襲ったりしてしまうが、コウとシンによって吸血獣は撃退されてしまう。目を覚ました真奈と兄弟で一悶着する陰では泉生が謎の女性と電話し、緋月兄弟が吸血鬼であることを報告していた。

第4話
コウが帰宅するとシンが普段使っている手套を発見、兄の真似をしたところ破いてしまい、丁度帰宅したシンに見つかってしまう。元々買い替える予定だったと話、対吸血獣用道具の店だといい駄菓子屋「ぷれぜんと」に向かう。”深緋の鉄錆味を三つ”の合言葉から現れたのは「アリス」と呼ばれる見た目は少女だが長命の吸血鬼であった。対吸血獣用道具に必要な吸血獣の結晶を集めに駄菓子屋の地下にある広大な洞窟で吸血獣狩りを始める。コウが自分が吸血獣狩りをすると言い、アリスによって吸血獣の弱点講座が開かれる。大型の吸血獣オロチに対して王の血の力を使い撃破すると、アリスは最近の吸血獣活性化にコウの力が関わっていると推測する。その後帰宅途中に泉生とそのイトコだという京華と出会い、意味深な言葉を放つ。

第5話
開幕から男女4人組がテレビで映画を見る様子が描かれる。西山家の団欒の様子であった。泉生と妹の瑞生は宿題をしに部屋へもどるが、実は瑞生は吸血鬼に捕らえられており、そこにいたのは吸血鬼の生み出した分身であった。泉生は妹を人質に緋月兄弟への接触を命じられており、次なる命令はコウを捉えるのに障害となるシンの殺害であった。泉生はシンに相談を持ち掛けるふりをしながらシンの腹部へナイフを突き刺す。一方コウは偽物のシンに騙され、京華の下へ連れ出される。コウは京華に敵意を向け交戦する。再び場面は戻り、泉生とシンは、泉生が本当のことを話し、コウと瑞生を助ける必要があるとわかった。シンはフタマタのさぶろーの毛に血を垂らし、分身体を作るとコウのランドセルに忍ばせた本体のさぶろーを探しに向かう。

第6話
コウは捕らえられ、とある廃墟に転ばされていた。そこには瑞生も捕まっていたが、どうやらコウは瑞生を助けようとして京華に倒されたようである。京華がコウを捕まえる理由はコウの力によって吸血獣の出現が増していることであり、その力を使って人間たちを支配しようと企んでいた。そんなところにシンが到着、京華との戦闘が始まるが瑞生を盾にされまともに戦えない。壁に押し込まれたシンは、コウをかばいながら壁をぶち破り砂煙の奥へ飛ばされる。しかし現れたのは泉生、シンはその隙に上階へ登り天井から姿を現した。京華の首を捕まえると「二度とコウを傷付けるな」と口にし、京華を逃がした。西山兄妹は疲労から寝てしまう。コウは好戦的な吸血鬼がいることにショックを覚え、また現れることを危惧する。シンはその時はまた自分がコウを守ると宣言するが、コウはそれを遮って一緒に守るの間違いだと言い放ち、二人で大切な人達を守ろうと決心する。

第7話
泉生の謝罪から始まり、兄弟が行っている吸血鬼への血液の配達を手伝うことになる。訪れた家には、友達を襲いそうになりトラウマを抱えた少女キリがいたり、コウを慕う老年の吸血鬼がいたりと様々だが、人間と最低限しか関わりたくない様子が見て取れた。ここで吸血鬼人口は世界の人口の0.2%だという情報がシンから語られるが、そんな中悪漢に絡まれる女性がいた。一見男たちがしつこくしているように見えたが、その女性は吸血鬼でいまにも男たちの血を吸いそうになっていた。シン達が現れたことで難を免れたが、人間への恨みを口にする女性を見て泉生は吸血鬼の生きづらさを感じる。別の場所で先ほどの悪漢達は廻峯と呼ばれる吸血鬼により首を両断されてしまう。京華を責めながら灰賀と呼ばれる吸血鬼とともに緋月兄弟に敵意を向け、人間たちは自分達の所有物、家畜であるとそのスタンスをあらわにした。

第8話
キリの家を訪れるとキリは人間の少女アキと遊んでいた。襲おうとしてしまったことから疎遠になっていたが、無事仲直りできたようである。キリの母は改めて緋月兄弟の特別さを認識するとともに、コウから兄が人間であることを知った際のエピソードが語られる。数日後、キリがアキとともに行方不明になる。西山瑞生の名を騙る手紙を見て緋月兄弟は京華と戦った廃墟へ向かう。吸血鬼は空腹が長く続くことで吸血獣化してしまい、完全に獣化すると二度と戻れない。そのため吸血獣を結晶化し砕くことが獣化した吸血鬼を救う方法であるとシンは語る。4日も血を飲めていないキリを不安に思いながら到着、キリとアキを見つけるが、時すでに遅くキリは半獣化、アキは血を吸われて息絶えていた。二人の誘拐は廻峯からの挨拶であり、吸血鬼と人間は共存不可であると示すことが目的であった。

第9話
キリはひとまずアリスのもとで匿われることになった。緋月兄弟はアリスから吸血鬼と人間の因縁について教えられる。16世紀、東欧の小さな村で暮らす吸血鬼の家族がおり、周囲には隠して過ごしていた。息子のアルフレートは友人にだけ正体を明かしたのだが、それを怖がった友人によって村人へ告げ口され、アルフレートの家族は家に火を付けられ焼き殺されてしまう。裏切られた彼は怒りと悲しみから村人を皆殺しにする。この一件から吸血鬼の噂は広がり、吸血鬼と人間の長く続く対立が始まった。ただし人間側はもうほとんど吸血など信じていないという。この話を聞き、コウは「仲直りしたらいーじゃん」と叫ぶ。人間と吸血鬼は分かり合えると兄弟で伝えることを理想に掲げることになる。

第10話
コウが下校しようとすると目の前に灰賀が現れる。灰賀には敵意はなくコウと話そうとするが、さぶろーに目を奪われた灰賀はさぶろーを触ろうとする。さぶろーは逃げ出し、灰賀はそれを追う、すると車道へ飛び出してしまう。運悪くトラックが突っ込み灰賀はふっ飛ばされる。運転手は悪態をつくが、立ち上がり首を回す灰賀に怯え再び突っ込んでくる。灰賀はトラックに対して拳衝を放ちハンドルと運転手以外を粉々に消し飛ばす。運転手を人質とり、王の血の力、無明の血盟の力がいかほどか確かめるべく勝負を挑んできた。

第11話
山奥へ向かいシン対灰賀の勝負が始まる。劣勢のシンであったが、作り直した手套が自分の血に反応していることを察知し、コウと協力して強化された「紅穿烈掌」を放つ。灰賀の胸を貫き膝をつかせることができた。運転手を解放するものの、一部始終をみていた運転手は化け物と叫びながら走り去る。そんな人間を守る意味があるのかと灰賀は立ち上がり、兄弟に問いかけるが、シンは「ろくでもない人間でも、罪のない何も知らない子供でも一方的に殺されていいわけがない」と言い改めて灰賀に敵意を向ける。

第12話
自身に一矢報いた兄弟に感心する灰賀。灰賀によれば血の武器化は王統の貴族にしかできない能力であり、更に血盟を結んでいるコウは先代の王を上回る力を持つ可能性があるという。シンは灰賀が強い相手を求める理由を尋ねるが、そこに廻峯が現れ、灰賀の脇腹へ剣を突き刺す。廻峯はキリとアキの誘拐を自分が行ったと言い、人と吸血鬼の共存を否定した内容だったと語る。これが緋月兄弟の逆鱗に触れ、コウは血の瓶を二つも飲み干し、先ほどよりも強い攻撃を廻峯へ放つ。廻峯への攻撃は灰賀がかばったことで届かないものの、尻餅をついた廻峯に対しキリへの謝罪と二度と自分たち以外を巻き込まないことを誓わせようとする。しかし廻峯は余裕そうな表情を浮かべ、血の武器化を見せる。

第13話
廻峯は、始祖の血を引く7つの大家「七王月」の一つ、朱月家の末弟であり、吸血鬼の貴族であった。シンは朱月家は人間に友好的でそれ故に跡取りを残さなかった家だったと聞いており、廻峯の言動がそぐわないことに疑問投げかける。廻峯は「先代の王は何も教えないんだね」と言うと兄弟を攻撃し、二人を圧倒する。廻峯は自分の貴族が人間に滅ぼされたことを告げ、兄弟を見ていると腹が立ち、壊したくなると述べる。そしてシンの血を吸い始める。十分に吸血し満足げな廻峯であったが、突如シンの血が武器化し、廻峯を襲う。コウがゆっくり二人の下へ近づき、シンは自分のものであり、飲むことも触れることも自分以外許されないと口にする。シンを抱えると廻峯へ罰を下すと言い周囲に血の渦を纏わせる。廻峯、灰賀はコウが他人の血を操る能力を持つことに気づき、その力があれば全ての人間を操り、邪魔な「抑止力」を殺し、飲みたいように血が飲めると希望を実らせる。コウはシンの血を直に飲むことで真の力を解放し、廻峯と対峙する。廻峯は「あの方」へ恩を返すためこの場でコウを連れて帰る決心をする。

第14話
コウと廻峯の対決は一方的なもので、廻峯の武器は破壊され、不意打ちも効かず、挙句には自分の血の武器までコウに取り込まれてしまう。狼狽える廻峯に回復した灰賀が一度退くように促す、灰賀が「廻峯様」と呼んだことで二人に主従関係があったことが明かされると、二人の過去回想が始まる。廻峯の姉は人間と結婚することになっており、それは正体を明かしながらも人間と共存できる朱月家だからこそのことだと誇りを持っていた。しかし、姉の婚約者は吸血鬼の繁栄を抑える「抑止力」の一員であり、朱月家は皆殺しされてしまう。回想では抑止力からの攻撃を灰賀がかばったが、それと対比的にコウからの攻撃を灰賀から廻峯がかばい、一撃を食らう。

第15話
廻峯は倒れ、コウは反動で意識を失う。廻峯は、シンがコウを思うように自分にも大切なものがあったが、それを人間に壊され、二度とそんな思いをしないように「あの方」の手を取ったと語る。廻峯が人間を襲う理由に対しシンはそれでも罪のない人たちを襲うやり方は間違っていると反論、自分ならば誰も傷つけない方法を探すと宣言する。そんな折に廻峯の背に矢が突き刺さる。現れたのは「抑止力」、5人の少年少女で構成された政府公認の秘密機関「光狼」(フェンリル)であった。灰賀は反撃するが、攻撃はいなされ、逆に串刺しにされてしまう。光狼の隊長とされる少女はシンに近寄り、吸血鬼に耳を貸さないように告げる。すると、シンの胸にある従僕の印に気づき、廻峯達の仲間かと警戒を見せ、仲間に拘束を命じる。絶体絶命のピンチにタキシード姿の男性が姿を現し、「連れて行かせない」と言い放つ。

第16話
現れた男は紅月藍月、七王月の一つ紅月家の長男である。シンの従僕印が彼によるものと予測した光狼の隊長はボスへの報告のため撤退判断を下す。暫く経ち、シンが目を覚ましたところから始まる。コウも心配していたようで3日間眠り続けていた。そんな兄弟のもとへ廻峯、灰賀が現れる。藍月は二人も救助し、今まで帰らせてくれなかった。兄弟を人質にしようと企むところに藍月も登場し、兄弟との親戚関係を明かすと、話を変えて廻峯がキリを獣化させようとしたことに触れる。藍月は廻峯を地下に突き落とし、吸血獣になるまで反省しろと罰を与えることにした。

第17話
藍月はシンの師匠であり、シンの人間離れした動きは藍月によるものであった。屋敷は藍月の血が混ぜられた素材で作られているため、藍月の思うままに動かせる。それだけでなく廻峯が突き落とされた部屋は入ったものの記憶・精神に作用し、消耗させることを目的とした空間であった。藍月の推定では3日保つかどうかといったところである。灰賀は自分も入れてほしいと廻峯の下へ行く意志を見せるが断られる。だが、シンも廻峯を助けたいと述べる。一方でシンの要求に対してコウは「助けない」と拒否する。相手を見捨てることは廻峯と同じことになると説得しようとするシンだが、コウはずっと家にいて退屈だから外に行こうと強引にシンを連れ出してしまう。そのまま3日間兄弟は戻ってこず、藍月はコウが成長してないことに落胆を見せる。

第18話
飢餓に苦しむ廻峯は反省の様子が無く、いまだ地下空間から出されていない。そんなところへ緋月兄弟が帰還する。逃げたわけではないと兄弟が述べると、限界を迎えた廻峯が自力で地下空間から脱出してくる。廻峯は苦しみ、頼むから助けてほしいと懇願する。コウは自分たちに謝るよりも先に謝るべき相手がいると告げ、キリを部屋に入れる。自分を半獣化させた相手であるのにキリは自分が飲む用の血を廻峯に差し出す。自分も苦しいのは分かるからと口にするキリに廻峯は謝罪の言葉を述べた。一先ず落ち着けた廻峯は灰賀と、抑止力に襲われたあの時に助けてくれたのが「あの方」でなければ自分達は今と変わっていたかもしれないと話す。加害者の廻峯の下へキリを連れ出してこれたのは緋月兄弟のやさしさと素直さがあったからであり、綻びを真っすぐな方法で直そうとするところが先王に似ていると藍月は思い浮かべる。ところ変わって、コウは自分が王の子でなければ周りの人が巻き込まれなかったと嘆いていた。しかしシンは、自分はコウが王の子だったから会え、コウの隣で支えるために生まれてきたのだと語る。どんなことがあっても二人でなら乗り越えられると励まし、コウはシンが自分の兄で良かったと笑顔を見せた。



あらすじ書くの大分疲れますね。

ところどころ突っ込みどころがあったり、話の展開が唐突だったりとしますが、大体上の通りで進行していたかと思います。

話の区切りで言えば、

3話~6話:泉生・京華編
7話~15話:対灰賀・廻峯編
16話~18話:藍月編(まとめ)

といった具合に分かれています。1話は物語のテーマを伝える回、2話はかなりイレギュラーな回のため区切りには関与しかねます。

人間側に吸血鬼を知る仲間を作る泉生・京華編、吸血鬼同士で思想の対立を見せる対灰賀・廻峯編であり、人間と吸血鬼の共存を目指していくテーマとして交互に話を展開していくつもりだったのかもしれません。

明かされた話だけ見ると、吸血鬼がとことん人間に被害を及ぼしており、吸血鬼側が共存を謳ってもそれは難しくないかと思われますが、人間の中にも吸血鬼に対抗できる「抑止力」という存在がおり、かつて吸血鬼狩りも行われていた事実が見られます。いつか爆発する吸血鬼に怯える人間と、生活圏から排除しようとする人間を憎む吸血鬼、共存を目指す上ではこの問題を解決しなければならないことが分かります。

さて、「抑止力」や「七王月」、「あの方」だったり、第一話で吸血獣が放った「月光」など、興味深いワードを考察していくことも面白そうですが、今回は、ぼくらの血盟のテーマはなんだったのかを考えてみたいと思います。


Ⅱ.本当に共存が主題にあるのか


さあ、見出しの通りです。ぼくらの血盟は人間と吸血鬼の共存を目指す兄弟話ですが、果たして本当にその通りなのでしょうか。

緋月兄弟の主張の多くは人間と吸血鬼、一緒に暮らしていきたいというもので、たとえ愚かな人間であっても、吸血鬼であっても、互いに許し合う関係性が望ましいとしています。

トラックの運転手を助けた後も、廻峯の解放を望む際も、誰であっても見捨てることはできないというのがシンのポリシーにあります。藍月はこの考えを優しすぎると評していました。

コウも「仲直りしたらいーじゃん!」の言葉の通り、和解の道を目指せばよいと考えており、最終回では廻峯がキリへ謝罪する場を設けてその場を収めています。

そして共存のために見せるのが自己犠牲の精神です。周りに被害を出すことを許さず、自分達の力で救おうとするのが緋月兄弟であり、吸血鬼の王としての役目なのでしょう。

ですが、なにやら不思議なことがあるのです。

この作品で「共存」という言葉が使われた回数……4回

なんだと…?

第1話:三ツ首型吸血獣「人間と共存など馬鹿げたことを…」
第1話:緋月シン「地道にやりましょう 人間と吸血鬼の共存を目指して」
第8話:朱月廻峯「吸血鬼と人間は所詮捕食と被食のカンケイ 共存とか無理だよ~ってね♪」
第12話:朱月廻峯「人と吸血鬼の共存を否定した内容だったんだけど」

第1話の最後で述べられた共存を目指すメッセージですが、最終回では触れられていません(そもそも最終回に人間は一人も出てこないので当然といえば当然か)。それどころか廻峯の方が多く発言しているようです。

一応、京華も種を超えた絆という言葉で緋月兄弟を罵倒していますが、こうした様子をみると敵側が一方的に人と仲良くしていた緋月家を敵対視しているだけのようにも見えます。

前述の通り、緋月兄弟のポリシーはみんな仲良くであり、それは種を超えたものであり、同胞同士でもあり、全てをひっくるめて生きていくことを目指しています。敵側のボス「あの方」は緋月家襲撃の際に「愚かな緋月の兄弟よ」と述べており、その配下である京華や廻峯は緋月兄弟が人間好きな吸血鬼であると考えている節があります。

すなわち「人間と吸血鬼の共存」は敵側が生み出した架空の相手だと言えるのです。


Ⅲ.兄弟の相互的守護関係


共存というテーマに代わって、この作品で多く現れる要素は「兄弟がお互いを守ろうと考えている点」です。

第1話:緋月シン「コウを守れるなら俺は何でも構わない」
第1話:緋月コウ「おれだって兄ちゃんを守る!」

第2話:緋月コウ「昔からずっと…兄ちゃんに甘えて守られてばっかりで…」

第5話:緋月シン「…もちろん助けます 俺にとってコウは大切な存在ですから」

第6話:緋月シン「二度とコウを傷付けるな」
第6話:緋月コウ「…あんな吸血鬼もいるんだね…また来るのかな……」
     緋月シン「…心配しないで下さい その時は俺が必ず…」
     緋月コウ「俺がじゃないよ 一緒にだよ 兄ちゃん」

第18話:緋月シン「コウを隣で支えるために俺はきっと生まれて来た」


シンはコウを守ろうとするのに対して、人間でありながら無理をするシンを気にかけ、コウもシンを守ろうとします。そして目指しているのは周りの人達、吸血鬼達を争いから守ることで、それを二人で協力して成し遂げようとしているのです。

この兄が弟を守る、弟が兄を守る、二人で周りを皆守るという宣言はほぼ各区切りの終わりで誓っているものになります。

相互的な守護関係と「二人で」平和を守ること、こちらの方がこの作品においては重要視されているように思われます。

言ってしまえば、人間と吸血鬼の共存はゴールではありますが、作品で描きたいのは、強いが自己犠牲の精神が強い兄と本気を出せば兄を超える強さの弟、二人が互いを守ろうとするところではないでしょうか。

また、この作品では兄を騎士、弟を姫とした騎士道精神が見られるのですが、それはまた別の場所で話せれば話したいです。


結論としては、「人間と吸血鬼の共存」が目的でなく手段となっていることが作品における違和感の原因になっているように思われます。


Ⅳ.第1話の時系列


さて、もう一つ妄想的に語っておきたいのが、第1話が時系列ではどこに置かれるのかという話です。

第1話なんだから1番最初だろ!!!!が正解だと思いますが、
ここでは「最終回以降、それよりずっと先の話」と考えてみると面白いのではという説を持ち出してみたいと思います。

まず、おおまかにセクション分けしたときにも見られましたが、第1話はどこのセクションにも入っていません。読み切り的などの話にも接続しない単話となっています。そのため第1話はぼくらの血盟においてどの時点での話と見てもおかしくないものと言ってよいのではないでしょうか。

第2話も単話となっていますが、以降の話で関わるさぶろー初登場回であるので、時系列は泉生・京華編以前であることは確定となります。

次に第1話で語られる設定は後々の話で触れられているものが多いというところです。

血の繋がりが無く、同じ種でもないこと、血の縛め、捕食と被食の関係、血盟を交わした下僕の血の味(廻峯曰く甘いらしい)、自分の血を武器化できる特別な吸血鬼…

第1話を後ろに回すことによってそれまでの話で触れた話題が集大成となって一つの話にまとまったように見えてくるのです。総まとめの話、いわば最終回に相応しい一話とも言えそうですね。

そしてさらに、緋月兄弟が自主的に人を守りに巡回するのは第1話だけです。それ以外は受動的に事件へ巻き込まれていきます。様々な事件を通し、人々を守る決心を付け、吸血獣に悩まされる人の下へ訪れるようになったと考えると、人間と吸血獣の関係性を知る一通りのストーリーが必要になってくるので、廻峯との戦闘などを経験した後に第1話を持ってくると面白いのではないでしょうか。

第1話でシンが口にした「人間と吸血鬼の共存」も廻峯達が発した言葉を受けてモットーとしたと考えれば、一応頷けるのではないでしょうか…。


Ⅴ.おわりに


好き勝手に書きましたが、このように一つの作品の読み方、深め方は幅広いものです。今一度打ち切り作品であっても読み返すと面白いかもしれませんね

だからといって設定のガバガバさが許されるわけではありませんけどね!!


おしまい

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