見出し画像

二十分の一を共にして

ある六人組のアカペラグループに心を奪われてからちょうど一年が経ったが、彼らに持っていかれた心は一向に帰ってくる気配がない。

彼らは同じ大学の合唱部に所属していて、アカペラグループを結成し、今年は二十周年に当たるという。

専業で音楽活動をしているのではなく、全員が会社員を本業としている。
そんなことを知って彼らに惹きつけられた訳ではなく、最初はグループ名のとおり会社をリストラされて集まった歌の上手いオジさん(失礼極まりない)六人で結成されたのかと思った。
彼らの動画を常軌を逸した勢いで視聴してそんな訳ないことはすぐに分かったのだけれど。

彼らの作品やメンバーそれぞれの個性には中毒性があり、動画の視聴を止められない。
嬉しいことがあっても、辛いことがあっても、気分が乗らない時でも聴けばその時の気分に寄り添い私のご機嫌を取ってくれる。やめられない。

そんなこんなで一年が経過したわけだが、この一年は私の人生を振り返っても音楽体験的に特異な期間となった。

言葉というものに割と敏感なほうだからか、理解できる言語で歌われると、その歌詞が心に響くものであればあるほどそれに引っ張られてしまい、気が散って音楽自体に集中できないから、聞くのは主に器楽演奏が中心だった。

そのうえ、そもそもがアカペラは苦手である。
絶対音感の人ではないが、音程が不安定だと体が受け付けない。
知っていますか? 音痴なお坊さんっているのである。お経でさえもちゃんと唱えていただけなければお腹のあたりがこそばゆくなって、しかも笑ってはいけない場面がほとんどなので発狂しそうになるのである。

アカペラ演奏も一人が音程をはずしているくらいなら、あ、一人困ったのがいるな、で済むかもしれないが、たいてい複合汚染されていたりするので聞いていると、すりガラスを爪で引っ掻く音を聞いた時くらいに不快になる。
しかも、ご本人たちはドヤ顔でイキってたりするので余計にムカムカする。ちゃんと歌え!カッコつけてんじゃねーよ!である。
控えめに申し上げてアカペラは大嫌いだったのだ。

なのに、私のYouTube視聴履歴が綺麗に彼らの動画のみに占められたのは何故なのか

○彼らのレパートリーである昭和歌謡は歌詞も既知で私の中ではさんざん咀嚼され既に消化済みだから心を乱さない
○プロの歌手のように歌唱がこちらの心を掻き乱すほどの破壊力を持たない(良い意味で言っています。また、それほどの力があるならばアマチュアではいられないでしょう)からコーラスやリードボーカリストを「楽器」として心ゆくまで堪能できる
○全ての「楽器」の音色が個性的で素晴らしくかつチューニングが大体正確でハーモニーに危なげがない
○ポイパ、ベースが人間離れしている

と、表面的な理由はここまで。
長々と書いてきた駄文を途中で放り投げずに読んでくださったあなたにだからこそ、彼らに惹かれた本音の部分を書き散らしたものをお見せする。
いずれも過去にXに投稿したものである。

**********************
2023/9/4投稿
夢と一緒に現実を歩いている姿に勇気づけられる。それがなかなか難しい事はわかっている。だからこそ鮮やかにそれをしてのけている彼らにこんなにも惹きつけられるのか。

ここまで生きてくる中で手放してしまったいくつもの夢のようなものたちを、もし失わずに来たとしても、いつかの時点ではっきりとした形で壊してしまったかもしれない。それは誰にもわからない。

でも、夢と一緒に歩んできた彼らの強さに憧れる。若かった私もそうであれたらと。6人分の人生はたったひとつに何かあれば、容易に夢に罅をいれる。壊れずに来たということの何と尊いことだろう。

懐かしい場所が残っていたりなくなっていたり‥でも、リストラーズのメンバーの皆さまは変わらずに。感動して、ちょっとおセンチになってしまった今日のワタシ。


2023/9/13投稿
よっぽど好きでなければ趣味なんていつでもやめてしまえるし、人間関係も疎遠になる。
その、よっぽどが重なって今の彼らがあるとすれば、動画からプラスの波動しか伝わってこない理由がわかるような気がするな。

キラキラが眩しくて羨ましくて。燃える火に吸い寄せられる羽虫のような気持ちで彼らに憧れずにいられないのです。
**********************

私の人生の一年間を占領してしまった彼らは、二十年もの長い間ひとつのことを続けてこられた。
その重みはたった一年を彼らに触れて過ごしただけの人間がここで薄っぺらい言葉で語れるようなものではない。
学生の集団から年輪を重ねて大きく飛躍されたこれから先、おそらく好きや楽しいだけでは続かないだろう出来事に遭遇されることも考えられる。
偉そうに申し上げる資格も立場にもないが、人生の先輩としてひとことここで呟いておきたい。

走り続けるとくたびれる
挫けてもいい
嵐が過ぎ去るまで休んでも
でも曲げないで
二十年も続いたのだから
それくらいのことで壊れるあなた方ではない
一時の感情や気の迷いに囚われたら
視線を上げて遠くを見つめてみるといい
それだけでいい
自分たちを誇らしく思い返している二十年後の姿が見えるだろうか
それだけでいい




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?