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哲学者でも科学者でもない素人が、哲学とか科学とか科学哲学とかを考えながら本を読む。

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マガジン

  • TAOCP読書メモ

    Donald E. Knuth博士の The Art of Computer Programming の読書メモ。 アスキードワンゴ社から出ている日本語訳を読んでいます。 https://asciidwango.jp/post/122327235600/the-art-of-computer-programming-volume-1

最近の記事

学問の健康とは何か

『数学の基礎をめぐる論争』を読んだ。 もともと、数学基礎論・数理論理学への興味から巡り合った本だった。 しかし、この論争は、学問の健康とは何か・学問の健全な発展とはどうあるべきか、という問いについて非常に示唆的であると感じるようになった。当然ながら本書は数学の健康についての論争の様子を描いた書物であるが、同種の議論は物理学・哲学など学問一般へ広い射程を持つのではないか。 せっかくなので、数学的な話題にも触れながら、数学以外にも射程を持ちうると考えた話題についても私の考え

    • 『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』を読んで

      小熊英二氏著『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』を読んだ。 読み終わって思った。これは素晴らしい本だ。 私の薄い知識で本書の書評をあれこれ述べるよりも、実際に本書を手に取って読んでいただく方がよいだろう。しかし、同書が万人向けの本ではないというのもまた事実であると思われる。 そこで、この稿ではまず同書に書かれていることと書かれていないことをかんたんにまとめ、想定される読者を挙げる。そののちに私のかんたんな書評を付け加えることとしようと思う。 概要本書に書

      • 『数学-その形式と機能』を読んで

        ソーンダース・マックレーン著『数学-その形式と機能』を読んだ。 本稿はその読書メモである。 概要いわゆる数学基礎論について、数学全体を俯瞰しながら著者の”機能的形式主義 (functional formalism)”の立場から「数学とは何か?」を記述している、数学の哲学についての書物である。 数学の哲学については他にも書物がたくさんあるが、形式主義を貫きながら基礎論の範囲を超えて数学全体を俯瞰する書物はなかなか無いのではないか。哲学者が書いた書物では、数学と科学の区別がつ

        • The Art of Computer Programming を読む(8)

          (7)の続き。 4. 素数印刷プログラムPの手動アセンブル+----+-+--+--+--+--+--+|0000|+| 0| 0| 0| 0| 2||0001|+| 0| 0| 0| 0| 0||....|+| 0| 0| 0| 0| 0|+----+-+--+--+--+--+--+|1995|+|06|09|19|22|23| ALF FIRST|1996|+|00|06|09|25|05| ALF FIVE|1997|+|00|08|24|15|04|

        学問の健康とは何か

        • 『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』を読んで

        • 『数学-その形式と機能』を読んで

        • The Art of Computer Programming を読む(8)

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        • TAOCP読書メモ
          8本

        記事

          The Art of Computer Programming を読む(7)

          (5) の続きから。 アルゴリズムP (500の素数の表を印刷する)素数列挙プログラムを通じてMIXALを学ぶ。 ローカルシンボル 今いる行から一番近い行を指示することができる。プログラム内で複数の同じシンボルを扱うことができ、記号名の取り扱いの煩雑さからプログラマを解放する。 ALF MIXの5バイトの定数を作るが、その時に文字コードを利用する擬命令。 ORIG ここに来て意味がわかるようになった。MIXアセンブラが解釈するロケーションカウンタの値をアドレス欄の値に

          The Art of Computer Programming を読む(7)

          The Art of Computer Programming を読む(6)

          ひょんなことから、書店で "The Art of Computer Programming Volume 1, Fascicle 1: MMIX - A RISC Computer for the New Millennium" を見つけ、購入することができた。 TAOCP Vol.1 1.3 MIXには、次の記載がある。 MIXが現在ではすっかり時代遅れであることは認めなければならない。したがって、MIXは本書の次の版でMMIX, 2009型、という新しい機械にとって代

          The Art of Computer Programming を読む(6)

          圏論に案内される

          『圏論の道案内』を読んだ。本稿はその読書メモである。 コンピュータ・ソフトウェア関係の人間であれば、だいたいHaskellのモナドから圏論に触れるのではないか。御多分に洩れず私もその一人だった。 私はHaskellが好きだし関数プログラミングは素晴らしいと信じているが、Haskellで仕事をしているプロフェッショナルのプログラマーではない。よって、私がHaskellに対して思っていることは、もしかしたら現場でHaskellで仕事をされている方からすると事実でないことがある

          圏論に案内される

          The Art of Computer Programming を読む(5)

          1.3.2 MIX アセンブリ言語から。 MIX Assembly Language, MIXALについて。 ほぼほぼMIXの機械語と同じだが、いくつか重要な違いがある。 ・LOCにラベルがつけられる ・OPに、実際の命令ではない擬命令がある ・* (アスタリスク) という、自分のメモリ番地自体を示す記法がある LOCにラベルがつけられるこれは、実際に機械語に翻訳された時点ではメモリの番地になっているはずだが、MIXAL上ではラベルをつけて、そのラベルを持ってメモリの番

          The Art of Computer Programming を読む(5)

          The Art of Computer Programming を読む(4)

          1.3.1の演習問題の続きから。 26.ブートストラッピング問題。 MIXの場合は、カードから起動時の処理を読み込むという処理が組み込まれている (GOボタン)。したがって、この最初に読み込むカードに、「カードを読み込む」という処理、つまりカードローディングルーティンを書いておく必要がある。 現代のコンピュータで言えば、MBR (Master Boot Record) に書かれている処理のようなものだろうか。自分が今まで書いたこともないような処理だったので新鮮に感じた。

          The Art of Computer Programming を読む(4)

          The Art of Computer Programming を読む(3)

          1.3.1の演習問題の続きから。 18.与えられた下記プログラムを実行すると、コンピュータの内部状態(レジスタ・トグル・メモリ)がどうなるか、という問題。 STZ 1ENNX 1 STX 1(0:1)SLAX 1ENNA 1INCX 1ENT1 1 SRC 1 ADD 1DEC1 -1 STZ 1CMPA 1MOVE -1,1(1) HLT 1 ちゃんと命令を追っていけば難しい問題ではないのだが、Knuth先生の解説はあまり親切とは言えず、私のように命令を追い間違えた

          The Art of Computer Programming を読む(3)

          The Art of Computer Programming を読む(2)

          前回の続き。 今日は1.3.1の演習問題から。 16.メモリセルの0000-0099をすべてゼロに初期化する問題。(a)コードが短いプログラムと(b)実行時間が短いプログラムがそれぞれ求められている。 (a) STZ命令とMOVE命令を使う。MOVE命令は、rI1で指定された場所に、Fで指定された数のワードを動かす。Fは1バイトなのでMIXの規格上63以下しか入れられない。ということでMOVE命令を2回呼ぶ必要がある。 STZ 0ENT1 1MOVE 0(63)MO

          The Art of Computer Programming を読む(2)

          The Art of Computer Programming を読む(1)

          今年は、一日少しでも The Art of Computer Programming を読み進める、というのを目標にしようと思う。 The Art of Computer Programming といえば、TeXや文芸的プログラミングなどで有名な Donald Knuth 先生の名著である。TAOCPと略すようだ。ちなみに複数巻構成で、現在4巻まで出ているが完成していない。 ちなみに、私の本書に対する態度は、「計算機の内部に興味がある人が読む本。全てのプログラマが読む本で

          The Art of Computer Programming を読む(1)

          意識について、植物状態から考える

          『生存する意識』を読んだ。本稿はその読書メモである。 もしこの記事を見たあなたが、閉じ込め症候群 (Locked-in syndrome) という単語を聞いたことがなかったら、今すぐブラウザを閉じてこの本を読むことをオススメする。 いや、もしかしたら閉じ込め症候群の患者が書いた本を先に読む方が、当事者意識を以って心に訴えかけてくるものがより切に感じられるかもしれない。 閉じ込め症候群の患者が書いた本としては、例えば下記である。 意識についての哲学は、端的に言えば 「意識

          意識について、植物状態から考える