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気候変動にまつわる数字

ビル・ゲイツとジョン・ドーアが書いた気候変動対策の本に出ていた数字がとても参考になったので要点をまとめておきたい。

全体目標:2050年時点での気温上昇を1.5度以下に抑える

  • 気候変動から破壊的影響が生じるのを回避するためには、2050年時点の気温上昇を少なくとも1.5度以下に抑える必要がある。

  • このためには、長期的には大気中の温室効果ガス濃度(ストック)を430ppm以下で安定させる必要がある。

  • これを実現するためには、遅くとも2050年時点での温室効果ガス排出量(フロー)のネットゼロを実現する必要がある。

  • 現時点では、2050年時点で大気中の温室効果ガス濃度が480ppmを突破し、2度以上の気温上昇が避けられない見込みとなっている。

  • 全世界において、2050年時点の温室効果ガス排出量ネットゼロの実現に向けて更なる野心の引き上げと実践が求められている。

1.5度目標の実現には、ストックとフローの数字が入り乱れている感があるので以下に整理したい。

ストック:430ppm

  • 気温上昇(ΔT)は大気中の温室効果ガス(GHG)濃度から計算することができる。ΔT=1.66ln(C/Co) 

  • Cは計測年のGHG濃度(2023年2月時点で約419.88ppm)、Coは産業革命前のGHG濃度(約280ppm)

  • 気温上昇を、産業革命以前の平均気温と比較して、1.5度以下に抑えるためには、ストックの数字である大気中のGHG濃度を430ppm以下に抑える必要がある。

  • 仮に430ppmを超えて濃度が上昇した場合も大気中からGHGを吸収する技術の実用化によって濃度を下げることは原理的には可能。

  • ただし、気温が1.5度以上あがると、例えば、南極の地表の氷が少し溶けた結果、太陽光を以前より吸収しやすくなり、更に氷が溶けやすくなってその悪循環が続く(ティッピングポイント)といったことが起こりやすくなり、世界に壊滅的な影響を与える危険性が高くなるため、そもそも1.5度以上の気温上昇を起こさないという目標を達成することが重要。

フロー:510億トン→0

  • 一年間に世界で排出されているGHGは約510億トン

  • 気温上昇を1.5度以下に抑えるためには、フローの数字である、年間のGHG排出量を、遅くとも2050年までにネットゼロにする必要がある。

  • ネットゼロというのは、再生可能エネルギーへの切り替え等のGHG排出削減策で賄いきれない部分を、DACやCCSといったGHG吸収技術も活用してゼロにするということ。

  • 仮に2050年時点でGHG排出量ネットゼロを実現したとしても、その時点での大気中のGHG濃度が430ppm以上であれば、それ以降はGHG吸収量が排出量を上回るようにして、大気中のGHG濃度を430ppm以下に下げていく必要がある。

対策:化石燃料から再生可能エネルギーへの置き換えがカギ

  • GHG排出量の排出源別割合は、大まかに製造31%、発電27%、食糧19%、交通16%、冷暖房7%となっている。

  • 製造では主に鉄、セメント、プラスチックの製造工程でGHG排出。

  • この中で、発電は、交通や冷暖房、そして製造の一部にも関係。

  • 上記に含まれないものとして、DACやCCS等の大気中からGHGを吸収する技術の開発も期待されているが、その成否は未知数であり、また、2050年時点のインパクトは最大で約100億トン。

  • 以上から考えると、全体排出量の約半分に関係する発電源を、化石燃料から再生可能エネルギーに切り替えていくことが最も重要。

海外と比較した日本の現状と課題

  • 例えば、イギリスは、2035年までに国内の電力需要を100%再生可能エネルギーで賄うことを掲げている。

  • これに対し、日本では、2030年時点の発電源に占める再生可能エネルギーの目標は36%~38%となっている。また、2030年時点の化石燃料の発電源に占める割合の目標は約50%となっており、イギリス等と比べると、野心の低さが際立つ内容となっていると言わざるを得ない。

  • 今後、Scope3等のサプライチェーン全体での排出源削減の動きが世界で広がることを考えると、発電源に占める化石燃料の割合の高さは、国際競争力の観点で重大な足枷となりかねない。

  • 2050年GHG排出量ネットゼロという、国際社会及び日本の目標を達成する上でも、再生可能エネルギーの発電割合における野心の引き上げと、政策/事業の実践が極めて重要となる。


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