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2024年 おすすめ新譜紹介|Semiratruth - The Star of the Story


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Semira Truth Garrettという人物

シカゴで生まれ育った彼女は、幼い頃から「詩」に魅了されていたという。
" 言葉を組み合わせながら、口を動かし、声帯を振動させるだけで、人々を感動させる絵画を描く事が出来る"と彼女は「詩」について表現している。
文豪の才というものは、やはり天から授けられたものなのだろうか.......
まだ義務教育に馴染み始めたばかりの少女は、着々とその沼に足を沈めていき、小学5年生の時に「詩」のコンクールで優勝をかっさらった。

元々父親からGhostface KillahMF Doomなどの硬派なMC達をよく聴かされていたという。直接的な影響というものは感じ取られないが、彼女のアイデンティティには間違いなく歴戦の英雄達が遺した魂が刻まれているだろう。

その" 影響 "という面で、彼女に最も大きな衝撃を与えた出来事がある。
2021年のある夜に、彼女の友人がサン・ラ・アーケストラの前座を務めるというので、足を運んでみた時のこと。
彼女は友人のステージにも圧倒されたと言うが、それ以上にサン・ラの計り知れないエネルギーに魅了されていた。

「テイアナのバンドには圧倒された。 でも、サン・ラ・アーケストラを見て、"スピリチュアルなつながりを感じる "と思った。 空間の重要性、特に黒人として、自分が占める空間、心の空間、過去の先祖の空間。 そのすべてが私を惹きつけてやまなかった」。

https://chicagoreader.com

彼女はもはや宇宙人と化した偉人を目の前に、スピリチュアルの探求へと旅に出る。
2021年以前から着手していたビートやインストゥルメンタルにサン・ラから得たインスピレーションを存分に注ぎ込む。
そうして完成したのが、ライブから2ヶ月後にリリースされた" I Got Bandz For the MoonLandin' "である。


スピリチュアルの根源へと迫る、3年ぶりの怪作

そこから3年間、彼女は自身の内面に秘める真理と対話を重ねていく期間に入った。
自身の深奥に潜む静謐な声に耳を傾け、己の存在の意味を求め続ける。
無常なる日々に漂う人々が、偶然にしろ必然にしろ、自己の内面を覗き見る機会を得たとき、その一瞬の閃光は、まるで天上の神秘に触れるかのごとく、彼らを魅了する。スピリチュアルな体験は、時に彼岸の光景を垣間見せ、時に心の迷宮に囚われる運命をもたらす。
前作で彼女が焦点に当てた月。その周りにぼんやりと浮かぶ小さな星々は、古来より人々が感じ取ってきた現世の狭間に存在する見えざる力、あるいは遠く隔たる次元に触れんとする欲望を具現化したものなのかもしれない。

今作は彼女が殆どの曲をセルフプロデュースし、また自身初となる生楽器の演奏にも挑戦した実験的なアルバムだ。
AmbientやIDM、Experimentalなど境界線が曖昧なジャンル間を、浮遊するように行き交う様は、まさに宇宙における次元の狭間を超える瞬間と同じだといえるだろう。
サン・ラ教に入信した少女が、いつの間にかその集団を牽引するようになったのは、彼女がこの3年間、自身と向き合った自己啓発の結果であり、このアルバムは、彼女と共に実践する体験型の瞑想、マインドフルネスなのだ。
この世の理を超えた霊的な領域の探求は、人間の永遠のテーマであり、私達が生きている本当の目的なのかもしれない。


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