高校野球、甲子園に出かける楽しみは試合だけじゃない
夏の甲子園が終わった。
暑い最中に球場まで足を運ぶのは、試合前のシートノック、これを見たいからといっても過言ではない。競馬場のパドックで、その日の調子を見れば勝ち馬を予想できるというが、甲子園も同じじゃないかと思う。
数年前、大阪桐蔭の練習を見て、このチームは優勝するに違いないと思った。今年のチームもよく鍛えられている。
ピッチャーへの返球はすべて胸元。内・外野のバックホームはホームベースの3塁側低めに返し、キャッチャーは難なく捕球してベースタッチ。横で「アウト!」と右手を挙げる控え選手。基本が出来ていて、しかも全員野球だ。相手チームの練習とは差が明白だった。
が、結果はゼロ封負け。パドックどおりにはいかないところが甲子園だ。
試合前には、係員がきれいにグラウンド整備をする。整備車がマウンドを中心に弧を描き、係員がレーキでバッターボックスをならしたあとはホースで水撒き。黒色に戻ったグラウンドに、まっすぐな白線が引かれるのをボーっと眺める。暑い甲子園で一服の清涼感が味わえる時だ。
甲子園の楽しみは、隣席の人にも拡大する。
ネット裏席が運よく手に入った。階段通路側から3番目だった。通路側には体格のいいオバさん夫婦がドッカと座り、大きな荷物が足下を塞いでいる。最初はカレーライスだった。冷たいお茶を2杯、そのあとはアイスクリーム。汗がしたたり落ち、携帯扇風機じゃ直射日光に勝てない。オジさんが焼きそばを手に戻ってきた。コーラもある。
オバさんの食事区切りをにらんで、トイレに立つチャンスをうかがっていた。「すみません、通してください」と立ち上がったのが5回のクーリングタイム。イヤな顔をして足を少しだけ引いたオバさんの前を強引に跨いだ。戻ってきたら、タコライスのようなものを手に持っていた。次からは逆側の通路をめざすしかない。
逆側にはラジオイヤホンを耳に、試合を見ずにスコアブックをつけ続けているオジさんがいた。帰ってからビデオ見たらいいんじゃないかしら。その向こうはスマホのテレビ中継に見入っている若者。ほら、目の前でやってるじゃない。横の席並びの人にも目が離せない。
甲子園は野球の試合を見るだけが楽しみじゃない。また、来年も隣席との出会いを求めて甲子園へ。
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