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グローバル化についてホントに語りたかったこと

私が初めて海外に出たのは26歳の時でした。当時所属していた企業の研究所での研究成果を発表するためにアメリカ西海岸のサンノゼという街に行きました。日本と違う空気の匂いに海外を感じたのを今でも明確に覚えています。

学生の頃から海外旅行に行っていた友人などに比べると海外デビュー(笑)は遅かったなと思います。ですがその後、縁があって欧州とアメリカで仕事をする機会に恵まれ、それぞれ5年間と3年間、家族と現地に住みながら現地の人たちと仕事をしてきました。日本にいる間も海外に居るメンバー、海外から日本に来ているメンバーと一緒に仕事をすることが多くありました。

そして今、私はベトナムのホーチミン市に来て、キャディ初の海外開発拠点の立ち上げをやっています。ソフトウエア開発体制をグローバル化する意義やその課題については以下のブログ記事に書きましたが、紙幅の都合上、そこで語りきれなかったことがあります。なので、自分と海外の人たちとのこれまでの関わりを思い返しながら、海外の人と働く上で気に留めておきたいなと思っていることを中心に少し書いてみたいと思います。

なお、上の記事を執筆したのが6月くらいで、雨季特有の雷雨が降る中、書いたのを覚えているのですが、今はもう12月。気温は相変わらず30度超えでエアコンが手放せませんが、雨が降る頻度がだいぶ減ってきました。乾季に入ったということなのかなと思いますが、少しだけ季節の変化を感じています。

違いをそのまま受け入れる

海外の人と接して初めに感じるのは「違い」だと思います。初めは「この人は私の知らない言葉を操る理解できない人」という風に思うかも知れません。姿形や言葉が異なることが大きな要因だと思いますが、異なる文化、異なる社会通念など、行動や思考の基礎になっている部分も異なります。

一緒に働く中で、リリース前で忙しいのに定時で帰っちゃうとか、決めたルールを守らないとかが出てくると、ますます「わかり合えない人」という感覚を持ち始めます。そして「だから xxx はダメなんだ」「xxx意識が低い」という批判がはじまってしまう。これはもったいないなと思います。

違う国の人なので、違っていてあたりまえ。まずは良し悪しを度外視して違いを理解することが重要かなと思います。良し悪しを度外視するのは、相手の行動を快く思っていない場合はそれが顔や言動に出てしまうからです。同僚として仕事するなら相手をrespectすることは必須です。それは上司・部下関係ない。むしろ、上司であればなおさら部下を respectすることが必要になります。でないと、相手は話を聞いてくれなくなるので。

なお「そのまま受け入れる」というのは無条件に容認するということではないです。まずはそういうものだと思って受け取る。そして、本人・会社にとって不利益があるのであればそれを丁寧に説明して、本人の理解を助け、合理的な判断をするための情報を提供するということかなと思います。

国ごとの傾向を語ること

海外で働いた経験の長い人の中には「xxの国の人はこういう所を気をつけた方が良いよ」とか言う方がいます。それはご自身の経験に基づいているもので貴重な知見だと思うのですが、私はあまりそういうステレオタイプ的な見方をしないようにしたいと思っています。

というのも、同じ国の人でも驚くほどみな違うので。積極的な人もいれば消極的な人もいる。勤勉な人もいればいい加減な人もいる。隙あらばサボろうとする人もいるでしょう。

これはよく考えてみれば当たり前で、同じ日本人でも優秀な人もいればそうじゃない人もいる。性格も皆違うし、仕事に取り組む姿勢も人それぞれ。それが国の枠がハメられただけで「この国の人は…」と言うのはちょっと違和感あります。

もちろん、上で書いているように文化的なバックグラウンドが違うので傾向の違いはあると思います。ただ、それが全員に当てはまるような見方はしたくない。特に、一部の人だけ見てその人たちがこんな感じだから、他の人もみんなそうだろう、というのはちょっと乱暴ですよね。

例えば、アメリカ人が、ベイエリアにいる日本人を見て「日本人とはこう言う人たちです」って言ってたらやはり変に思いますよね。日本からベイエリアに行っている時点で相当特殊な日本人です(笑)。なので、自分の知っている外国人の人たちはある特定の条件で絞られた人たちだと思った方が良いと思っています。

実はそんなに違わない

上で、たとえ一つの国だったとしてもその中に色々なタイプの人がいる話をしました。それを一つの軸を例にイメージ図にしてみるとこんな感じになります。

国ごとの傾向の違いはあれども、それよりも国の中でのバリエーションの方が大きい。逆に言うと、国が違っても同じタイプの人がそこそこいます。海外の人と仕事しながら「この人は、日本で働いていた時のxxxさんと似たタイプだな」とか思ったりすることがあります。

なので、どこの国の人かにかかわらず「この人はxxの国の人だから」ではなく「この人はこういうタイプだから」と思いながら接するのが良いんじゃないかなと思っています。そしてそれはもはや日本人に対する接し方と変わらない。もし行動に課題があるなら、その理由を文化や常識の違いに求めるのではなく、それぞれ個人の課題として、解決すれば良い。その際にRespectを忘れなければ何かしら答えは出せるのだと思います。

言葉の壁の崩し方

とは言え、言葉が違えば意思疎通は難しくなります。言語の習得に関して色々と持論を唱える人はたくさんいますが、何が正解なのか、私には正直わかっていません。私自身、随分と遠回りしてきたなとも思うのですが、ほぼ確実に言えるのは言語の習得には時間がかかるということ。そして、限られた時間の中で集中的にやりたいならリスニングの力をつけること、かなと思っています。

つまりは相手が言っていることを理解するということですが、自分が話す時も理解してくれない人には話さなくなりますよね。なので、まずは「聞くこと」、そして言われたことを理解しているというフィードバックを返すこと、それだけで海外の人との関係が変わってくるかなと思います。

そして、これは海外の人に限らないですが、話しかけられやすい雰囲気を出すこと、話しかけられたら手を止めてそちらを向くことも大切かなと思います。「今忙しいから話しかけないで」オーラを出していたり、目をPCの画面から離さずに「聞いてるよ」というのはやめにしたい。自分がやられたら嫌だと思うことなのに、気をつけないとしてしまっていたりするかなと思っています。

話をリスニングに戻すと、今はYouTubeとかPodCastとか、特に英語に関してはコンテンツが充実しているので、興味がある分野の物を選んでドンドン聴くのが良いかなと思ってます。YouTubeは字幕も出たりもするので、ホント良い時代になったものです。

グローバル化の意義

前のブログ記事では、会社として開発組織をグローバル化することの意義を書きました。グローバルで活躍できる優秀なエンジニアをビジネスの現場に近いところで確保する。それはそれで大事なことですが、グローバル化のもっと本質的な利点は「異質な物を受け入れて取り込んでいく」ということだと思っています。

会社が生まれてすぐの頃は「効率」と「時間」が最優先になります。クイックにプロダクト開発してPMFを確立しないと次の資金調達ができずに終わってしまう。それを避けるためには、できるだけ同じ考え方をした人を集め、余計な議論を避けて会社のリーダーであるCEOが指し示す方向に最短で突き進む。それがスタートアップの行動規範だと思います。

そんなスタートアップも、うまくいけば行くほど、人数が増え、事業の複雑性も増加していきます。CEOがボトルネックにならないためには、徐々にそれぞれが自分で考え、自分で判断して行動することが求められるようになります。

そんな時に、CEOと同じ考えでまったく同じように動いてくれる「ミニCEO」が各事業ユニットにいると良さそうですが、そんな人ばかりを集めてくるのは難しい。そしてなによりも、同じ考えの均質な人ばかりでは脆い組織になってしまう。うまくいっている場合は良いですが、そうでなかった場合には一気に倒れてしまいます。

それよりも、多少違った考え方を持った人が集まることで柔軟で強い組織を作れるのだと思っています。最近、レジリエンス (Resilience)という言葉を聞くことが増えましたが、日本語では「復元力」とか「弾性」と呼ばれる、このレジリエンスを組織が持つ必要があると思っています。そのためにも多少非効率だったとしても異なる考え方を持つ人たちが、互いを respectしながら協調して動くことが必要です。

そして、グローバル化はそれを促進するための一つの手段と考えても良いのではないかと思っています。インターネットの発達でだいぶ近くなりましたが、それでも組織が地理的にもタイムゾーン的にも離れてしまうのはさまざまなデメリットがあります。一方で、それぞれが独立して動かざるを得ない状況は、自律してして動ける人を育てるという意味では逆にメリットでもあると思っています。

今後に向けて

私は縁あって海外で働く機会を得て、それによって大きく視界が開けたと思っています。本来は知り合うはずもなかった人と知り合って、話をして、一緒に仕事をしたり、飯を食ったり。大変なこともありますが、それでも日本にいたら決して得られなかったことを得られているなと思っています。

COVIDの流行で少し停滞しましたが、海外で働いたり、海外の人が日本にきて一緒に働いたりという機会はこれからも増えていくのだと思います。言葉の問題などあると思いますが、もしそういう機会があるんだったらぜひ積極的に飛び込んで欲しいなと思います。絶対に後悔しないと思います。

そして、私自身、グローバルな環境で働く人の何かしらの役にたつ事をしたいなと思っていて、この後、どんなことができるかなと日々考えていたりします。



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