真夜中ドラマ「ごほうびごはん」第1話レビュー
【あらすじ】
長野から上京した、文房具メーカーに勤める社会人一年生・池田咲子(いけださきこ、桜井日奈子)。慣れない仕事にお疲れ気味の咲子の楽しみは、自分を思い切りねぎらう「ごほうびごはん」!仕事を1週間がんばった自分へのごほうびとして、自宅で様々な工夫を凝らしてひと手間かけたお料理や、気になるお店へ行っておいしいグルメをいただくなど、食べることを全力で楽しむ咲子。
1人でじっくり味わったり、誰かと一緒に食べたり…にっこりな日も、しょんぼりな日も、おいしいごはんでしあわせ!等身大ごちそうダイアリーをお届けします!(公式サイトより)
2021年10月2日~、BSテレ東で毎週土曜日深夜0時より放送。
「ごめんなさーい、今日の12位はおうし座のあなた」
いつからだろう、TVから流れる言葉に落胆しなくなったのは。
だって私は知っている。1位だろうが素晴らしい出来事など起きないし、逆に12位になったところで日々は同じように過ぎて行くのだと。
しかし池田咲子(桜井日奈子)は違う。星占い1位を素直に喜び小さくガッツポーズする社会人1年生だ。
ラッキーカラーが黄色と聞いて「バナナ、レモン、卵焼き、カレー…」と食べ物ばかり連想する彼女は食べることをこよなく愛し、「ごほうびごはん」と題して週に一度の贅沢な食事を一番の楽しみにしている。
食にかける情熱は計り知れないものがあり、ランチが売り切れで食べ損ねた海老カレーへの執念を捨てきれず、半額で伊勢海老を入手し家で自作を試みるほど。
出来上がった伊勢海老カレーを実食する彼女の脳内は饒舌だ。
「カレーという大海原に放たれた伊勢海老様、あなたをまるごと一匹いただけるなんて贅沢の極み」
「何て濃厚な旨味、カレーのスパイスに負けじと伊勢海老のエキスがこれでもか~というほど押し寄せてくる…!」
「ぷりっぷり、ぷりっぷりでじゅわ~、ぷりっぷりでじゅわ~だよ!」
「カレーは飲み物だと言っていた人がいたけれど、いまならわかります!ドリンキングカリー!」
「もはやこれは戦い、海老と、カレーと、私のグルメデスマッチだ~!」
君は〇麻呂か?はたまたミス〇ー味っ子か?
とツッコミつつ、推しを持つ私には、咲子の気持ちがよくわかる。好きな物の好きなところを言語化するのは自分がなぜそれを良いと思うのかを確認し、好きと思う気持ちを肯定し、さらに増幅していくための作業だからだ。
そして同時に思う。その気持ちの高まりを、誰かと共有したくはならないのかと。
妹・桃子(中尾萌那)から電話で「てか週末なのにお姉また一人ごはん?誰かいい人とかいないの?」と聞かれ、「みんないい人だよ」と答える咲子。
「そういえば東京来てから誰かとごはん食べたことなかったな」
自分で自分を満たす方法を知っている彼女は、きっと誰かとごはんを食べる必要性を感じていなかったのではないだろうか。
そんな咲子に訪れる、ちょっとした転機。
本田先輩(きづき)が言うところの「えっぐい仕事」を終え、「こってり高カロリー、夜中に食べられるのが憚られるようなごはん」を求めて、彼女が残業帰りに立ち寄ったのは本格的なハンバーガーショップ。
店で一番こってりしたメニューというアルティメットバーガーを頬張り、恍惚とした表情を浮かべる咲子に、偶然同じ店に入った同期・小湊かえで(岡崎紗絵)が声をかける。
「あの、声かけるのもどうかなって思ったんだけど、池田さんあっちの世界に行きそうな勢いだったから、つい」
そう、かえではあっちの世界に行きそうな咲子を呼び戻したのだ。一人の世界に閉じた咲子を連れ出すように。
仕事ができて近寄り難い雰囲気のかえではハンバーガーを食べながら相好を崩す。同じ空間で美味しい物を一緒に食べる体験をすることで、咲子のかえでに対する印象には変化が生まれる。
「なんだか小湊さん、会社にいる時と雰囲気違うね」
そうして2人は新卒ならではのあるあるガールズトークに花を咲かせ、ぐっと距離を縮めるのだ。
食べることは本能的でプリミティブな行為で、その人の素がおのずと見えてくる。これは食を通して咲子が周りの人々と関係性を深めながら、食の幅をも広げていく、日常の冒険の物語なのだと思う。
さて、今回は商品企画部のエース・磯貝誠(古川雄輝)との絡みは少なかったものの、OPでB.O.L.T の軽快なナンバー「More Fantastic」に合わせてキュートなダンスを披露する2人の関係性がこれからどう展開して行くのかにも注目したい。
「サタデー・ナイト・フィーバー」のポーズを取り入れたダンスは、土曜深夜のドラマに相応しく気持ちを盛り上げてくれる。
毎日の食事を流さず、食べる喜びを追求し丁寧に味わうことは日々を慈しむ最善の手段だ。
だから私も、明日から星占いに一喜一憂してみようと思う。週の終わり、最高の「ごほうびごはん」を味わうために。
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