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真夜中ドラマ「ごほうびごはん」第2話レビュー

あなたは一人で入った店の先客に知り合いを見つけたらどうしますか?
A.声をかける
B.そっとその場を立ち去る

私はB。圧倒的にB。高橋名人ばりにBボタンを16連打。
しかし第1話のかえで(岡崎紗絵)はちゃんと咲子に(桜井日奈子)声をかけている。ハンバーガーに夢中で周りが見えていない咲子に気付かれず店を出ることなど容易いにも関わらず、だ。

さて、第2話で逆の立場に置かれた咲子はどうするか。
業務時間中にかえでとランチの相談をして青柳主任(未来)に叱られた挙句、結局コンビニランチで済ます羽目になって凹み気味の咲子。
帰り道、美味しいごはんで元気を出そうと香ばしい匂いに誘われて焼き鳥屋を覗き込むと、カウンターには青柳の姿が…
クイクイと手招きをする青柳に、一度は気付かぬ振りを決め込もうとする咲子は紛れもなくBボタンの人。しかし逃げきれず店内へ。

「入りたそうだから呼んだんだけど、迷惑だった?」
「いえ、そんなことないです」
「でも一瞬、帰ろうとしたよね」
「してないです、そんなわけないじゃないですかぁ~」

切れ味鋭い青柳との突然のサシ飲みに咲子はビビりまくり。
最初の一杯から青柳に話を合わせるために日本酒にするか悩むも、結局自分が飲みたいハイボールをオーダーするあたり、緊張と食へのストレートな欲求が入り乱れて面白い。
青柳との会話もガチガチで要らぬことを言ってしまう咲子だが、ハイボールを口にすると「うう~、美味しいぃ!やっぱり仕事の後の一杯は美味しいです!」と幸せモードに。
「そしていい匂い…あぁ~焼いてるところ見られるのっていいですね~!この炭火の香り、これだけでお酒が進んじゃいます」
咲子の突然の豹変ぶりに、青柳は驚きを隠せない様子。

カウンターに差し出された焼きとり盛り合わせに頬を緩める咲子だが、ふと我に返り、2人で5本をどう分ければいいのかに戸惑う。
すると後ろの席のサラリーマン2人が串を外し出しそたではないか。あれだ!と倣おうとする咲子を、青柳は「あんな邪道な食べ方、私は断じて許しません」と慌てて制止する。
「食べたい串をそのまま食べなさい。それが焼きとりの流儀よ」と熱く語る青柳に「はい主任、私、食べたい串を好きなように食べます!」と応え、ジャケットを脱ぐ咲子。それはそれまで上司への遠慮と食べる喜びの間をウロウロと行き来していた彼女が、覚悟を決めて食との戦闘モードに入る合図だ。

焼きとりを堪能する咲子に大笑いする青柳。「主任も笑うことってあるんですね」と意外そうな咲子だが、それは青柳にとっての咲子だって同じ。会社ではいつも堅くて笑わない咲子に、青柳も入り込む隙を見つけられなかったのだろう。
咲子は焼きとりに向き合うためにジャケットを脱ぎ、それと一緒に心の鎧を脱ぎ捨てた。その原動力になる「食」は、やはり彼女にとっての大きなファクターなのだ。

それにしても咲子はしなやかな心を持った子なのだなと思う。
サシ飲みの翌日、惰眠を貪った後「昼から餃子とビールなんて最高だよぉ~」という青柳の言葉を思い出して餃子を作り始める。かえでと愚痴を言い合っているところに、謎に先輩風を吹かせてくる本田(きづき)の言葉にも「そうなんですか~!」と素直に感動する。
その姿はグイグイと水を吸い上げる植物のようで、どんな言葉をかけたらどんな花が咲くのかを見守りたくなるような魅力がある。
しかしこれまで咲子の世界を広げて来たのはかえでであり、青柳であり。
まだ自分の力で前に進めてはいない。

第2話のラスト、青柳が同期でありライバルだ、と飲みの場で語った相手が磯貝(古川雄輝)だと明かされる。
自己紹介に好きな食べ物を入れ込んでくる咲子。「やっぱ変な奴」と言う磯貝に「ちょっとね」と返す青柳の言葉には既に、愛すべき変な奴というニュアンスが感じられる。
第1話、第2話と繰り返された磯貝の「変な奴」はこれからどう変化していくのだろうか。これまでのかえでや青柳のように、磯貝が咲子の領域に踏み込んで行くのか、それとも。

ゲームなら、Aボタンは決定、Bボタンはキャンセル。
連打まで行かずとも、勇気を出してAボタンを。進め、咲子!

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