「嫌われ監察官 音無一六」第4話レビュー:嫌われる勇気
「自分は音無監察官とは違う形の正義を見つけてみせます」と言う厘太郎の笑顔に、胸がギュッと締め付けられるような思いがした第4話。
それはこれまで一六が厘太郎に見せて来た、信念による行動の積み重ねを否定するものだったから。
ああ、彼はまだ、自分の使命も居場所も、見つけられてはいないんだ。
厘太郎は自分の意思ではなく、あくまで処分を受けての人事で警務部長付きになっているに過ぎない。一六の有能さには一目置いているし、信頼される警察組織を作りたいとも口にするが、それがなぜ必要なのか、どれほど重要なのかということに、自分の答えを持ってはいない。
ただ与えられた役割を果たすために一六の指示の下、捜査に取り組んでいる、それだけ。
今回は半グレ集団の内輪揉めで起きた殺人事件から警察組織内部の不正を暴く…というストーリーで、シリーズ時に一六の相棒を務めた三条が登場。一六と通じていると刑事仲間の間で噂され周囲に馴染めないでいる三条だが、彼女に迷いはない。
かつて世話になり、彼のおかげで刑事になれたと慕う藤垣に手錠を掛ける時でさえ、涙こそ流してもそれ以外の選択肢はなかった。
個人的な温情で彼の罪に目を瞑ってしまえば、事件の解決が遠のき、犯罪者は釈放され、罪のない一般市民が恐怖に怯えて暮らさねばならなくなる。
三条には一六から学んだ信念があって、犠牲を払ってでも守らなければないルールを貫き通すことができるのだ。
少しの綻びがゆくゆく取返しのつかない事態を招いてしまうと、彼女は知っているから。
同僚に嫌味を言われても凛として前に進む三条の後ろ姿は潔く、美しかった。
第1話で、周囲に煙たがられることがないよう調子のよいキャラクターを演じている、ペルソナを被っていると一六から指摘された厘太郎。そのペルソナは完全には剥がれていなくて、彼はいまだに嫌われることを恐れている。
父親である四堂副総監に「いずれ捜査畑に戻れるようにしてやる」と声をかけられ否定はするものの、おそらく刑事として本流に戻りたい気持ちも捨て切れてはいない。
何も手放せない厘太郎は、何も手に入れられない。一六とは違う形の正義を見つけると彼は言うけれど、それは自分が与えられたミッションを誰も傷付けずに遂行しようとする、今置かれた立場に無理矢理自分を当てはめようとする、逃げのような気がする。
だからその笑顔は一見曇りなく見えても、なんだか脆く感じるのだ。
三条は周囲に染まらず自分の信じる道を行く姿勢を一六から学んだと言う。しかしそれは三条が一六の姿を見ることによって、自分自身で辿り着いたものだ。
厘太郎が真の一六チルドレンになる日は、やがて来るのだろうか。
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