見出し画像

ドラマ「ねこ物件」第2話レビュー:ハムエッグ makes イノベーション

第2話あらすじ:二星優斗(古川雄輝)は30歳。幼い頃に両親を事故で亡くし、祖父・幸三(竜雷太)と2匹の猫、クロとチャーで暮らしていたが、幸三が突然他界してしまう。最愛の祖父を失い、残された猫と一軒家を守る為に四つ葉不動産の広瀬有美(長井短)の助言に従い、家を改築して猫と暮らすシェアハウスをオープンすることに。しかし、猫が気に入らない人は入居させない猫審査と男性限定にしたことで、なかなか入居者が決まらないなか、現れたのが弁護士志望の立花修(細田佳央太)、25歳だった。
これまでに優斗が入居希望者を落とした訳は「シェアハウスと言えど同じ家に住む人は家族であり、家族になる人に妥協は出来ないことだった。修との面接は和やかに見えたが、猫たちが修に近づくも素っ気なく、離れてしまう。面接に同席していた四つ葉不動産の有美は、また不合格かと落胆するが、優斗の出した答えは意外にも合格だった。晴れて一人入居者が決まったが、早くも優斗と修の間に不協和音が走る。果たして、優斗と修は家族になれるのか!?(公式サイトより)

突然ですが、あなたは目玉焼きに何をかけて食べる派ですか?
私は塩と胡椒。だからこの第2話、修が醤油をかけた目玉焼きをトーストに乗せて食べるシーンは、なかなか衝撃的だった。醤油にはご飯でしょう?トーストって!
でも誰かと一緒に暮らすというのは、そういうちょっとした違和感を受け入れ、共存して行くことなんじゃないだろうか。

優斗は自分の規定の中からはみ出そうとしない人だ。猫も人も、家族は同じものを食べるといった二星家のルール通りに暮らす優斗の生活は、乱れることがない。
同じ家に住めば家族、という優斗の持論はいささか強引ではあるのだが、今まで家族としか一緒に暮らしたことがない彼にとってはそういうもの。基準をクリアした人をある一定の形にあてはまれば家族になる、少なくとも彼はそう思っている。
しかし、他人と一緒に暮らすというのはそんなに簡単ではなくて…。

晴れて入居者第一号となったのは司法浪人の修。
優斗は入居に先立つ面接でも積極的にコミュニケーションを取ろうとはせず、相変わらず有美に筆談で質問を促す。
でも修の猫あるあるに爆笑したり、チャーが修の足元を走り抜けて猫審査に合格したと認めれば嬉しそうに拍手をしたり。優斗は猫に関することなら、人見知りを忘れたかのように素直に反応する。猫は、人付き合いが苦手な優斗の素顔を私たちに見せてくれる存在だ。
そこにはいつもどこか自分に閉じこもっているような優斗の頑なさはなく、無邪気さや温かさが溢れていて、優斗は本当は人に囲まれ、愛されるべき人なんじゃないかなと思わされたりする。

でも、猫に引き出されるのは必ずしもいい面だけではない。
チャーがやたら修に懐いている様子を感じ取り、嫉妬が止まらなくなってしまう優斗。
修の不在時、いまいち優斗につれないチャーが、彼が帰るなり駆け寄って修の部屋に連れ帰られてしまえば、もう気が気じゃない。

早々に我慢できなくなって有美の不動産屋に駆け込む優斗だが、有美は「人に気を使う覚悟が足りない」と一蹴。
「早々にリタイアしてどうするんですか」という有美の言葉に、優斗は幼い頃に聞いた幸三の言葉を思い出す。
ニャーと泣くのは家猫だけで、本来は繁殖期や喧嘩の時だったが、家で過ごすうちに変わったのだと。猫は素直でいつもやるべきことが分かっている、と幸三は言う。
ならば今、自分のやるべきことは何だろう。考える優斗。

言われてみれば、チャーばかり可愛がる、パソコンの音が気になるなど修に小さな不満を積み重ねていた優斗だけれど、自分にしたって修の部屋は断りなく開けてしまうし、修が勉強中だろうが隣でクロの撮影会に勤しむし。配慮も足りなければ、自分が不快に思うことを相手に伝えることもしていない。
そこで優斗は修と膝を突き合わせてクロも構って欲しいと頼み、そして朝食に何が食べたいかを尋ねる。
それは「朝食は一緒に食べる」という優斗が一番大切にしていることを守りながらも、相手に配慮しようとする最大限の気持ちの表れだ。

翌朝の朝食、修のために作られたハムエッグ。冒頭に挙げた、修がそれに醤油をかけ、トーストに乗せて美味しそうに頬張るシーンで私は泣いた。
だってそれは、優斗が自分の中に築いた高い壁が壊れた瞬間だったから。優斗が長いこと知らなかった種類の幸せが見えた気がしたから。

第1話から、優斗が立ち止まったり、躓いたりする時に背中を押してくれるのは幸三の言葉だ。
おそらく幸三の生前、優斗にとって猫は慈しむだけ対象だったのではないか。猫から学べという幸三の言葉も、本当はあまりピンと来てはいない。けれど幸三がこの世を去った今、優斗は幼い頃を回想し、幸三の言葉に耳を傾けるという作業をしている。
チャーとクロを見つめながら、優斗は猫たちを通して幸三と対話しているのだ。

朝食後、優斗は修にLINEを交換しようと呼びかける。第1話で有美にしてもらったことを今度は修にしてみる優斗は、もう内側にだけ閉じてはいなくて、自分以外の誰かに橋を架けて行ける人へと変容する過程にある。
優斗が修とLINEで友だちになったことを有美は「イノベーション」と評した。そう、変化はイノベーションを起こすものなのだ。
猫のように素直に変化を楽しめば、次のイノベーションはきっと、生まれる。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?