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真夜中ドラマ「ごほうびごはん」第11話レビュー

咲子(桜井日奈子)が長い助走をようやく終えて、目の前のバーに向かって踏み切った。そんな回だった、第11話は。

仕事終わり、かえで(岡崎紗絵)に誘われて韓国料理屋にやって来た咲子は激辛料理に戦々恐々。
トンデジョン、チャプチェ、ボッサムと辛くない料理に懐柔(?)されるも、赤くグツグツ煮えるスンドゥブチゲを前にまさかの「怖い」発言。どうやら以前辛い物を食べて酷い目に遭ったことがあるようだ。一体何を食べたのよ。
咲子が胃袋の限界を突破するところは何度も目にして来たが、思えばそれはあくまで量的突破であって、質的突破ではなかった。
台湾料理のような、美味しいに違いない未知の味には手を伸ばすことができても、失敗しそうなものには及び腰なのだ、咲子は。

そういう姿勢は何も料理に限ったことではなく、仕事でも同じ。
部署に関係なく挑戦できるという新商品アイデア社内コンペのポスターに興味津々なのに、毎年結局商品企画部のアイデアが採用されていると聞いて「私なんかがムリムリムリムリムリ」と気持ちを抑え込もうとする。
この「私なんかが」という言葉に、咲子の自己評価がよく表れている。例えば磯貝が言った文房具愛の強さのように、咲子は取り柄を自覚していないし、自分を過小評価して勝手に限界を決めてしまっている。だって安全な場所から出て痛い思いをするのは「怖い」んだもの。

だからあまりに美味しそうなかえでの様子に我慢できなくなった咲子がスンドゥブチゲを口に運ぶ姿を見て、うっかりちょっと泣きそうになってしまった。
社内コンペとスンドゥブチゲを一緒にするなんて、かえでが言う通りアレなんだけど、レベル感の違いこそあれ、それは確かに咲子が恐怖に打ち勝って新しい世界の扉を開け、その先にある喜びに触れた瞬間だったから。

そして社内コンペへの挑戦を決めた咲子。最初否定するような発言をしてしまったシステム物流部の面々が「せっかくの咲子のやる気を削いでしまったのではないか」と反省して咲子を応援してくれるのが優しく、不用意な発言から生じたちょっとしたすれ違いが正面から解かれていく関係性は見ていて心が温かくなる。
配属後すぐ、居場所を見つけられず泣いていた咲子は、もうここにはいないのだ。

それにしても磯貝(古川雄輝)の咲子に対する感情は、私(およびおそらく多くの古川雄輝ファン)が期待するベクトルとはどうも違っているようで…。
咲子がコンペに参加するのか動向を気にしたり、アイデアを聞かれて真剣に腹を立てたり。磯貝にとって、咲子は教えたり育てたりする対象ではなく、対等なライバルであるらしい。今のところ2人の関係が恋に近付く気配は感じられないけれど、それはそれで特別な存在、ということなのかもしれない(最後まで希望は捨てない)。
とりあえず今回も怒った勢いで引っ込みがつかずエレベーターを無視する羽目になる…という伝統の技が見られたので、私は満足です。よっ、エレベーター芸人!
しかし磯貝くん、譲れないのは社長と行くうな重なのかい…?企画を通すことじゃないのかい…?

さて、すっかり辛い物にハマった咲子は、企画中の腹ごしらえにキムチチャーハンを。そこで定番チャーハンにちょっとの工夫をすることで新しい美味しさに出会えたことに気付く。
リスクを取ってチャレンジしなければ得られないものがあることも、新しい文房具のアイデアも。ごはんはいつだって、咲子の脳と胃袋に直接訴えかけて教えてくれる。大袈裟だけど、きっとそういうことなんだと思う。

来週、最終回のキーワードは「酔った勢い」ということでよろしいでしょうか。祝杯を上げるためのアルコールを用意してその日を待つ(アテが外れたらヤケ酒に変更)。
いずれにせよ、酔った勢いでレビューを書かないように気を付けます!

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