ドラマ「ねこ物件」第5話レビュー:私が知らない、あなたの物語
優斗と3人の入居者同士も馴染み、穏やかな日常で始まる第5話。
けれども優斗や有美の言動、さらに新たな入居者・ファンの境遇は私たちの心に少しの引っ掛かりを作る。
チャーとクロの写真を撮り溜めていた優斗。その腕前に入居者たちは感嘆する。撮影のコツを話す優斗の口から飛び出すのは「被写界深度」「絞り」などの専門用語。あれ?なんでそんなに詳しいんだっけ。
幸三の死後、二星ハイツに入居者を迎え入れて変化していく優斗を見守り、回想シーンを通して子供時代も垣間見し。しかし実は優斗が生きて来た30年の殆どは明かされていないのだった。
だから優斗の撮影スキルの高さだったり、そういえば第1話でも上手に入居者募集のチラシを作っていたこととか…それがどういう経緯によるものなのか。台湾からの留学生・ファンの入居が決まり、残すはあと一室となった時「ここは貸しません」と優斗が有美に言った理由もわからなければ、幸三から届いた手紙の内容だって謎のまま。
私たちは優斗のことを理解しているような気がしていたけれど、彼はまだ見えていない側面を持っている。
それは有美にしたって同じで、猫が苦手な理由を優斗が尋ねても、答えをはぐらかされるばかり。
優斗と有美の間にもお互いに語らないこと(おそらく大切な、核心の)があって、それが何かの壁になっているような気がする。
子猫を連れて入居して来たファンも何やら事情を抱えている様子。父親が展開するビジネスを引き継ぐことを拒否したファンは、父からの刺客に追われているという。
今回、ファンが二星ハイツに辿り着いたのは、修が始めたインスタのアカウントがきっかけだった。LINEすらしていなかった優斗だったが、入居者それぞれと一対一で関係を結ぶところから、さらに世界が広がったわけだ。
しかしファンの刺客はインスタを見て彼の居場所を突き止めたようで、二星ハイツの前には外国語を話す怪しい3つの人影が…。
優斗も有美もそれぞれ何かを内面に秘めている。そこに立ち入ることでお互いをより理解できるかもしれないが、もしかしたらこれまでの平穏な間柄が傷付いてしまうかもしれない。
インスタでつながった先には未知のものが多くある。ファンと二星ハイツのように日常生活の中では知り合えなかった人同士が出会うきっかけにもなれば、そこから刺客に足がつく危険性も孕んでいる。
関係を深めることにも、広げることにも、可能性とリスクが同居しているのだ。
自分が変化を楽しみ始めたことを自覚した優斗だが、人とのつながり方が変わることで起こるであろう出来事を受け入れ、楽しむことはできるだろうか。それが問われるのは優斗だけでなく、ずっと2匹で暮らして来たところに子猫が加わったチャーとクロも、なのかもしれない。
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