働かざる者たち1話:働かない2割のアリの悲哀

「働きアリの法則というものがある。アリのコロニーにおいて、よく働くアリと、普通に働くアリと、働かないアリの割合は2:6:2に分かれる。この一見何の存在意義もない働かないアリだが、働きアリが疲れ果てたピンチの時には働きだし、組織の長期的存続を確保する要になるという」

『働かざる者たち』の主人公は老舗新聞社・毎産新聞で普通に働くアリ・橋田一(濱田岳)。橋田は漫画の執筆を副業にしており、本業はそこそこ。勉強会中にも漫画の構想を練っていて注意される有様だ(しかもネタは「オッパイダウジング」。嫌いじゃないけど…好きだけど!)。
普通に働くアリとしては崖っぷちのように見える橋田だが、そんな彼が働かないアリとして見下すのが定時退社&合コン三昧の先輩社員・八木沼豊(津田寛治)。
八木沼は社内で「伝説の94年組」と呼ばれる出世頭の同期たちに置き去りにされた存在だ。働かなさ過ぎて、むしろ凄みさえ感じさせるほど。

しかし八木沼はなぜ働かない2割になったのか。
選んでそうなったのか。それとも、意図せずそうなってしまったのか。

働かない2割が生まれるのは、本人のやる気や能力というより社会構造の問題なのではないか、と感じさせるのが人事部・川江菜々(池田エライザ)のセリフだ。
「だって、あたし高卒ですよ?みなさんよりお給料も低いんですよ?そういう難しい作業はお給料の高い大卒のみなさんのお仕事なんじゃないですか?」

働かない2割は、働きアリが疲れ果てたピンチの時には働きだす。働かないアリも、働くことはできる。
でも、自分たち以外の8割で世界は十分に回っていて、自分たちの出番がないことに彼らは気付いている。
やる気がないのではなく、やる気を出すべき場所がないのだ。

八木沼を見て自分は働かないアリにはなるまい、と思っている橋田の未来は、実は八木沼に近い。
エース新聞記者・新田啓太(古川雄輝)は、橋田たち同期同士の飲んでいる最中でも、呼び出されれば「分かりました。すぐに行きます」と取材に走る。
橋田たちはそんな新田を見て「すげぇなぁ」と感嘆するのだが、新田の足取りは軽やか。そこに気負いは見えず、むしろ仕事を楽しんでいるようだ。
翌日、新田のスクープが「ヤホー」(漫才か!)のトップに取り上げられているのを見て何かを感じる橋田。同期との間に確実に存在する差。
「でも、僕には漫画がある。会社だけじゃない」
そう思った時点で、自分が会社に必要とされていないと認め始めてしまっていることに、橋田はまだ気付かない。

漫画に賭けようと思う橋田だが、残業した帰り、合コンで泥酔した八木沼にバッタリ会ってしまう。
でもその顔は「ちっとも幸せそうじゃない」。
内心では出世している同期を常に意識しながら、定時上がりで合コン三昧の、楽しんでいる自分を過剰に演出している八木沼。
それは漫画を逃げ道にしてなんとなく仕事をこなしている自分と重なるんじゃないのか。
「俺の心の中にも八木沼さんはいる」

このままではいけない。仕事を頑張りつつ、漫画も一応描こうと決意する橋田。
でも、何のために働くんだっけ?働かない2割にならないためなんだっけ?
橋田は肝心なことを置き去りにしているような気がする。
続く2話でそのヒントをくれるのは新田か、それとも働かざる者たちか。

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