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「嫌われ監察官 音無一六」初回2時間スペシャルレビュー:濁りなき水に棲む決意

初回2時間スペシャルあらすじ:監察官とは“警察の中の警察”という異名を持つ、警察内部のあらゆる不正を取り締まる者たちのこと。警視庁警務部長の千住遼子(田中美佐子)の指示のもと、身内を厳しく監察する音無一六(小日向文世)は、職務を忠実に全うするがゆえ、特に嫌われている監察官だ。現在はまったく見た目が似ていないタクシー運転手の弟・万丈二六(遠藤憲一)と同居している。
ある夜、玩具コレクターの射殺体が見つかり、その捜査本部に一六は「特別監査」として加わったのだが・・・。(公式サイトより)

これまで6回にわたってスペシャルドラマとして放送された「嫌われ監察官 音無一六」が連ドラになって帰って来た。
相変わらず現場で嫌われる(自分は虫が大嫌い)な一六、全然似ていない弟の二六、ちょっとミーハーな三花(堀内敬子)、頼れる千住、そして一六たち仲間が集まる店・みつるの主人である二宮(小野武彦)・・・とお馴染みの顔ぶれに、本作から四堂副総監(尾美としのり)の息子・厘太郎(古川雄輝)が参戦。安定感のあるメンバーだけでなく、キャラが定まらない厘太郎の存在が追加されることによって連ドラ版はスペシャル版とはまた少し趣の異なる展開になりそうだ。

初回2時間スペシャルで扱われたのは、20年前の警察襲撃事件と玩具コレクター殺人事件。2つの事件で使用された拳銃が一致したことをきっかけとして、過去に警察が組織ぐるみで隠ぺいが行われていたことが明るみに出る。
事件自体には決してトリッキーな仕掛けはなく、ひらめきというより丁寧に欠けたパズルのピースを埋めて行くことで解決していく過程を重視して描かれる。
それは事件そのものの謎解きの面白さより、事件の背景にある人間関係や警察組織のあり方にフォーカスしようという連ドラ版としての試みなのではないかと思う。

多少の不正は必要悪という四堂と、一旦悪の道に踏み入ればそこから組織の腐敗が始まると主張する千住の対立は、スペシャル版からの継続したテーマ。
そこに今回新しい要素として加わったのが厘太郎なのだが、この厘太郎というキャラクターがなんだかペラっとしていて読めない。
言葉使いは若者らしく軽いノリ。副総監の息子であることを揶揄する声が聞こえれば、自分から挨拶に行って笑顔で扱いづらさを謝ってしまう。それは図太さなのか、空気の読めなさなのか、それとも。

しかし一六の、先入観を持たずフラットに監察する目線は事件だけでなく人に対しても同じで、厘太郎の内面も見抜いてしまう。
一六から「父親が副総監と言うプレッシャーに耐え、嫌われないようにあえて人のいいキャラクターの仮面(ペルソナ)を被っている」と指摘され、厘太郎は観念したように心を開く。
父と同じ警察を志すもキャリア試験に落ち、ならば現場の刑事の仕事を全うしようとする。しかし周囲は彼を七光りとして見るし、腫れ物扱いもする。副総監にまで上り詰めた父親の優秀さは否が応でも耳に入る。
父への憧れと劣等感。尊敬はしているが、グレーゾーンを許容する父親の警察官としての姿勢に自らの理想との食い違いも感じている…厘太郎はそういう微妙な立ち位置にいるのだ。
一六は、そんな厘太郎がこれまでしてきたであろう努力や、刑事として大切な「市民の盾となる強い覚悟」を持っていることを肯定する。

2つの事件解決を通して、千住や一六、そして事件に関わった箕田(角野造)や佐橋(山本龍二)ら警察官の「市民に信頼される警察を作る」とする志に感化された厘太郎。
捜査の際の不正アクセスで処分の対象となるのだが、千住の計らい(または企み?)で捜査権と逮捕権を持ったまま警務部長付に。これで厘太郎は正式に一六の相棒となったわけだ。

一六は強い味方を手に入れたと言えるが、四堂は四堂で厘太郎を上手く利用する方法を考えているようだし、厘太郎自身も父親には弱そうでもあり。純粋な分、厘太郎には危うさも感じられて…さて、彼の異動はどちらの好機になるとやら。
一六によってペルソナを剝がされた厘太郎の無垢な笑顔が、澄んだ瞳が、濁った水に汚されないことを願う。

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