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ドラマ「ねこ物件」最終話レビュー:長い長い助走を終えて

最終話あらすじ:丈(本田剛文)はボクサーのプロテストに合格してジムの会長から住込みのバイトを紹介してもらい、★★(二星)ハイツを出て行った。さらにファン(松大航也)、毅(上村海成)、修(細田佳央太)の様子もなんだかおかしい。夢を持つ人のためのシェアハウスを立ち上げて、旅立つことは嬉しいはずなのに優斗(古川雄輝)の気分も複雑だ。四つ葉不動産の有美(長井短)の元を訪れた優斗は自分もバイトを始めようかと話し出す。皆が、それぞれの人生を歩みだした時、★★(二星)ハイツはどうなってしまうのか?その時、クロとチャーは何を思うだろうか―。(公式サイトより)

第9話の丈に続き、ファンと毅、そして修までもが夢を叶えるために二星ハイツから旅立って行った最終話。
二星ハイツを始めた時と同じ、優斗一人と猫二匹の状態に戻ったわけだが、あの時と違うのは住んでいた人々を家が、猫たちが、優斗が記憶していること。
優斗が入居者たちが夢を追う姿を羨ましいと思う感情は最初にはなかったもので、それは優斗が入居者たちと過ごした日々の証だ。

それまで人と関わろうとして来なかった優斗は、二星ハイツを営むことで有美や入居者たちと繋がりを持った。
しかしその人間関係は二星ハイツ内で築かれているもの。優斗は有美が紹介する入居者たちを受け入れて行ったが、その姿勢はあくまで受け身だった。
だから「僕も外で働いてみようかなぁ」というのはこれまでにない大きな変化だ。今や優斗は、繋がりを二星ハイツの中から外へ広げようとしている。

そういえば有美が勤める四つ葉不動産のキャッチコピーは「あなたの暮らしにイノベーションを」。有美は文字通り、優斗の暮らしにイノベーションを起こしてくれたわけだ。
そして有美にもイノベーションは起こっていて、あんなに苦手だった猫なのに、まずは見てみる努力をしようとする。まだ触ることはできなくても、優斗の腕に抱かれたクロの可愛さに顔をほころばせる有美。

しかし優斗が釈然としないのは、なぜ有美が自分にバイト先まで紹介してくれるほど親切にしてくれるのかということ。
その理由は優斗が忘れてしまった記憶に隠されているらしいのだが、彼にはまったく心当たりがない様子。
優斗には他にも覚えてないことがあるらしく、幸三は思い出せない時は猫に頼れ、と過去にアドバイスをくれていたのだが…。

それにしても衝撃的だったのは、幸三からの手紙の中身だ。優斗には「雅斗」という名の弟がいて、優斗にはその記憶が残っていないのだと。

「猫は人と人をくっつけるそうです」
猫との距離を少し縮めた有美への優斗の言葉。その意味は有美との失われた記憶を取り戻したいということかもしれないし、弟と再会したいという願いかもしれない。
(個人的には有美に向けた胸キュンキラーワードだと思いたいです、はい。あんな笑顔でそんなこと言うなんて、本当に優斗は天然にあざと過ぎる)
やっぱり猫はこの物語の中心なのだ。

様々な謎を残したままの最終話。けれどここまではきっと、優斗が長い長い助走を終えてようやく外の世界へ一歩を踏み出すまでの物語。
スタートはまた、一人と二匹から。二星ハイツの第二章は、映画版で新しく始まる、優斗の猫をめぐる冒険へと続いて行く。

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