直接請求(条例改廃やリコール)における罰則関係(頭の整理メモ)

注意事項

これは、法知識に関しては専門家でない一般人が、法令を読んで個人的に整理したものです。ゆえに、記載事実の整合性や判断の正しさを保証するものではありません。
詳細は、法令を読むなり、判例を探すなりを自身で行うか、法曹関係職の方に相談しましょう。
なお、以降、特別の記載がなければ「地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)施行日:令和二年四月一日(令和二年法律第五号による改正)」からの引用になります。

直接請求とは?

地方自治法 第五章(七十四条~八十八条)に記載されています。
直接請求とは、条例の改廃や議会の解散、首長の解職などを、住民の請求により実施する事です。具体的には署名を集めて実施するもの。いわゆるリコールなどもこれに該当します。

直接請求における署名の正当性の証明は?

第七十四条の二 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は、条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めなければならない。この場合においては、当該市町村の選挙管理委員会は、その日から二十日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならない。

この文面からするに
・代表者は、署名簿を選挙管理委員会に提出しなければならない。
・代表者は、選挙管理委員会に、選挙人名簿に登録されたものであることの証明を求めなければいけない。
と考えられます。

ただ、少しややこしいのが、法令には記載されていないですが、「仮提出」と「本提出」について。これは自治体毎に取り扱いが違うようですので、個別に行政文書や取扱規則をみないとわかりません(多分。。)。
一部界隈で「署名数がそもそも足りなければ、審査されない」というのは、仮提出において不足していれば、本提出されないorしないor受け取らないために、審査までいかないという事のようです。
(この部分は正直自信ないです。。。)

無効な署名とは?

第七十四条の三 条例の制定又は改廃の請求者の署名で左に掲げるものは、これを無効とする。
一 法令の定める成規の手続によらない署名
二 何人であるかを確認し難い署名
② 前条第四項の規定により詐偽又は強迫に基く旨の異議の申出があつた署名で市町村の選挙管理委員会がその申出を正当であると決定したものは、これを無効とする。

ここでいう、「法令の定める正規の手続きによらない署名」というのは、署名簿に請求内容が明記されている、委任状があるなどの署名簿そのものの要件や、署名の収集に於いて代表者もしくは受任者が集める、回覧はダメなどの収集活動に関する要件が必要になります。
また「何人であるかを確認し難い署名」はそのままの意味です。
②項記載は、詐称:直接請求の署名であることを偽っての収集、や強迫:署名や受任者などの要件はそろっていたとしても、「書かないと村八分にするぞー」等の強迫により作成されたものは無効よ、という事ですね。
このあたりは、判例を検索するといくつか事例がありました。また機会あれば詳しく読んでみたいです。

なお、そこにある「前条第四項の規定」とは、縦覧のことになります(多分)。

署名取り扱いにおける罰則は?

第七十四条の四に記載です。まずは最初から

第七十四条の四 条例の制定又は改廃の請求者の署名に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮こ又は百万円以下の罰金に処する。
一 署名権者又は署名運動者に対し、暴行若しくは威力を加え、又はこれをかどわかしたとき。
二 交通若しくは集会の便を妨げ、又は演説を妨害し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて署名の自由を妨害したとき。
三 署名権者若しくは署名運動者又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して署名権者又は署名運動者を威迫したとき。

まずは暴力行為や妨害に関する罰則事項ですね。
個人的には、二項の「署名の自由を妨害」の事項、具体的判例等あれば知りたいですね。もう少し後で探してみよう。。。
次に行きます

② 条例の制定若しくは改廃の請求者の署名を偽造し若しくはその数を増減した者又は署名簿その他の条例の制定若しくは改廃の請求に必要な関係書類を抑留、毀き壊若しくは奪取した者は、三年以下の懲役若しくは禁錮こ又は五十万円以下の罰金に処する。

署名の偽造、数の増減、抑留、毀き壊若しくは奪取に関するもの。
つまり、偽造行為そのもの、水増し・抜き取り、隠し持ち、破壊、窃盗がだめよと記載あります。

個人的に難解だなーと思ったのが、偽造のところ。
成立要件はどうなんでしょう?
関連法令としては、刑法 第十七章 文書偽造の罪 百五十九条 私文書偽造等が該当するのかなと思いましたので、引用します。

(私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

冒頭に、「行使の目的で」とあります。これは偽造した書類を行使する目的で作成したら罪ですよ、という事かと思います。実際に行使したかどうかは要件に入っていないと思われます(ただし、行使しようとすらしていないものを「行使の目的があった」との証明も難しいような)。
だから、無効となる署名の例として挙げられる「前に書いたのを失念して重複して記載してしまった」「有効な選挙区外であることを見落として、違う署名簿に記載してしまった」は、過失はあれども罪に問われないような気がします。

いやらしいのは、いたずらや混乱などを目的とした場合。偽計業務妨害等のほうに該当するのかもしれませんが、どうなんでしょうね・・・?
詳しい方いれば解説いただきたいです。

少し飛ばして6項

⑥ 条例の制定又は改廃の請求に関し、政令で定める請求書及び請求代表者証明書を付していない署名簿、政令で定める署名を求めるための請求代表者の委任状を付していない署名簿その他法令の定める所定の手続によらない署名簿を用いて署名を求めた者又は政令で定める署名を求めることができる期間外の時期に署名を求めた者は、十万円以下の罰金に処する。

ようは、「正規の署名簿」でないもので集めたらだめよ、という事と、期間外に集めたらだめよ、という事になりますね。
これは、本来目的(直接請求内容)を隠蔽しての署名や、他選挙と同調しての署名などを禁ずるものと思われます。

最後に

法令や用語の名称、イメージをとって、「これは罪だ!」「こっちのほうが罪だ!」などの議論がたまにされます。確かに、社会通念上、法令などがそぐわなく、改めるべきものもあると思います。ただ、法治国家として、その時の感情のみであたかも「法違反だ!」などのような判断はしたくないものですね。

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