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文章問題で大事なのは「問いに答えようとする」ことである。むやみに情報を切り捨てることではない。

まず元ネタになったツイートを全文引用しますね。

9ツイートあるのでちょっと長いんですが、ご覧になっていない方は読んでみてください。

※途中、話題の異なるツイートが2つあったのでそれらは省略しています


数学の文章問題が解けなかった。

なぜなら太郎君、花子さん、歩き、自転車、駅といったフレーズが気になってしまったから。

「数字だけを丸で囲む」というテクニックを教わり、数字以外の情報を捨てたら問題が解けた。

このように、文章問題が解けない子の場合「情報全部を大事にしすぎ」という問題を抱えていることがあるので、適切な指導をする必要がある。


というお話です。


これ、教育の成功パターンとしてお話をされてたんですが、私としてはむしろ失敗パターンだと思ったんですよね。


言いたいことは表題の通りで

・文章問題で大事なのは「問いに答えようとする」ことである
・むやみに情報を切り捨てることではない

の2点。

順を追ってお話していきます。


根本原因はワーキングメモリの不足

まず大前提として、このツイート主が文章問題を解けなかった一番根本の理由はワーキングメモリが小さいことだと思います。

ワーキングメモリっていうのは‥‥、情報を頭の中に一度にゴチャッと入れておける容量のことですね。


例えば

「お腹がすいた」
「お昼まであと1時間」
 →あと1時間我慢しよう

みたいな話が、ワーキングメモリが大きいと

「お腹がすいた」
「お昼まであと1時間」
「朝ごはんを食べるのがいつもより早かった」
「今日は夕食をいつもより早く食べる予定だ」
 →お昼を早めに食べよう

みたいな感じ。

逆にワーキングメモリが小さいと

「お腹が空いた」
 →ご飯食べよう

みたいな感じです。たぶん。


このワーキングメモリが小さいと、文章全体を頭に入れることができないんですね。

ツイート主はこう言っています。

文章の三行目を読む頃には一行目に何を書いてたか憶えていない。


文章全体を頭に入れることができない。だから全体像が見えない。だからどうしたらいいか分からない。だから解けない。

こんな感じです。


じゃあワーキングメモリが大きくなるように鍛えればいいって話なんですが、まあすぐ鍛えて大きくなるものでもないし、一説には「ワーキングメモリは生まれ持ったものなので死ぬまでほぼ変わらない」と言われることさえあるので、あまり現実的な解決手段ではないんですね。

どうすればいいでしょうか。


むやみに情報を切り捨ててはいけない。問いに答えることを考える。

今回ツイート主が取った手段は「数字以外を切り捨てる」という方法でした。

でもこれね、私はダメだと思います。


数字だけ残すでしょ。

それを公式にあてはめて計算するでしょ。

そしたら答えは出ますよ。点数は取れます。

だから子供も親もその場では喜ぶでしょう。


でもこれはやっちゃだめ。やらせちゃだめです。

なぜかというと、勉強というのはこれから先、より良く生きていくための訓練だから。この勉強法だと訓練にならないむしろ害悪だからです。


算数の文章問題っていうのは、

道のり8km ÷ 速さ4km/h = 時間2時間

っていうようなただの計算問題を、(簡単化した)現実の問題にあてはめて考え、応用させることで問題解決能力を鍛えるものなんですよ。

なのに考えなしに数字だけ残したら意味がなくなっちゃうじゃないですか。


実際、こんなふうにほんの少し複雑化しただけで答えにたどり着けなくなってしまいます。

太郎君の家から次郎君の家までの道のりは4kmです。
次郎君の家から花子さんの家までの道のりは8kmです。
太郎君は時速4km/hで歩きます。
花子さんは時速2km/hで歩きます。

問1:太郎君が次郎君の家から花子さんの家まで歩くとどれだけ時間がかかりますか?
問2:花子さんが太郎君の家から次郎君の家まで歩くとどれだけ時間がかかりますか?

何の根拠もなく情報を切り捨てたら、数字以外を消したら、
4km, 8km, 4km/h, 2km/h
の数字しか残らない。そこからどうしたらいいのか分からない。

あるいは、何の根拠もなく情報をつなげることを教えたら、「うーん、分からんけど8kmと2km/h使うか! 4時間や!」ってなってしまう。

全く応用が効きません。


ましてこんな問題↓ 解けやしないですよね。

太郎君の家と次郎君の家は4km離れています。
次郎君の家と花子さんの家は8km離れています。
太郎君は時速4km/hで歩きます。

問:太郎君が自分の家から花子さんの家まで歩くとどれだけ時間がかかりますか?

答えは「最短は1時間だけど、これだけじゃ分からないから、太郎君の家から花子さんの家までの道のりが何kmか教えて」です。


いや、こんないやらしい文章問題はテストで出やしないでしょうけど、現実世界の複雑さはこんなもんじゃないですよね?

「数字以外は切り捨てればいいや」じゃ答えは出ません。


じゃあどうするか。

「太郎君が自分の家から花子さんの家まで歩くとどれだけ時間がかかりますか?」の問いに答えるにはどうすればいいのか考えるんです。

意識すべきは「問題文に書いてある数字」じゃない。「問題文に書いてある問い」です。

問いを頭に入れる。そしてそれを意識しながら読み解くんです。

この「時間」を導くための「道のり」の情報は? 「速さ」の情報は?
あるいは「時間」の情報は?

太郎君の時速は4km/h。だから、「自分の家から花子さんの家まで」の「道のり」が分かれば時間は分かる。
「太郎君と次郎君の家は4km」と「次郎君と花子さんの家は8km」の「距離」は分かる。
「距離」しか分からないのだから、「道のり」が分からないと答えは分からない。
じゃあ全然分からないのか? いや、[花子]-[太郎]-[次郎]の形で一直線に家が並んでた場合[花子]-[太郎]の距離は4km。だから最短の道のりは4kmだ。
最長の道のりは分かるか? 4km+8km=12kmか? いや、12kmはあくまで「最長」の「距離」だ。とてつもなく遠回りしないと着けない位置関係にあったら、どこまでも「道のり」は長くなる。だから最長は分からない。

こんなふうに考えられるはずです。


現実の問題解決はそうじゃないですか。

解決したい、知りたいことがあって、それを解くために情報を入手し考える。
そうして的をしぼれば、ワーキングメモリも最小限ですませることができます。


まとめ

・情報はむやみに切り捨ててはいけない

・情報はむやみにつなげてもいけない

・問いを意識した上で情報を入手し考え問題を解いていくべき


今回は以上です。

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