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良い歯医者を見つけるのは不可能? 悪質な歯医者がのさばる理由

仕事柄、「ヘドが出るほどひどい歯科医療をしているけどわりと人気はある歯医者」を見かける機会が多く、「なんでだろなー」と思っていたのですが、理由が整理できたので書きました。

結論

なぜ粗悪な歯科医療を提供する歯医者がのさばってしまうのか、理由は2つです。

1) 診療のよしあしを正しく示す媒体が存在しないため
2) 患者自らも判断するすべを持たないため

順に説明していきましょう。

1) 診療のよしあしを正しく示す媒体が存在しない

まず、プロやそれに準ずる者が正しく診療のよしあしを判断し、その質を示している媒体というものは存在しません。
TVはもちろん雑誌や書籍、クチコミサイトなど、こういったメディアは、自ら広告料を払った歯科医院が載っているだけです。断言してもいいですが、公正で正しい評価を載せているメディアは一つとして存在しません。

患者自らがよしあしを判断している唯一の公正な媒体はGoogle Mapsですが、2)の通り、たとえ診療を受けた後でも患者自身が診療のよしあしを判断することができないので評価が正しくはありません
たとえ患者自身が正しくよしあしを判断できたところで、クチコミは比較的容易にコントロール可能なので、いずれにしても参考にするのは難しいでしょう。

来院前に歯医者のよしあしが判断できないのであれば、来院後に自らよしあしを判断するしかないのですが‥‥

2) 患者自らも判断するすべを持たない

残念ながら来院後にもよしあしは判断できません。


たとえば歯医者に通ってみて、あなたが「良い歯医者だな」と判断するのはどんな歯医者でしょうか? 想像してみてください。

‥‥。

おそらくですが、「感じの良い先生だな」とか「説得力を感じた」とか「なんとなく腕が良さそう」とか、そういった雰囲気だけの判断ではないでしょうか。

でもよく考えるとこれはおかしなことです。
歯医者に行くのは健康になるためであって、大事なのはその歯医者さんがあなたを健康にしてくれるかどうかのはずです。
もちろん雰囲気に価値がないわけではないですが、それはメインの価値ではないはずですし、まして雰囲気しか評価しないのはおかしいですよね?


なぜこのようなことになってしまうのでしょうか。

それは、歯科治療のほとんどが、まともな治療をしなくてもだいたいの症状がおさまるものであり、したがって治療後の予後・予防こそが歯科診療のよしあしであるため、その結果が出るのが数年・数十年後だからです。
さらにいうと、医療という性質上、ほとんどのケースで他院との比較ができない(全く同じ歯を2つの医院で同時に治療して比較する、ということは不可能ですよね?)ということが、いっそう評価を難しくしています。


このようなことから、人気のある医院というのは単に説得力があるということしか意味しません。それゆえ非常に悲しいことですが、不誠実で誤った情報を提示し粗悪な診療で患者の健康を害す詐欺師達の方が、良質な医療を提供する誠実な歯科医師達より人気を得、高額な診療報酬を得ている、というケースが散見されるのが現状です。

悪質な歯医者はどんな悪さをするのか

といっても、悪い歯医者ほど儲かるなんて本当にそんなことあるのかな? と思う方も少なくないのではないでしょうか。
自分なら見れば分かる、話せば分かる、治療してもらえば分かる。そう思ってしまうことも無理はありません。

自己判断がいかに難しいかご理解頂くため、金儲けのために健康は害されているが本人は気づけない事例を5つだけご紹介しましょう。


【1. 虫歯を取りきらずに治療を終える】
基本的に虫歯は神経に届くほど深いものでなければ痛みは出ません。そのため、本人は虫歯が残っていることに気づくことが不可能です。歯医者側には下記のメリットがあります。
・虫歯が残っている場所を精密に確認したり何度も削ったりしなくてすむので早く治療が終わる ⇒コストが低く患者のウケもいい
・虫歯の進行が止まらないため、またすぐ虫歯が再発したと見せかけて再治療できる ⇒売上が上がる


【2. 不適合な(ピッタリはまっていない)つめものを入れる】

一部のケースで「フロスがひっかかる」などの現象が起こる可能性はありますが、原則として本人が気がつくのは不可能です。歯医者側には下記のメリットがあります。
・ピッタリ合わせるより簡単 ⇒技術がいらないし、良い型取りの材料使ったり、精度の高い型取り方法を行ったり、良い技工所を使ったりするコストも削減できる
・つめものは適合するかどうかで再発のリスクが大きく変わってくるが、不適合なものを入れることで虫歯の再発をうながし再治療につなげられる ⇒売上が上がる


【3. 多めに削ってセラミックを入れる】

セラミックは金属に比べ割れやすいので厚みをとる必要があります。もともと虫歯がそれなりに大きくて厚みがとれるのなら問題ありませんが、そうでない場合は余計に削らざるをえません。
ところが、歯医者にとっては
・見た目が白いので患者さんが喜ぶ
・値段が高いので儲かる
・割れてクレームになるリスクをさけられる
といったメリットがあるため、患者さんには黙って多めに削り儲けます。もちろん削れば削るほど歯の寿命は縮まります。
米国ではむしろ主流の考え方。患者さんの健康より満足度を重視するため、見た目を良くしたりクレームのリスクを下げたりする方が良いからですね。


【4. さっさと神経を抜く】

神経の近くまで虫歯を削った場合、
「深い虫歯で神経の近くまで治療したので、ひょっとしたらあとで痛みが出るかもしれません。でも一時的なものであれば大丈夫なので様子を見ましょう。もし痛みが続くようであればやむをえないので神経を取りましょう」
と説明していったん様子を見るのがセオリーです。一度神経を抜いてしまうと歯の寿命は残り10~20年ほどになってしまうことが多いため、可能な限り神経を抜かずにすむようチャレンジしたいからです。
でも悪質な歯科医はチャレンジせずさっさと抜きます。めんどくさいし、説明不足や理解不足でクレームになる可能性があるからです。
これも健康より満足度を重視する米国流です。


【5. 神経を抜いた後、まともに治療せずさっさとかぶせものを入れる】

虫歯が深く、継続的な痛みが出ている場合は歯の神経を抜くことになります。神経を抜いた後、歯の中は空洞になるのですが、中が汚染されているため、何回かかけて治りを見ながら消毒していきます。消毒が完了したら空洞の中に薬を詰め、土台を入れ、かぶせものをして治療完了です。
悪質な歯医者は治りを待たずほとんど消毒しないままに薬を詰めます。
‥‥いや、それもまだいいほうで、薬を詰めもせずにかぶせものを入れるクズすらいます。まともに消毒しなかったり薬を詰めなかったりしたらどうなるか。本来なら10~20年はもったはずの歯が数年で再感染を起こし、下手すれば抜歯です。
丁寧にやったところで保険点数は上がらないし、抜歯になってくれた方が儲かるからそうするのでしょう。こんな悪質な歯医者は今すぐ死んでほしいと思いますが、悲しいことに当院に来院される患者さんの中にも、数十人に1人は全然薬を入れた形跡がない人がいます。それが現状です。


以上、患者さんがどんなに賢かろうがよしあしを見抜くことは不可能で、だからこそ悪質な歯医者はそこにつけこんでいることがお分かり頂けたでしょうか。

ではどうすればいいのか。
我々は悪質な歯医者にだまされるしかないのか。

そんなことはありません。
次のnoteで良い歯医者を見つける方法をご紹介します。


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