見出し画像

国立大学出身の歯科医師は、私立大学出身の歯科医師に対して、嫉妬ややっかみがあるけど、それは無理もないのかもしれない

「国立の先生ってさ、私立の先生に嫉妬みたいなのあるよね」

「わかる。自分のLINEグループでもそんな感じだわ」


筆者は歯科に携わりながらも、そういった関係性の外側にいるので、あまりこのことを意識したことはありませんでした。
しかし、全員が全員そうというわけではないのは大前提としても、あらためて話を聞いてみると、一部にそういうことはあるようです。

そして、歯科の特殊な事情を鑑みると、確かにそういうことがあってもおかしくないような背景が見えてきました。


私立の先生の親は金持ち

まず前提として、私立の歯学部に通う学生の親はお金持ちです。

入学金や学費だけで最低2000万円。大学によっては5000万円以上かかります。
これは奨学金でカバーしきれるような金額ではなく、お金持ちの親でなければ、入学が成り立たない金額です。

したがって、 国立 vs 私立 という対立で考えたとき、この二者の経済格差はかなり大きなものになります。


他学部ではこのような格差はほとんど見られません。
下手をすると偏差値の高い国立大学の学生の親の方が金持ち、ということまでありえます。
大きく事情が違うといえるでしょう。


私立は入学がはるかに簡単

国立の歯学部は偏差値が高く、入学は容易ではありません。

おおよそ偏差値60〜65あたりの大学が多く、これは工学部でいうと旧帝国大学と同程度かそれよりわずかに下に位置する程度です。

かなり学力が高くないと入学できないといえます。


一方で私立大学は偏差値50前後と、その差は歴然です。

大学によっては「(学費は高いが)金さえ出せば誰でも入れる」と言われるところもあるほど。

両者は全く別世界の難易度で戦っているわけです。


でも歯科医師になれば一緒

一般的には、どの大学を出たかというのは、それなりに重要です。

就職活動での格差は言うに及ばず、東大卒・京大卒だと言えば、それだけで一目置かれることも少なくありません。


ところが歯科医師や医師にはそういった文化がありません。(全くないとは言いませんが、非常に弱いです)
資格を持っていればみな同じだという価値観が共有されていれるからです。

そんな文化ゆえ、初対面で気軽に出身大学を聞くのが当たり前なくらいです。

普通の人は、初対面の人にいきなり「どちらの大学卒ですか?」と聞くのは、失礼にあたる気がしますよね。
出身大学は序列を示しかねないからです。

歯科医師や医師はそうではありません。

腐女医の医者道! 2巻』より。医師も大学は序列を示さないため、気軽に出身大学を聞く。


患者さんも、通院する歯科医院の先生が私立の大学卒か国立の大学卒かというのは、まず気にしません。


国立と私立の偏差値は、おおよそ「クラスで1番できる子」と「クラスで1番できない子」くらいの差があります。
なのに「お前らは同じだ」と言われる。
「親が金持ち」というただそれだけの理由で。

これは嫌でしょう。


歯科医師はお金に目が行きがち

ここまでは歯科医師になるまでの過程について話してきましたが、実は歯科医師になってからも、問題はつきまといます。

その前提として歯科医療の性質や傾向についての話をしましょう。


非常に悲しいことなのですが、歯科において良質な医療を提供することはほとんど患者さんに評価されません。
さらにいうと、同業者にすらほとんど伝わらないので、本当に誰からも評価されないと言っても過言ではないほどです。

それは下記のような特殊な性質があるからです。

・歯科医療の大半は「とりあえず目の前の疾患が治る」のが当たり前であり、歯科医療の質は「どれだけ再発しないか」で決まるので、結果が出るのに何年もかかる
・同じ歯を複数の歯科医院で治療するわけにいかないので、原理的に比較ができない

このため、患者さんが歯科医療の質を判断するのはほぼ不可能です。


医療の質を示すといえる指標がほぼないことから、歯科医師同士でさえ、お互いの実力はほとんど評価できません。


医師のように「天才外科医が激ムズ手術を成功させた!」というような分かりやすいパターンがないんですね。

実際、「天才外科医」と聞いても違和感はないのに、「天才歯科医師」と聞いたら、失笑してしまわないでしょうか。
そのことが歯科の実情を示しています。


医療に向き合っても評価はされない。

そんな中、歯科医師が成功を求めて行き着く先は何か。

それはお金です。


収入が増えれば自慢できる。

大きな医院や、たくさんの医院を経営すれば、すごそうに見える。

こういったところに自身の「成功」を見出してしまう歯科医師が少なくないのが実情です。


でもお金に成功を求めると…

ところが「お金」に成功を求めると、また 国立 vs 私立 が顔を出してきます。


私立の先生の親はお金持ちです。

「親の医院を継ぐんだ」

「親から土地をもらって医院と家を建てるつもりなんだよね」

「親から(億超えの)マンションもらったわ」

こういった話はよく聞く話。当たり前のように聞かされる話です。

でも親が特別お金持ちでもない国立の先生にとっては別世界の話。


自分は一生懸命奨学金を返しながら、わずかな貯金を貯め、銀行に頭を下げてようやく融資をしてもらい、借金まみれで開業するというのに、かたや私立の先生は数千万円から億を超えるアドバンテージを持って開業する。

お金で競おうとするとまたもや圧倒的に不利な戦いをしいられるわけです。

これは愚痴の一つも言いたくなってもしょうがないのではないでしょうか。


しかもよく目にする

極めつけは、私立の先生の方が多数派ゆえに、こういった状況を頻繁に目にするということです。

普通のサラリーマンなら、身の回りにうなるほどのお金持ちがいても「そういう人もいるよね」で済みます。
そこまでのお金持ちはごくわずかなので、それほど気にならないからです。


でも歯科医師は私立の先生が大半で、国立の先生はむしろレアキャラ。

周りを見渡せば、自分だけが不利な環境に置かれているかのように見えてしまいます。

これはつらいでしょう。


まとめ

大学に入るのに圧倒的に不利な条件で受験させられ

頑張って難関大学に入ってもみんな同じだと言われて評価されず

歯科医師になってからも大きく不利な条件で経営させられ

しかも周りを見渡せばこんなに不利な条件でやらされているのはほとんど自分だけ


一般的なサラリーマンなどと違い、ここまで格差を見せつけられ続けることを考えると、国立大学出身の先生が多少不満を言いたくなるのも仕方ないことかもしれないなと思ってしまいました。


今回は以上です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?