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好きなもんの話しようぜ〜ハイパーハードボイルドグルメリポート〜

「海外のチェーン店」を知っているだろうか。
マクドナルドは特に有名だけど、
ガールズジュニア、シェイクシャック、ウェンディーズ、
タコベル、そしてヘッダのパンダエクスプレス。
海外から日本に上陸したチェーン店のことだ。
そういうのはYouTubeやテレビ等から知る訳だが、
どう足掻いても同じ物が食えるとは思えない、
そんなメシばかりの伝説となった番組があった。


・ヤバい奴らとヤバいディレクター

2017年、突然一部を騒然とさせた番組があった。
「リベリアの元少年兵」
「アメリカNo.1の抗争地域」
「ヤバい奴らは何食ってんだ?」

こんなワードで「グルメ番組」の放送が告知されたのだ。
自分は仙台在住なので見れないと思っていたが、
なんとそこは孤独のグルメなどで手慣れているテレ東さん、
ニコニコ動画で配信してくれた。
椅子とモニターとスタッフのみのスタジオに連れて来られた小藪、
その小藪のワイプとリアクション以外、ロクに音は鳴らない。
カメラが拾った現地の音、演出で被せる若干のSEとBGM、
そして撮れた物を意地でも使った緊迫感のある映像。
このインパクトが話題にならないはずが無かった。
なんせそのヤバさ、取材ディレクターがヤバい目にあっている。

初回放送最初の危険地帯は、
リベリアの元少年兵が暮らす国営墓地
しかもこの場所、とにかく危険過ぎる危険地帯で、
元少年兵にもある程度危険度があるらしい。
放送に乗らなかったコミュニティ、
そしてYouTubeで後日公開された映像があるが、
後者のコミュニティはプライドを持って生きていた。
しかし、国営墓地は違う。
犯罪を「生きる為」と呼吸の様に肯定している。
「仕事は何か」と聞けばヤバい回答の連続、
「ドラッグやってスリしに行く」とか、
「例えばお前の車を見つけたらビッグチャンス」とか、
女性がいたと思えば「娼婦だよ」とか、
トー横キッズも真っ青である。
そんなヤバい奴らのコミュニティ、ただ入れては貰えない。
入ろうと交渉するもグダグダのまま進み、
なし崩しに入れば敵意ある視線がカメラに向く。
「足元見てみな」と言われた次の瞬間、
その敵意ある視線の彼がGoProをもぎ取ってしまう。

更に促されるまま奥へ入ろうとすると、
すれ違い様にスリにあった。
ボールペン一本取られただけではあるが。
小藪は「くれてやれや」と言っていたが、冗談じゃない。
小銭ひとつ許した時点で完全にターゲットとなり、
帰る頃には尻の毛まで何一つ無くなっていただろう。

そんなヤバ過ぎる番組の主要人物を一応。

>上出D
元テレ東、現フリー。
他番組での経験からこの企画を立案した張本人。
記憶が正しければロケの約半数を担当している。
そこそこ危険なロケが多いが弱音は吐かない方、
「組織のことは聞くな」と言われたマフィアの取材で、
トップ相手に「人殺したことあります?」と当たり前に聞ける
等、
かなりの度胸の持ち主。
現地での味見や食事で躊躇無く自分を映す。

>取材担当D
数名で残り半数ほどを担当。
「顔はダメだ」と言われている銃を持った相手に、
撮りたいアングルの関係で容赦なくカメラを向けたり、
ギャング相手に「人殺したことあるのかな」と聞いたり

肝っ玉のすわった人も居るかと思えば、
弱音ガンガン吐きながら坑道を這いずり回る人も居る。
ただ、基本的に撮りたい映像の為に危険に飛び込む度胸はある。

>小籔千豊
ほぼ唯一の出演者。
映像を見せられて複雑な気持ちにされ、
収録後のメシに悩まされる理不尽な役回り。
たまにボヤくことが視聴者には癒しとなる。

>メシ
この番組のメインコンテンツ

ここで触れないと何の番組の話かわからなくなる。
取材先の文化が垣間見れるのは勿論として、
どんな危険人物でも夢中で美味い物を食っていると、
その時間さえ邪魔しなければ「ただの人間」だと思えてくる。

・何もかもが狂う時間

とにかくこの番組は観ていると何もわからなくなる。
どれだけニュースが「これは不要」と切り落としていることか。
世の中の出来事はどれもこれも濃密だと思わせられる。

例えばリベリアの未放送分ロケ地。

国営放送局が完成しないまま廃墟になり、
元少年兵が暮らしているということだったが、
そこに暮らしていたのは政府側と反政府側両方の人間だった。
その廃墟では、過去は過去と割り切って、互いに銃口を向けていた人間が、
一つ屋根の下で、共同生活しているという。
黒人差別問題のように今も対立が続いているかと思いきや違う、とな。

正直言って、他にも1つくらい挙げたいけど書けない。
とにかく言葉が出てこない。
ネパールの火葬場で物乞いや金属拾いをしている家族、
そこの小さな女の子
に質問をしていた。
「今何がほしい?」とかだったはず。
まともな家、綺麗な服、遊べるおもちゃ、おいしいごはん…。
そういう物ではなく、「妹がほしい」と言った。
セルビアの国境越えに挑戦するアフガニスタンの難民の少年が言った、
「なんでも楽しむんだ、笑っていればなんとかなる」とかなんとか。
何が正しい?何が幸せだ?何が哀れだ?
観ていて面白い番組なのは間違いない、
ただただ、何もわからなくなる。

間違いなく悪人な人間もいる、
そうではない人間もいる、
それぞれがメシを食い、生きている。
ギャングの構成員だろうがなんだろうが、メシを食って別れる時、
どうしても考えてしまう。
「この後元気にやってるんだろうか」

・おすすめエピソード

ここまでぐちゃぐちゃな文章を書いておいてオススメも何もあるのか?
そうは思うが基本的にこの番組は面白いので、
特に気に入ってる奴を。
しっかり書いてあるが、安心してほしい。
こんな雑文で何もかも伝わるほどヤワなもんじゃない。
U-NEXTとテレ東の配信で今でも観れるのかな?
ネトフリもまた観れる様にしてくれぇ~。

・第一回:リベリア

業界を震撼させた衝撃の第一回放送分。
市場で日本からの物資の横流しを見つけたり、
エボラ出血熱から生き残った女の子に会ったり、

前置きだけでもそこそこの内容だというのに、
そこから向かうのは元少年兵のホーム、
一番最初に書いた国営墓地。
一触即発の状況から中に入っての取材、
そこでの出会いからメシを見せて貰える相手を見つけるが、
そこから先もどう受け取れば良いのか悩む内容。
まずここからどういう番組か見ると良いかと。
あと、「英語にも訛りがある」のでそこも必見、
オーストラリアも訛りが酷いというが、リベリアも凄い。

・第二回:LA ギャング抗争地帯

ロサンゼルス、サウスセントラル。
今はサウスロサンゼルスと言うとかなんとか。
その地域で睨み合うふたつの組織、
メキシコ系と黒人のギャングの、
よりによって両方に取材した、やはりヤバい回。
放送2回目がコレである、なぜサウスセントラルを2回にしない。
案内人は元メキシコ系ギャングボス
車には銃こそ無いものの、バットが積んである
合流早々「ズームレンズあるか?」の一言。
更に続けてこうである。
「あそこの壁の穴見えるか?AK-47の弾痕だよ」
「試し撃ちで遊んだ程度だろうな」
「こっちも見ろよ(ふくらはぎを出す)AKカスったんだぜ」

たまらず「挨拶を」とコーディネーターが口を挟む。
なんだってんだコイツら、
昔の怪我自慢のレベルがちょっとヤバい。
そうこうしている内にメキシコギャング構成員の家に着くが、
「色々ルールがある、組織のことは聞くな」
聞いたらどうなるかは想像した通りと言っておく。

異文化交流を色々する中で印象的なのは、
「これ食ってみろ」と出てきた最初のメシ。
食べ方を実践して見せた後、食べかけを渡す。
「食っても大丈夫」と見せてから食わせている訳だ。

内通者が毒とか仕込んでそうなヤバい取材対象なだけある。
そして色々撮って次は黒人ギャング。
こちらもあーだこーだ取材するのだが、
途中で急に風向きが変わる。
こういうことがあるから、
この番組はどう観れば良いのかわからない。

・第四回:セルビア 不法難民

中東からヨーロッパを目指すものの、
EUへ入ろうかというところで足止めをくらい、
出ることも正式に留まることも許されない、
そんなセルビアで中東からの難民を追う。
まず出会うのは「追い返されてきた」という4人組
流れで取材陣がメシを奢るのだが、
寒い中で温かい物を食べたせいか、
はたまたなんらかの感情によるものか、
静かな中に、時々鼻を啜る様な音が混じる。
続いて難民のコミュニティがある廃墟へ。
夜になり声をかけて来た少年を取材するが、
途中緊迫感のあるシーンも挟まる。
他にトルコからギリシャへ入る難民も別で取材しているが、
セルビアの方が見るべき内容は多い様に思う。

・第六回:ボリビア 人食い鉱山

「おれの名前(あだ名)は[働き者]だから」
そう語る青年が働く鉱山、
落盤やらなんやらで人が死ぬことから、
ついた呼び名が「人喰い鉱山」

そんな山で採れた銀は日本にも来るという。
視聴後に調べたところ、彼ら作業員に会うツアーもあるという。
そういうある種の食い扶持であるせいか、
ツアー関係なしの取材陣には中指立てる冷遇ぶり。
そんな中で1人、取材を受けたのが「働き者」。
しかし、働くにはあまりにも体に鞭を打ち過ぎていた。
朝食を済ませて山へ向い、
準備をしつつ口に入れたのはコカの葉
疲れや空腹を誤魔化せるらしい、エナドリか?
更に仕事仲間と飲み始めたのはビール、
1リットルは余裕である特大サイズをガブ飲み
する。
その間もコカの葉を口に入れるので頬はパンパン。
山の作業場に向かう途中でもまだ酒を飲む。
安全の神という「ティオ」に酒をかけるが、
放送後に調べてみると、なんと消毒用アルコール
「90度の酒」とか番組で言ってたが…ウォッカみたいなもんだったのか?
坑道を這いずり回って作業場に着き、
作業を終えて一息つくにもやはり酒。
持って来た水にあーだこーだ混ぜてベロベロになるまで飲む。
全て終わり山から出ていざメシという時、
最早酔っ払いの後始末という感じだった。
そんな彼が一言、作業中に言い放つ。
「おれを可哀想だと思ってないか?」
穏やかで人当たりの良かったそれまでとは違う、
口調こそ変わらないが、鋭い一言だった。

・オススメ番外編:リベリア未放送ロケ

これはYouTubeで公開されている番外編、
「放送できなかったヤバい飯」のひとつ、
最長10分までの動画で6本構成。
他にシベリアのカルト教団取材の番外編、
アメリカでのギャング取材の番外編もある。

廃墟となった国営放送局、
そこでやはり一触即発となってからの映像。
「元少年兵は殺した相手の人肉を食った」
そんな昔話の真実に迫るが、
国営墓地コミュニティとは違い、
真っ当に生きようとする逞しい姿が見れる。
これはこれで放送されても良かったくらい中身が濃い。

これを番外編としたのは、
ここまでに挙げた以外の放送分もとにかく面白いから。
Netflixで見れた時には全部通しで見た。
あと、書籍版のオマケで観れる奴も凄い。
…「白人至上主義・黒人至上主義」はネトフリに無かったが。
そのネトフリも今は観れない、
他で見れるけど他も契約するのはなぁ…。
…と、いう中で、この国営放送局である。
編集もテレビ放送より荒い分、
ひたすらに生々しい。
是非この動画から見て欲しい気持ちもあるが、
やはりテレビ放送分もすごくいいので、
そちらをなんとか見てもらいたい。

・もうちょっとだけ番外編:新視覚版(連載中)

マンガクロスで連載中のコミカライズ版。
リベリアのロケから始まり、書籍版でチラっと触れたコミュニティ以外、
つまり、「国営放送局」「エボラ生存者」「国営墓地」が現在読める。
現在とは言うが、単行本があるのでその分はそっちで読める。
企画が通るくらいから始まって、こぼれ話的なエピソードもあるが、
やはり緊迫感のある内容なのは変わらない。
上出Dへのインタビューも読めるので、
書籍版等読んでいない人はこちらも読むと良いかと。
自分は書籍版でしっかり本人の体験を読んだので…。
なお、問題の書籍版だが、
リベリアのガチ未公開取材分、台湾マフィア、
シベリアカルト教団、ケニアのゴミ山取材、

これらについて書いてあり、
今は帯がついてるかわからないが、帯にオマケのQRがある
ここまで読んで実際に映像を見た後、まだ足りないなら是非。

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