![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145037318/rectangle_large_type_2_492f141734757f85ec8e54d0014a1909.png?width=800)
久しぶりの日本は『〜レス』ばかりだった
今年の春は、子供たちを元旦那にあずけて、叔母のホーム入所の手伝いのために単身で日本に一時帰国した。
久しぶりの帰国だったってのはあるんだけど、それにしても、いろいろ変わってて、びっくりした。前回帰った時、「日本って、思いのほか現金払いの国なんだな」と思っていたのに、あっという間にキャッシュレスになっていた。
カナダでは、『クレジットカードでタッチ』が主流で、金額が大きい時だけ、機械に差し込んで暗証番号。もしくは銀行のカード(デビットカード)か、キャッシュ。
それだけ。
だから、今回はクレジットカード一本でいこうと、日本とカナダのカードを両方用意したのに、なんだかいろいろ引っかかる。
「ここにタッチしてください」
これはできる。
カナダと同じだから。
ところが、タッチじゃない場合、
「ここ(機械の下側)に差し込んでください」
「ここ(機械の上側)に差し込んででください」→これはカナダで見たことない。
「暗証番号お願いします」
「なんか暗証番号通らないんで、サインお願いします」
とか、いろんなことがあったので、
「ムキー。こんなんなら現金、現金にする!」
と、今度は現金を持ち歩くことにした。
スーパーのレジにて、キャッシャーのお姉さんが、軽快に
「ピッ、ピッ、ピッ」
と、商品をレジに通していく。
最後の商品が終わり、レジ袋を聞かれ、財布を握り締め支払いを待つ。
待つ。
待つ。
あれ?
すると、怪訝そうなお姉さんが、
「あ、あの支払いはそちらで」
と、隣にある別の機械を指差した。
支払いは別マシンなのか。
知らなかった......。
「あ、すみません」
ペコペコしながら、隣の支払い機に移動する。
背中に突き刺さる視線が痛い。
画面には、色々な支払い方法がずらりと示されている。
タッチ決済、コード決済、商品券.....。
機械の前に仁王立ちして、真剣にメニューを読む。
ようやく『現金』の項目を見つけ、選ぶ。
もう、この頃には、脇にじわりと汗をかき始めている。
札はともかく、久しぶりの日本の小銭に再び、もたつく。
なんか大体の金額の小銭を投入口にぶち込む。
思った通り間違えていたらしく、余分な分のお釣りが出てきた。
この『別払いシステム』、慣れるのに相当時間がかかった。
そして、回転寿司がタッチパネルになってたのは知ってたけど、もう、どこに行ってもタッチパネル。
タッチパネルだと、カテゴリ分けされてるから、ドリンクはドリンク、おつまみはおつまみ、みたいになっている。
私みたいに、メニューをあっち見て、こっち見て、迷いに迷って、やっと決めて、オーダーとりにきた瞬間に心変わりして、全然別のものを頼む、っていう醍醐味がなくなってしまって、ちょっと悲しい。
いや、オーダーミスとかなくなって、ぜんぜんいいんだけどね。
あと、私の日本帰国時の楽しみのひとつは、コンビニ巡りなんだけど、なんか、スムージーのマシンやら、コーヒーもいっぱいボタンがあって、これまたドキドキした。
地元の小さなコンビニに行った時のこと。
店員さんは、東南アジア系のにこやかなお姉さんだった。
「チキンのレギュラー、ひとつ」
バリバリの九州弁アクセントで頼んだ。
すると、お姉さんは少し困った顔をした。
あ、九州弁、強すぎたかな?
「すみません、チキンのレギュラー、ひとつお願いします」
今度は、標準語っぽく言ってみる。
でも、お姉さんは動かず。
二人でしばらく見つめあった後、お姉さんは、蚊の鳴くような声で言った。
「あの、チキンは、自分で、とってください」
え?
焦る、私。
だって、ホットフードのショーケースの扉って、カウンターの内側に向いて.....
向いてない! こっち側が開いてる!
なにこれ、素手でとって、そのまま、店員さんに渡すの?
え、どういうこと?
軽くパニくる。
一人でうろたえていると、見かねたお姉さんが、カウンターから出てきてくれた。
「トングで」
あ、トングがあった。
「そこの紙の袋で」
あ、これに入れるのか。
......チキンを食べようなんぞ、思わなきゃよかった。
汗をかきつつ、
「すみません、すみません」
と、あやまる私に、苦笑しなだら、
「大丈夫です」
と、しっかりした、訛りのない日本語で答えてくれるお姉さん。
土地の言葉でべらべら喋ってて、地元民感丸出しなのに、チキンひとつまともに買えない私。
敗北感を感じながら、店を出た。
コロナのせいだろうけど、何だか、人と人との直接のコミュニケーションがずいぶん減ったんだな。
ファミレスでは、ロボットが本当に配膳してたし。
あんなの未来都市の話かと思ってた。
今年の夏の帰省は、大丈夫かなあ。
〜終わり