見出し画像

8.薬局の在庫確保の現状

こんばんは。

今日は薬局の在庫確保の現状について記載していこうと思います。過激な私見も入ります。ご容赦ください。

現在薬局業務の鬼門の一つが在庫管理です。数年前まではここまで気を遣わず、来ていただいた患者様に不自由ないように、また、デッドストックや回転率を 考えながら取りそろえるという業務でした。

それがある事件をきっかけに、いまだに状況が改善しない状況にあります。

小林化工の自主回収

これが一番のきっかけの事件です。

小林化工 イトラコナゾール錠50「MEEK」服用で死亡した患者は関東在住70歳代女性

簡単に言うと、工場の管理ミスにて、水虫のお薬に睡眠導入剤が多量混入。死亡事故まで起こすといったものです。

これはあってはならないことなのですが、この事件を皮切りに、どんどん医薬品メーカーが出荷制限をかけていくきっかけになったのです。

そもそもジェネリック医薬品とは何ぞや

ジェネリック医薬品は、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使っており、品質、効き目、安全性が同等なおくすりです。厳しい試験に合格し、   厚生労働大臣の承認を受け、国の基準、法律に基づいて製造・販売して  います。
さらに、製品によっては、服用しやすいように大きさや味・香りなどを改良したジェネリック医薬品もあります。新薬に比べ開発費が少ないために、 新薬より低価格なおくすりです。日本ジェネリック医薬品協会より

薬局の普段の業務でジェネリックを推奨する場合の文句は大概以下のようなと ころが多いかと思います。

「昔からあるお薬(先発品)の特許が切れ、後から出てくることによって、研究費用が掛からない分安価なお薬。お薬の成分、成分量は同一で効き目は同じですのでいかがでしょうか?」

あながち間違いない内容ですが、これは一般向けに分かりやすく、なお端的に お伝えするために薬剤師等が説明する文句です。

実際は何が異なるのでしょうか?

新薬はまず、その候補になる化合物の探索から開始し、動物実験、人への投与の試験(治験)を経て、市場に出回ります。私が学校で習ったときは1剤の新薬作成に500億ほどの投資が必要と習いました。(この記事を記載するにあたって再度インターネットを見ていると150億~200億という記載も…)

それに対して、ジェネリック医薬品(以降「GE」記載)は数億円となっています。

また、新薬開発は市場に出るまでに10数年かかり、市場に出回りだし、残存特許が平均7年程度。以降はGEの発売が可能になります。(ちなみに開発まで3~4年ほど。)なぜここまで開発費用に差があるかというと、これだけ提出しないと いけない試験データに違いがある為です。

画像1

ちなみに

・加速度試験:過酷な環境下で、どれだけ医薬品が安定しているか確認     →安全に長期保管できるか確認

・生物学的同等性試験:体に吸収されるお薬の量が先発品と比較しておおむね 同等か確認(バイオアベイラビリティの比較)                                   →通常数値は±20%(0.80~1.25間ともいわれる)同等性であればパス

です。

表を見て比較するだけでもいかにGEの試験が少ないかわかると思います。

ただこの記載だけでも勘のいい方なら引っかかると思います。

「生物学的同等性試験の範囲は±20%なの?」と。

ジェネリック医薬品の落とし穴

確かにジェネリック医薬品は安価で先発品と同一成分、同用量。そのうえ、上記していませんが、先発品と添加物は変えられるため、飲みにくい味や大きさ、 性質(普通の錠剤を口の中で溶ける錠剤に変えて販売etc)の工夫が凝らされたものもあり、服薬しやすさを向上させたものまであります。

ただし、体に入って利用されるパラメーター(=バイオアベイラビリティ)が80%から125%異なりますよ。というもの。

それがGEって効かないんじゃないのって言われる原因です。

…ん?125%?

そうです。逆にGEの方が吸収率がいいものもあるのです。

要は問題ない程度のずれという試験の幅は、マイナス(効きづらい)~プラス  (効きやすい)まで幅があるのです。

ここで逃げるわけではありませんが、その数値のずれが、どれだけ効果に反映 されるかは結局薬が効きやすい体質か、効きにくい体質化でも大きく左右され ますので、どちらがいいとは言えません。よって国が定めた数値内の試験を通過して出てきたGEは先発品からの切り替えで効果に(多少のばらつきがあっても) 同等ですと言って推奨するのです。

個人的には先発だろうがGEだろうが、飲んでみないとどっちがいいかは    わからないので、GE試して効きが悪ければ先発も試すという方法がベストだと 思っています。

さあ大きく脱線しましたが、もとに戻ります。

医薬品の供給難

ここからは特に私見も入るので、注意を。

新薬は500億ほど、GEは数億という開発費の差が、薬価(薬剤の費用)の差に つながり、先発品の半額程度でGEを提供することができます。

ただし、この費用の差も大きく今回の事件にかかわっていると思っています。

1.薬価の流れ

以前の私の記事にも記載しましたが、年々薬の費用は下げられています。これは国の医療費が国家予算の爆弾であり、少しでも削りたいという意図からです。 ちなみにその意図が薬局でGE推奨にもつながってきます。

ただし、薬価は下げれば下げるほどいいわけではないのです。いわば医薬品  メーカーに対して薄利にすればするほどどこにしわ寄せが来るか。研究費用は ケチれない。じゃあプロモーションは?これもヒット商品のGEなんかは数十社 がこぞって制作するので難しい。じゃあどこ?

製造ラインでしょって。成分的には削れない。添加物も削れない。じゃあ…? ラインの人件費削っちゃえ。これが今回の小林化工の事件につながった原因  です。

ではなぜ小林化工がバッシングを受けたことで、お薬の供給が不安定になった のか?それはこの事件を皮切りに国が動き出したことが大きいと思います。

今までよりも監査の頻度や精度が今回の事件であがってしまったため、今まで ぎりぎりのところで回していたラインが一斉に止まってしまったのです。   ただし、これは国から指摘されてからでは府が悪い(ニュースになると会社の 信頼にかかわる。数メーカーは間に合わずニュースになり、信頼が底に落ちた しね。)から自主的に止めてしまえ。それが大きな要因だったと思います。

それによって何が起こる?

2.薬局の買占め

薬局が焦りだして一気に在庫量を増やしだしたのです。特に制限がかかったものなんかは、次患者様が来た時に迷惑が掛かると情報が出回れば即買占めに走るのです。また、普段購入していたお薬が調整、販売中止することで、別メーカーのジェネリックや先発品に流れることで、その成分、その規格のお薬が全滅。どうしようもない場合にようやく医師に相談し、別薬剤変更を依頼します。

一般の方が見ているのは ここ。

GEだろうが先発品だろうが入荷しづらいお薬が把握しきれないほどの品目数存在するのです。薬によっては気づけば3か月入っていないものもあったりします。

国はやれ一元管理だ、GEをもっと使えだはっぱをかけてきますが、そもそも薬が入ってこない。

一新聞はこの薬局の買占めだけを悪いとたたく記事まで出ましたが、転売目的で入れるわけではなく、普段来ていただいている患者様の迷惑にならない為の行為は悪でしょうか?

オイルショックの際のトイレットペーパーやコロナショックでマスクを買い  占めた母親は子供のために動いていますが、この母は悪でしょうか?

私は違うと思います。

じゃあどこ?

3.何が供給難を起こしている?

私は一番の原因は国だと思っています。

薬価を下げるはいいが、どこで費用を浮かすか考え、こういった事態になる可能性をどこまで予想していたのか?また、そもそもずさんな製造ラインを許して いたのはどこ?国でしょ?

もともとの基準や監査業務を徹底していればここまで大掛かりな供給難は起き なかった。なおGEを出せ、薬価は下げるという国は目先の医療費削減しか考えていないのではないだろうかと。これを皮切りに薬剤師まで変な変更を医師に  問い合わせまくれば、コロナ禍で疲弊している医療業界に拍車がかかるだろうと。

また製薬メーカーと薬局に挟まれた卸業なんてさらに悲惨だと思います。製薬 メーカーは(一部ですが)薬局には顔を出す頻度は少なく、とりあえずDMで薬  制限かかりましたの一報だけ。それを見た薬局は憤りながら卸に(特にMS(卸の 営業))にぶつかる。でも薬価が下がっているからなお卸の利益も下がる。意外と一般の人は知らないかもしれませんが、医薬品卸業者さんのおかげで薬局にお薬がなかった場合にその日中に対応できたりしているのです。そこの柱が折れると、末端になる患者様に対して、薬の供給が遅れることをもう少し考慮して  ほしいと薬局薬剤師の私は思います。

供給難の影響

薬局側からのお願いとしては、今後もしばらくこの供給難は続くことが予想  されるので、

・薬のストックがなくなり受診ではなく、少しある状態での受診       →多すぎると医師も処方できなければ薬局も薬をお渡しできません。

・薬局に基幹病院受診時や、病院から距離のある薬局に行く際はFAX送付や電話での在庫の問い合わせ

・初めて薬局を利用しようとする場合で服薬している薬の種類が多い場合は事前に取り寄せを依頼しておくこと

これらを推奨します。

そうすることで、今日飲まないといけないお薬が今日手に入らないことを防ぐ ことができると思います。

なお、できれば取り寄せできないことがあることを少しでも多くの人に把握  いただき、窓口で激昂される方が減ると幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?