どうやら私は母になれたらしい

子はもうすぐ6ヶ月。できることがたくさん増えた。
名前を呼ぶとこちらを向いてニコッと笑う。「うあ〜あん」と言うときは私を呼んでいる。甲高い声で叫ぶときは「飽きたから遊べ」の意思表示。
ひらひら揺れるカーテンに手を伸ばして、つかまえて、また離して、くりっとした目をキラキラ輝かせる。
離乳食のおかゆを指で押し込んだり、私からスプーンの主導権を奪ったりしながら、顔じゅうおかゆまみれにしてニコッと笑う。
寝返りと、寝返り返り(うつ伏せから仰向けに戻ることを便宜上こう呼んでいる)を覚えて、部屋の端から端まで転がって、壁に向かって寝返りを打とうとして、阻まれ、怒る。

数ヶ月前までは食う泣く眠るの3つで生きていたのに、今や新しい感情のオンパレード。毎日楽しく過ごしている。

そんな子と実家に帰った。子にとっては初めての遠出、外泊。実家に着いて30分ほどは「ここは知らない場所だ、おうちに帰りたい」とこの世の終わりのように涙をポロポロこぼして泣いていた。その後もふとした瞬間にグスグス泣いたものの、半日もすれば慣れたようで、リビングでコロコロ転がってい(母が用意してくれた新しいおもちゃは、初見でギャン泣きして、遊べるまで数日かかった)。

帰宅する前の夜、私が熱を出した。1日で引いたけれど、夫の都合もあり、滞在が数日延びた。
子には「ごめんね、もう少しここで遊ぼうね」と伝えた。変わらずコロコロ転がっていた。

それから数日後、子が夜泣きした。新生児の頃から夜泣きらしい夜泣きはしなかった子が。
ひとしきり泣いて、泣きながらコロコロと布団を転がり、私の腕にぴたっとくっついた。夏用のさらさらした掛ふとんに招き入れ、抱き寄せてお腹を撫でると、まもなく泣き止み、スウスウと穏やかな寝息を立てはじめた。子はそのまま、私の腕の中で寝た。すっかり安心しきった様子で。

いつまでここにいるのかなあ、いつおうちに帰るのかなあ、と考えがら毎日遊んでいたんだろうか。申し訳なく思うと同時に、泣きたくなるくらいの幸せが込み上げた。出産して、ハイこれ!今日からよろしく!と慌ただしく渡された「母」のたすきが、体に馴染んだ瞬間だった。この夜を一生忘れたくないと思った。

翌朝目覚めた子は、私の腕に顔をこすりつけて「んあ〜」と言った。「おはよう」と名前を呼ぶと、うれしそうに笑っていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?