『少年が揺れる、』



黒板とにらみ合う少年が一人、
その理由は問題を解くためじゃない。
それを消す道具を手にした少年は、
「今日こそは、」と意気込んだ。

黒板の一番上、背伸びした少年では届かない。
それを見ていた少女が「私もなの」とふわり笑う。
教室には友を待つ少女と、バスを待つ少年が二人。

もう高くはならないこの目線
「これでいい。君と話せるなら、」
たとえ少女の口から少年以外の名前が零れても、

そして少年はバスに乗る。ガタガタと揺れる。少年が揺れる、


校庭に目が留まる少女と一人、
その理由は友達を見るためじゃない。
時を知る道具を目にした少年は、
「今日はもう、」と飛び出した。

校庭から見えた窓、背伸びした少年では届かない。
それに気づいた少年は「離れなきゃ。」とひやり焦る。
教室には友を待つ少女が、バスに乗る少年が一人。

もう遠くに置けないこの気持ち
「もう離してよ。バスが僕を、」
たとえ少女のそばから少年を消すことができたとしても、
          
もう高くはならないこの目線
「それを理由にしている僕は、」
いつか少年の口から少女への本音が届くとしたら

だから少年はバスに乗る。グラグラと揺れる。 少年が揺れる、


――――――

少年は背が低い。
少女は少年の好意を気づいてるけど、きっと知らない。

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