『カラフルな世界で』



赤い空が僕を見てる

壊れた自転車を引いて
好きな歌を口ずさむ僕を

「おかえり。」の声はないけど
「ただいま。」と言ってドアを開けた


黒い部屋が僕を見てる

疲れた身体を投げて
大きくため息を吐く僕を

「おやすみ。」の声は出さずに
「ひとりだ。」と言って目を閉じた


白い画面が僕を見てる

見慣れた名前に止まって
慌てて通話を押す僕を

「たまには、」と笑いながら
「帰っておいで。」と声が聞こえる


滲む世界を僕が見てる

汚れた眼鏡をかけて
たくさん涙を落とすから

「ありがと。」の声を出せずに
「そのうち、」というため口を開いた

青い空が誰かを見てる

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