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貧弱感想文 『テロ』

読んだ本

『テロ』 著者 フェルディナント・フォン・シーラッハ

1.結論

でっけえトロッコ問題。
面白い!というよりも考えさせられる一品。
私は有罪だと思いました。

2.あらすじ

2013年7月26日、ドイツ上空で旅客機がハイジャックされた。
テロリストがサッカースタジアムに旅客機を墜落させ、7万人の観客を殺害しようと目論んだのだ。
しかし緊急発進した空軍少佐が独断で旅客機を撃墜する。
乗客164人を殺して7万人を救った彼は英雄か? 犯罪者か? 結論は一般人が審議に参加する参審裁判所に委ねられた。
検察官の論告、弁護人の最終弁論ののちに、有罪と無罪、ふたとおりの判決が用意された衝撃の法廷劇。どちらの判決を下すかは、読んだあなたの決断次第。
(hontoから引用)

要約
7万人の命を救うために、164人を犠牲にしてもいいのかどうか?

3.有罪だろそれは

連邦憲法裁判所が航空安全法を違憲とした通り、人の命を天秤にかけてはならないのである。
命の価値は常に同等でなければならない。
多数のために少数を犠牲にすることが本当に正義なのか?キムタクも言っている。

2005年に施行された航空安全法では「事態がひっ迫した場合、ハイジャック機の撃墜もやむなし」とされた。
しかし、2006年に連邦憲法裁判所(ドイツの最高裁判所)が上記の条文を違憲とした。
ハイジャック機を乗客ごと撃墜することはやはり違法と言うほかない。

コッホ少佐にはどうしようもない状況であったことは言うに及ばず、撃墜以外の選択肢はなかった。
だがその心情を慮って無罪としたのでは何のための法か。それでは法治国家とは言えない。

しかし同時に、本書のような状況において法は無力だ。
人質をとれば撃たれないとわかっていたら、テロリストは無辜の人々の命を盾にできてしまう。

トロッコ問題に正解は無い。人の作るものに絶対的な正しさはない。
むずかしいなあ~~

4.おまけ

標的となったスタジアムの規模はわからないが、ハイジャックが判明してからコッホ少佐のハイジャック機撃墜まで50分以上あったのだから、スタジアムにいる人たちを避難させる時間は十分にあったと考えられる。
避難できていれば、ハイジャック機の乗客の生死は変わらずともコッホ少佐が手を汚すことなどなかったのでは?
標的は最初から明らかだった。その判断をしなかったのは国防大臣だろう。
ラートケ中将は国防大臣にハイジャック機の撃墜を進言し、国防大臣はこれを却下している。
却下するならスタジアムから避難させろよ。
おそらく国防大臣は連邦憲法裁判所の判断に則って立場上却下せざるを得なかったのだ。そして、コッホ少佐が164人を乗せた飛行機を撃墜することをわかっていながら見逃した。
最も責められるべきはこの国防大臣で、こいつこそ有罪だろ。

もちろん一番悪いのはテロリストだけど。

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