或る蟻の群像

我が家にが大量発生している。
夏もそろそろ終わろうかというこのタイミングで、ヤツらの業界は繁忙期を迎えようとしている。

何年か前にも、同じ様に湧いて出た蟻とシェアハウス状態になっていた事があり、その際にはアリメツという最終兵器を駆使し、退居して頂いた。
そこから数年顔を見ていないので、てっきり絶滅に追い込んだのだと思っていたが、結果から鑑みるにウチの地下でずっと息を潜めていたのであろう。
謎の蜜百均のガムテープによってほとんど壊滅させられた惨状を、生き残って地下に伝えた先祖から数世代。蟻達の中ではこの戦いはまだ終わっていなかった。
以前アリメツに頼った時の残りが普通に9割以上残っていたため、今回も数滴垂らして放置してみた。

前回の教訓もクソも無く、蟻達は大挙して押し寄せアリメツに集まった。

歴史は繰り返す。
残念ながら今の世代に、言い伝えられた惨劇はリアルに響かなかったのだ。
どこか他人事の様相で聞き流していた若い蟻達。
それは自分の身にいつ降り掛かってもおかしく無い悲劇だと、薄れゆく意識の中で理解したかもしれない。
でももう遅い、もう遅いよ
今回も生きて帰った蟻は後の世代に伝えるだろう、二度とこんな結末を繰り返さない様に。仲間の死を無駄にしない様に。
涙を流しながら語り聞かせても、子供達は老人の話なんか興味ないんだろう。隣の友達と戯れ合って聞きゃしないんだ。
それでもいつか解ってもらえる。そう信じて、老人は今日も語り続ける。

どうでもいいけどアリメツがまだ9割以上残っている。
コスパどうなってんの。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?