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雨と一人暮らし


 先走って訪れた梅雨の兆し。一面を覆う暗雲に途切れ目は無く、今日一日のポジティブな希望はおよそ見出すことはできない。微弱な風に舞う粒の細かい雨は、まさしく「湿っぽい」という言葉の体現者である。
 閉め切ったレースカーテンを透過する曇り色の光は、薄暗い部屋の寂しさを助長させている。アスファルトや屋根を打ち付ける雨音はより一層、その孤独を際立たせた。
 雨は嫌いではない。いや、なんなら好きだ。何故ならこの雨音や薄暗さ、どことなく物憂げな街の雰囲気に風情を感じ取れるからだ。まあ簡潔に言えば「落ち着く」ということ。この天気は私にとって、勉強や作業を進めるにはうってつけという訳である。そうは言っても、一人暮らしをするなら孤独という物は影の様に付き纏ってくる訳だが。
 
 しかし、これは私にとっては問題とならない。私にとって孤独も寂しさも結局のところエッセイをより引き立たせる為のスパイスとしかならず、それ以上も以下も存在しない。なんなら悠々自適な一人暮らしを送ることができてとても満足している。
 元々一人の時間が好きなのだ。誰かに気を遣う必要もないし、何を始めるにしても終わらせるにしても、全ての裁量と実権は私が握っている。何より縛られないという事の自由感や開放感が、私には堪らなく愛おしく思えるのだ。こんな雨の日なら、尚更の事。
 だからこそ、今日という日を忘れない様に、いつでも味わえる様に、まるでそれらをすぐさま連想できる様に。私の語彙を振り絞り、今日の情緒をエッセイとしてここに書き残す。
 全く、文字が奇跡とはよく言ったものである。

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