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死の価値観

 死んだら真っ暗だと人は言うが、何故死んだのに、真っ暗と認識しているだろうか。それは死んでいないのではないか。そもそも何故、暗闇や真っ黒にこだわるのか?白ではいけないのか?赤や緑や青ではダメなのか?何もない空虚を負のイメージで暗闇だと喩えたのは、死よりも先の死を恐れている人ではないか。
 やむを得ない話ではある。未だに世界中で憶測が飛び交って、死という永遠のテーマに人は囚われ続けている。それは当然、誰も死を知ることができないからだ。
 正直な話、私はとても死の先が知りたい。死の恐怖よりも、知的好奇心が勝る。この世界において死ねない理由とは医療技術の発達や栄養状態の向上など様々だが、一番は私が死ぬことに悲しむ人がいるからだ。それも一人二人の次元じゃなく、とても大勢が悲しむと、確信している。私は私の為に悲しい思いをしてほしくはない。私にとって死ねない理由とは、ただそれだけなのだ。
 カントには私の願いを叶わぬものだと切り捨てられたが、それは生きている上での問題であり、死ねば話は別だ。ただ口惜しいことに、死んでしまうと死を知ってもその時には死んでいる為、誰かにそれを伝えることはできない。
 つまり死とは、この世界で最も強力な「口外厳禁」なのである。まあ当然な話だが。

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