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不甲斐なさに泣く


 苦しい、苦しい、苦しい——


 ただひたすらにそんな感情が渦巻いており、はらわたが煮えくりかえるとはまさにこのことだ。ただただムシャクシャする。ひたすらにイライラする。温厚と自負する私でも、この不甲斐なさに目を瞑ることはできない。そんな行き場のない怒りと、一介のやるせなさが私の足首を掴んで、ずっと離してはくれないのだ。
 いや、それもそのはずだ。何故なら自分が招いた結果だ。自分で選んで、起こした悲劇だ。後悔なんて、そんなの卑怯だ。足りなさを嘆いて、不甲斐なさに喘いで、それでもただこの現実とは向き合わなければならない。逃げれるなら逃げているが、それが許されないからこそ現実なのだ。
 だが、今の私はそんなこと知らない。聞く耳を持たない。後悔ばかりだ。現実と向き合えば向き合うほど、猛烈に苦しくて悔しくて、仕方がないのだ。それこそ叫び出したいくらいに。
 そう、今も私に突きつけるように視界に入ってくるスマホのフィルムの気泡が————。

 だって、1700円もしたのだ。相応の覚悟を持って臨んだはずだ。なのに彼は私に応えず、代わりに気泡という名のアンサーを私に寄越しやがった。ふざけるな。
ああ、いやだ。苦しい。思い返すと謎の感情が込み上がってくる。
 いや、待て。本質を履き違えるなよ私。フィルムは悪くないだろう。結局お前が足りないだけだ。お前が不甲斐ないだけだ。ただそれだけで、ほかに理由を求めるのはその弱さ故だ。そう分かってるはずなのに、後ろ髪が引かれるのは何故か。
 そもそも私はこんな神経質で繊細な作業は嫌いなんだ。ほこりは取っても取ってもくっついてくるし、最善を見計らったとて気泡になってるし。なんなんだ。
 いや、やめようもう。いや、やめれない。いや、やめなきゃだめだ。前を向かなくては。今日はゆっくり寝よう。いっぱい寝て、晴れやかに明日を迎えよう。でもそんなに寝ても晴れやかに朝迎えてもフィルムは気泡と埃だらけだが?は?

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