自分の奇蹟を見つける『観音経 奇蹟の経典』
「むかし出した本をまたつくってくれて有難うね。元気だったらちょびっと直したいところあるけど、うれしいです。40代だったころの本だけど、けっこう上手にかけているよね」
……そんな声が聞こえてきます。
昨年3月半ば、6月に刊行予定の『ひろさちや仏教名作選③仏の世界と輪廻の世界』の校正と「復刊のまえがき」を郵便で受け取った(いつもはご自宅にお邪魔して拝受した)。ほどなくお電話をいただいた。本書の巻末、「解説 復刊に寄せて――ひろさちや氏のこと」に松平實胤さんが書かれていることと同じように、「がんが進行していて、明日か明後日死ぬと思います、いろいろお世話様でした」と話された。僕は「またご冗談を。次は『観音経 奇蹟の経典』をつくります。校正とあとがきをお願いしますから」となんだかうわの空で言った。
2019年11月23日、福島県の旧知の寺院で行われる先生の講演会に同行した。講演会の前夜、先生ご夫妻とわが友である副住職とその知人2人、都合6人で夕食をともにした。先生は小グラスに一杯地酒をいただいていたと記憶する。楽しいひとときだった。僕がラグビー好きだというと「わたしも高校の時ラグビーやってたんだ、スクラムハーフでした」と仰っていた。先生の母校、大阪府立北野高校は年末年始恒例の全国大会(花園)6回出場の名門。「スクラムハーフって素早くて判断力がある頭脳的な人が多いんですよね」と話したような……。
本書の終章「再び、奇蹟とはなにか……」の終りの方にこう書かれている。
僕も「僕の奇蹟」を探り、こころに念じていきたい。
担当編集 K
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『観音経 奇蹟の経典』ひろさちや・著
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内容紹介
1982年(昭和57年)に大蔵出版から刊行されたもの。復刊シリーズ「ひろさちや仏教名作選1~3」と並ぶ、これも名著復刊といっていい。『観音経』は、「諸経の王」と呼ばれる『法華経』の一部『妙法蓮華経』の第二十五品(第二十五章)、「観世音菩薩普門品」をとりだして独立させたもの。釈尊が、観音さまの名前のゆえんを説明し、観音さまがわれわれ衆生をそのさまざまな苦難から救ってくださり、また衆生救済の方便のために観音さまが三十三の変化身をとられることを解き明かしている経典。『般若心経』と並んで広く親しまれている『観音経』が、筆者の手にかかると見ごとに現代に生き返り、無類の面白さと深い真理の世界を見せる。ペーソスあふれる文体は他書とともにいつまでも新鮮。『観音経』理解のための絶好の入門書とも言え、仏教ファンにとって垂涎の一冊となろう。
ひろさちや
一九三六年(昭和十一年)、大阪市に生まれる。東京大学文学部印度哲学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程修了。一九六五年から二十年間、気象大学校教授をつとめる。退職後、仏教をはじめとする宗教の解説書から、仏教的な生き方を綴るエッセイまで幅広く執筆するとともに、全国各地で講演活動をおこなう。厖大かつ多様で難解な仏教の教えを、逆説やユーモアを駆使して表現される筆致や語り口は、年齢・性別を超えて好評を博する。二〇二二年(令和四年)、逝去。
おもな著書に、『仏教の歴史(全十巻)』『釈迦』『仏陀』『大乗仏教の真実』『ひろさちやのいきいき人生(全五巻)』(以上春秋社)、『お念仏とは何か』『禅がわかる本』(以上新潮選書)、『生き方、ちょっと変えてみよう』『のんびり、ゆったり、ほどほどに』『インド仏教思想史(上下巻)』『〈法華経〉の世界』『法華経日本語訳』『〈法華経〉の真実』(以上佼成出版社)などがある。
(※略歴は刊行時のものです)
【目次】
まえがき
序 章 仏教において奇蹟とはなにか
第一章 その時、あなたは……
第二章 七つの災難
第三章 わが心のうちなる三毒
第四章 性を超越した存在
第五章 無功徳なる功徳
第六章 無限の姿とかたちをとる観音さま
第七章 浄らかなる布施
第八章 詩による応答
終 章 再び、奇蹟とはなにか……
原 文 妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五
解説 復刊に寄せて──ひろさちや氏のこと(松平實胤)
ISBN:9784333028863
出版社:佼成出版社
発売日:2023/02/28