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根気のよさが才を磨く(鉄杵を磨く)

 改めて言うまでもないことだが、分野のいかんを問わず成功者はすべて根気がよい。芸術家も科学者もスポーツ選手も事業家も、名を成した人は一事に徹底して打ちこんでいる。

 プロ野球界の至宝・王貞治が、努力の人であったことはよく知られている。彼は現役中、常に現状に満足せず、衰えるのを恐れ、どこにいてもバットの素振りを忘れなかった。彼の泊る宿の畳はそのためにボロボロにすり切れたといわれる。

 また、明治維新の実質的なプロデューサーであった勝海舟は、剣・禅・蘭学に常軌を逸する精進をしている。和蘭辞典「ズーフハルマ」を買う金がないので、人に借りて一年間に二部筆写した。一部五十八巻を二部手書きする根気には恐れいる。

 中国唐を代表する大詩人・李白も、努力してこそあれだけになれた。李白が少年の頃、勉強がイヤになり途中で投げ出して帰ってくると、道端で鉄の杵をこすっている老婆に出会った。「何をしているの?」と聞くと、「針を作るのじゃよ」と答えた。いったい何年かかることかあきれると同時に李白は自分の根気のなさに気づき、勉強するために戻ったという。

『道に一嫗鉄杵を磨くに会う。白之を問う。嫗曰く、鍼を作らんと欲すと。白其の言に感じ、遂に還り業を卒う』(唐書・文苑伝)。根気のよいことを「鉄杵を磨く」という。

『ビジネス戦略を支える 中国名言の智慧』(窪島一系)より

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中国名言の知恵 表紙画像(127×188ミリ) (2)

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