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新刊『坐らぬ禅』禅は阿呆になれ!

本書に出てくるこんなジョーク、大好き。

アメリカ人が日本に来て、禅僧になりました。師匠は彼に僧名を与えようとします。
「おまえは、どういう名前が好きか?」
「わたしは一休さんが大好きです。だから〝一休〟にしてください」
「しかしな、やはり〝一休〟にはできん。じゃあ〝二休〟にしてやろう」
「サンキュー」

ひろさちや『坐らぬ禅』本文より

直筆原稿用紙に「2021.11.25」とあります。書き終えた日付のようです。

一昨年、先生宅にうかがったおりに「禅の本を書きすすめているの、ちょっとユニークなものになりますよ」と話されていた。「それはぜひ当社に下さい、他の版元には打診しないで」と申し述べていたが、そのうちに病状が悪化、「祖師を生きる」シリーズや「名作選」の筆者校正などもあり進展の様子は聞くことがなく没せられた。ところが昨年秋、ご自宅を訪問。「父の残した原稿をお預けします、仕事場を整理する際に集めたものです」とのこと…

「禅の世界への案内書は、むしろ禅の世界の住人が書いたものより、わたしのような禅の素人が書いたもののほうが分かりやすく、役に立つと思います。(中略)生活そのものが禅なんです。この点の詳しいことは本論で述べますが、したがってわたしたちが食べる行為も禅であり、読書をするのも禅であり、糞をするのも禅であります。ただ禅寺に行って坐禅をすることだけが禅ではないのです。(中略)禅のテクニックだけではダメなんです。わたしたちが禅を学ぶのは、この苦しみの人生をどう生きればよいか、その示唆を得るためですよね。わたしはそう考えます」

ひろさちや『坐らぬ禅』本文より

「まえがき」を読んだ瞬間「ピンッ」ときました、大げさでなく気づいたら生原稿を打ち込み始めていた。こんな体験、けっこう長いことこの仕事しているけれどあまりありません。

高みから講釈する「禅の達人」ではない「禅の素人」の筆者が遺した

禅は、馬鹿になるな! 阿呆になれ! と教えています」

というメッセージに学びたい。「第Ⅱ部 禅僧列伝」の、語録・著作の真髄を嚙み砕いての訳と解説は読みごたえあります。「ひろ流高僧伝」と言えましょう。

まもなく一周忌(4月7日)、好奇心を持ち続け、洒脱に生きたひろ先生(阪神タイガースラブであった)を思い出しながらWBCをテレビ観戦します!

担当編集:K

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坐らぬ禅
ひろさちや・著 ¥1,980(税込)
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商品紹介
没後仕事場からみつかった「絶筆」作品。本書は「禅の世界へ案内するガイド・ブック(案内書)。禅の世界への案内書は、むしろ禅の世界の住人が書いたものより、わたしのような禅の素人が書いたもののほうが分かりやすく、役に立つと思います」といったスタンスで展開する。
高みから講釈する「禅の達人」ではない「禅の素人」の筆者が遺した「禅は、馬鹿になるな! 阿呆になれ! と教えています」というメッセージに学びたい。「第Ⅱ部 禅僧列伝」における、語録・著作の真髄を嚙み砕いての訳と解説は読みごたえあり、「ひろ流高僧伝」と言えよう。

ひろさちや
一九三六年(昭和十一年)、大阪市に生まれる。東京大学文学部印度哲学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程修了。一九六五年から二十年間、気象大学校教授をつとめる。退職後、仏教をはじめとする宗教の解説書から、仏教的な生き方を綴るエッセイまで幅広く執筆するとともに、全国各地で講演活動をおこなう。厖大かつ多様で難解な仏教の教えを、逆説やユーモアを駆使して表現される筆致や語り口は、年齢・性別を超えて好評を博する。二〇二二年(令和四年)、逝去。
おもな著書に、『仏教の歴史(全十巻)』『釈迦』『仏陀』『大乗仏教の真実』『ひろさちやのいきいき人生(全五巻)』(以上春秋社)、『お念仏とは何か』『禅がわかる本』(以上新潮選書)、『生き方、ちょっと変えてみよう』『のんびり、ゆったり、ほどほどに』『インド仏教思想史(上下巻)』『〈法華経〉の世界』『法華経日本語訳』『〈法華経〉の真実』(以上佼成出版社)などがある。
(※略歴は刊行時のものです)

【目次】
まえがき
第Ⅰ部 禅仏教とは何か?
第Ⅱ部 禅僧列伝
第Ⅲ部 終りと始め

ISBN:9784333028979
出版社:佼成出版社
発売日:2023/03/15