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Happy egg time! 【短編創作】

3回目のデートも終盤、あとは川沿いの夜景が綺麗なベンチに誘って、告白して、OKをもらうだけだ。1回目の時ほど緊張もせず、ふたりの時間を楽しむ余裕すらあった。今日はうまく行ったし、今からだって決めてやるんだ。マサトはタマコとのこれからに思いを馳せ、1人勇ましい表情をしていた。が…。

「ごめんなさい!」

顔を赤くしたタマコから、振り絞ったように出た言葉は表情とは裏腹だった。真意なのか疑うほどに。

「あ、あの、今だって、『なんで?』って思ってるでしょ?」

「う、うん」


1回目のデートは放課後に街のカフェに行った。
最近インスタで流行りの可愛い猫のラテアートが飲めるというので、塾の前ならちょうどいいなという彼女をそこに誘ったのである。

「可愛いね…!飲むのもったいないね!」

と、微笑む彼女が可愛かったのを忘れられない。別れるのが惜しくて、遠慮する彼女を塾まで送った。

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2回目はテストが終わった日、彼女もお昼ご飯を持ってきていないとのことだったのでマクドナルドに行った。
彼女が別々で会計しようとしたから、一緒に頼もうと言ったら、彼女はフィレオフィッシュを頼んでいた。

「なんかこういうの、青春って感じでいいよね!デートでファミレスが嫌だってバズってたりしたけど、まだ高校生だし、私はそっちの方がときめいちゃうかも」

なんて言ってくれたし、かなり長くおしゃべりもできて、大成功だと思った。とても楽しかった。

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そして今日、いよいよメインイベント。休日デートだった。15:00に待ち合わせをして、映画を見て、感想を話しながらサイゼリヤで夜ご飯を食べた。本当はカジュアルでお洒落なお店もいいなと思っていたけど、前回の彼女のひとこともあったので、店の前で「どうする?」と聞いたら「いいね!食べたい!」と乗ってくれた。
それぞれパスタとドリアを頼んで、シーザーサラダを半分こすることになり、マサトは進んで取り分けた。

「『こういうのを女の子がやらないと』みたいな風潮あるじゃん?俺ああいうの好きじゃないんだよね!美味しく食べてほしいし!」

「そ、そうなんだ」


確かにこの時、マサトのカッコつけは虚しく空振っていたような気も、思い返せばするものだが…。

「俺、なんか変なこと言ったりしたかな…」

「いや、言ったっていうか…」

「…サラダのときのやつ?なんかその…女性目線的に引っかかったり…」

「い、いや?あれは、別に…」

「じゃあ何で…単純にタイプじゃないとか…全然!なら仕方ないし…!」

マサトがヘラヘラとわかりやすく落ち込んだ様子を見せたのに被せるように、タマコは一層、顔を赤くして振り絞った。

「ハッピーたまごタイム!!!!!!」

「…え?」

「あ、あ、あと、たい焼き以外の顔がついてる食べ物を食べるのが怖くて、マックのハッピーセットのおもちゃが欲しかったけど、恥ずかしくて一緒に頼みづらくて…」

「そ、そんなことなら言ってくれれば…。付き合ったらちゃんとするし…!」

「ごめんなさい!せっかくいっぱい遊んでくれたのに…その…期待されてた答えが出せなくて…。じゃあ、帰るね!ごめんね!」

タマコは絞り切った勢いでブンと走り去った。

「ハッピーたまごタイム………」

マサトはそれが何なのか、よくわからないまま、しばらくそこに立ち尽くした。よくわからないのだが、シーザーサラダの真ん中で、遠慮なくまっぷたつに割れた半熟卵の下へと沈んだ黄身が、彼にドロリとのしかかって、景色が黄色く曇って見えた。


※たぶん現在サイゼリヤのメニューに卵の乗ったシーザーサラダはありません!

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