そこに在るのに此処に無いもの【詩】


涙の色

今が辛いと君は言って
涙を流した
涙の色は無色透明だった

今が苦しいと君は言った
心が泣いた
涙は流れなかった

夕焼け空の下で君は笑った
はにかんで
涙の色は見えなかった

石段を一つ多く飛び越えて君はいった
またね
涙はもうそこに無かった

取り残されたこの世界
暗い夜空に
涙の色は無色透明だった


涙の名前をください

涙に色をください
「喜び」の色を

涙に色をください
「怒り」の色を

涙に色をください
「幸せ」の色を

涙に色をください
「絶望」の色を

涙に色をください
「思い出」の色を

涙に色をください
「過去」の色を

涙に色をください
「悲しみ」の色を

涙に色をください
「愛」の色を

涙に色を色を色を色を…ください

無色透明なこの涙たちに

「名前をください」

                                                                       古城零音

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