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カルタマリナという斬新じゃないゲームをつくった理由。

2作目の方針

どーも、YUTRIOのゆーせーです。今回はTWOROOMSに続く2作目をつくる時に、意識したことについて書いていきます。

本題に入る前に少しお知らせをさせてください。この度YUTRIOがゲムマライブ2021の「ボードゲームヒーローズ」という企画をやらせていただくことになりました!Kickstarter上で実際に1本のボードゲーム企画を立ち上げて、それを48時間でブラッシュアップしていくのを配信するという恐ろしい企画です!!皆様の助けが必要ですので、ぜひ助けに来てください!!

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まずは、2作目をつくる時に最初に決めたことです。2020秋ゲムマ(TWOROOMSを販売したゲムマ)が終わり、次回作の制作に取り掛かる時に自分の感情と優先順位を整理しました。

①期待されている2作目で失敗したくない
②TWOROOMSだけの一発屋になりたくない
③TWOROOMSでは諦めてしまった部分に挑戦したい
④ゲーム制作を今後も続けていきたい
⑤多くのひとに手に取ってもらえるゲームの要素は何なのか、データを取りたい

ざっとこんな感じです。

①を解決することはそんなに難しくありません。2作目で失敗しない一番簡単な方法は、TWOROOMSみたいなゲームをつくることです。具体的には”ゲームシステムが斬新で世界観を作りこんだゲーム”です。もちろん失敗しないことを第一優先にするのであれば、このようなゲームを目指せばよいのですが、最も優先するべきは④ゲーム制作を今後も続けていくことです。そう考えた時にTWOROOMSのようなゲームを作ることは最善ではないと考えました。

例えばもし2作目でもTWOROOMSのようなゲームを作って発表した場合、YUTRIOは「斬新なゲームをつくるチームというイメージが付くと思います。そうすると3作目も4作目も常に「斬新さ」を求められ、それに応え続けることが難しくなっていきます(つまりゲーム制作の継続性がないので④を叶えられないです)。また、自分自身が思う「良いゲーム、作りたいゲーム」も必ずしも斬新な必要があるとは思っていないので、目先の失敗を恐れて「斬新なゲームをつくるチームというイメージをつけてしまうのは得策ではないと判断しました。

少し回りくどく書いてしまったので結論をまとめると、「システムが斬新なゲームをつくるチーム」というイメージをつけてしまうと、ゲーム制作の継続性がなくなるので、2作目は「斬新じゃないゲーム」でヒット作を目指そう!ということです。

斬新さとは

ここで少し僕が思う「斬新さ」について補足していきます。斬新さとは、今までに世の中に出たボードゲームと比較して判断される似ている度合いのことだと思っています。システムが似ている、プレイしたときの感情の動きが似ているなど、何が似ているかは色々あると思いますが、大きく「体験が似ている度合い」=「斬新さ」ではないかなと思っています。

また、僕が思う斬新か斬新じゃないかというのは、○か×かではなく白と黒の中のグラデーション的な変化だと捉えています。全く斬新なゲームなどは存在せず、逆に全く斬新じゃないゲームも存在しないと思います。なので前の章で結論として出した「斬新じゃないゲーム」というのも、グレーの中で黒よりのグレー、みたいな話だと思っていただけると相違がないと思います。

斬新さがなければ売れないのか

最初の章で書いたゲーム制作の継続性のほかに、⑤多くのひとに手に取ってもらえるゲームの要素は何なのかデータを取るためにも「斬新じゃないゲーム」をつくりました。つまり「斬新さがなければ売れないのか」という実験です。

この実験をするために、「ゲームシステムの斬新さ」以外はなるべくTWOROOMSと同じになるようにつくりました。2人用協力ゲームで世界観をつくりこみ、しっかり宣伝活動に時間を割く。これで全然売れなければ「斬新さは絶対に必要」という結論が出せます。(もしこの結果が出れば3作目の方針が立つわけです)

結論をもったいぶらずに書くとカルタマリナはゲムマ2日間で280個、小売店やBASEの通販を含めて440個ほど売れました。なので、実験結果としては「システムの斬新さがなくても440個くらいは売れる」となります。これは「斬新じゃなくてもゲームは売れる」という結果ではありません。おそらく「システムが斬新じゃないと500個くらいが売れる限界」という見方の方が正しいと思います。

またこれはカルタマリナを販売した後に気が付いたことなのですが、TWOROOMSの時と違い「じわじわ売れ続ける」というのが少ないです。やはりこれは「斬新なゲーム」のほうが強いところだと思います。

カルタマリナの魅力

ここまで散々カルタマリナを「斬新じゃないゲーム」と書いてきましたが、僕はTWOROOMSよりもカルタマリナの方が好きです。実際自分の作品に対する評価としても、TWOROOMSが78点で、カルタマリナが84点くらいです。ゲームをつくる上でカルタマリナの目指した場所とその魅力について簡単に紹介させてください。

カルタマリナが目指した場所は大きく分けて以下の二つです。
①2人でわいわい楽しめる協力戦略ゲームの定番作品
②パンデミックの魅力をライトにコンパクトに楽しめる作品

①はTWOROOMSをつくって強く思ったことです。Twitterにも少し書いたのですが、「2人用協力ゲーム」というものにおける奉行問題はある程度無視しても良いのではというのが最近の僕の考えです。TWOROOMSの「交互に目を閉じる」は絶対に奉行させないという強い気持ちから生まれたシステムでもあるのですが、果たしてそれが絶対的な正義なのかと。これはデザイナーのエゴであって、実際2人で協力ゲームを遊ぶときは、気軽に相談できるゲームの方が望まれているのではとも思ったわけです。なのでカルタマリナでは「わいわい楽しめる」という部分も強く意識しました。

②は書いてある通りです。カルタマリナはパンデミックの魅力を2人でライトに楽しめるようにつくっていきました。そして簡素になりすぎないように、カルタマリナならではの仕組みも含まれています。簡単に具体的な個所に触れていきます。

ライトにした部分
・エリアが48カ所から9カ所に
・山札を2つから1つに
・アクション数を4から3に
・アクションの選択肢を8個から5個に
・イベントカードの廃止

こうやって列挙するとかなりライトになっているのが伝わると思います。特にエリア数が9カ所、山札1つで成立するように組めたのが大きかったと思います。

カルタマリナならではの仕組み
・リソースカードのリシャッフル
・リソースカードの除外
・エリアの状況変化
・ダイスによるキューブの移動
・航路による選択
・プレイヤーの死

これらを採用することでライトにスケールを縮小しながらも、しっかりやりごたえのあるゲームに仕上がったと思っています。特に航路を設けることで、集めるカードに順番が生まれたり、航路取りを考えながら進めていく要素が生まれたのは非常に良かったと思っています。(クリアできなくてもどれくらい惜しかったのか距離で可視化される点も気に入ってます。)

なぜそれらのシステムにたどり着いたのかなど、ゲームデザインの話までしてしまうと終わらなくなってしまうので、その辺は需要があればまた別の機会に書きます。

まとめに入ると、カルタマリナは「斬新さ」は意図的に取り除いたけど、ゲームとしては完成度も高く超自信作です!って話でした。

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今後のゲーム制作

もちろんYUTRIOは今後もゲーム制作を続けていきますし、2021秋ゲムマがあれば新作も出すと思います。まだどんなゲームをつくるかはわかりませんが、今回とれたデータをもとに皆さんの期待に応えて予想を裏切るようなゲームをお届けできればと思います。

こんな風に不定期にてボードゲームにまつわる文章を書いていきたいと思います。もしこの記事が面白ければ下記から僕にお小遣いで100円ください。ハイボールとかに使います。それではまた次の記事でお会いしましょう。

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