”大谷さん”というコンテンツ〜スポーツツーリズムを考える
#わたしの旅行記 #ドジャーズ #アメリカ西海岸 #大谷さん #大谷翔平 #観光学
観光とは地域にあるコンテンツをサービス化して顧客に満足のいくように提供するビジネスであり、その満足に対する対価が求められるものである。
このブログはわたし自身が実際に体験した、旅や食を”観光学”という視点から紐解いていきたい。
第二回目は”大谷さん”である。誰がいつからかXX選手とか、フルネームを呼び捨てで言うことを禁じてしまった、日本が誇る最強のスポーツツーリズムのコンテンツと言える。
1.出張で西海岸に行くことになった!
ビジネス出張で西海岸に行くことが決まった。2024年4月某日からの出発で、週末がかかる。駐在員から、SonomaとかNapaとか行って、ワインの試飲ツアーなどどうだろうと提案が来た。
私以外にご同行した方は、どなたもアメリカ出張は慣れており、ワイナリーもいいけれど、そりゃ今回はドジャーズ戦でしょう!意見が一致。試合がその日にロスのドジャーズスタジアムであるかどうかもわからないのに、あったとしてもチケットが取れるかどうかわからないのに(笑)
慌てたのは、駐在員。そもそも駐在員自体が、ロスのダウンタウンに滅多に行かない。(後述するが、治安が悪過ぎる!)大谷さんがドジャーズに移籍したこと、更にはその後を追うように山本投手が加わったため、更にチケットを取るのが難しくなったようなのだ。
私が駐在員だったら、この時点できっちり年間シート押さえて、顧客向けに、準備するよなぁ、と思いつつ、返信を待っていると、「最高の席ではないが、なんとか人数分取れました!」との朗報が入る。やった〜!
2.西海岸の盛衰
昔からロスのダウンタウンは治安が良くないと言われていて、円が高かった頃は、日本人の駐在員はレドンドビーチとか、ランチョパロスベルデス(ちょっとしたロスの郊外の半島で、タイガーウッズが交通事故を起こしたことで有名になった場所)などに暮らしていた。今やそれさえも危なく、富裕層のドーナツ化現象(どんどん郊外に流れていくこと)は進んでいる。
大谷さんが、アナハイムのエンジェルスにいた時お住まいになっていたと言われる、ニューポートビーチ。写真にあるように、大型の2桁億円くらいのクルーザーがびっしりと並んでいる。夕刻になるとそのクルーザーの上で、少人数のパーティが催されていて、日本にもそのような光景は一部にはあるものの、アメリカの豊かさを感じる瞬間である。
一方ポパイ世代が憧れた、サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフは、コロナ禍を経て、多くの飲食店が閉鎖に追い込まれ、そのシャビーさは、余りにも悲しい。
ロスも、アナハイムよりも更に南に下ったオレンジカウンティが今や安全を重んじる日本人駐在員のメイン居住地になっている。警察官と、犯罪の数が合わず、100ドルを超えない窃盗は、無罪放免になる、という条例ができてから、益々ダウンタウンのスーパーマーケットは荒れて、『怖い」と言うのである。
これを書いているこの時点で、バイデン氏が出馬を諦め、「もしトラ」が「ほぼトラ」になりそうな現在、益々、貧富の差と、それに伴う分断は大きくなるに違いない。
3.それでも多くの日本人が押しかけるスタジアム
ロスのダウンタウンにあるリトル東京は”アニオタ”の聖地と化しているから、ある意味安全ではあるが、それ以外はかなり酷い荒れ方をしている。青いビニールシート(かつての上野公園周辺のような)で囲いを作り、そこで暮らす人々、そこに炊き出しの屋台が並び、まるでバンコックの細い路地のような様相だ。それが長く道に沿って続いている。私は、現地駐在員のフルサイズSUVで、しっかりロックをして走り抜けたが、駐在員曰く、一本路地を間違えると本当に怖いとのこと。
アメリカは何でも、特典をつけるのが好きだから、駐車場も、事前に申し込みを行うと、球場の手前の駐車場に案内してもらえる。当日で予約がないと、きっと2キロくらいは歩かされそうな距離にある駐車場になる。
ではプライベートで行く場合はどのように行くのか?
日本人観戦客の動線を見ていると、どうやら大型の観光バスで各ホテルを周遊しピックアップし、帰りも各ホテルを回り降ろしていくようだ。これが一番安全かもしれない。自分で単独で行くにしろ、Uberを使うにしろ、きっちり道や車を選ぶ必要があると思う。安全が担保されなければ、楽しいことすらも、翳りが出てしまうからだ。、
4.ドジャーズスタジアムという魔物
オリンピックには魔物が住んでいるという話ではない。スタジアム自身はアメリカサイズで、カリフォルニアの青い空の元、本当に気持ちが良いのだが、まず、球場に入るには手荷物は一切合切NGである。これを知らずに、球場入り口まできて、更に荷物を車に置きに戻ったりしたら、しかもその駐車場が遠いときたら、絶望的である。ましてや大谷さんは現在は1番バッター。大変な見逃しになってしまう。もし、荷物を持ち込みたい場合には、透明の専用のビニールバッグか或いは、透明のナップサック(球場の中にも売ってはいるが)に入れなければならない。これは第一の関門だ。ましてや「電子タバコ」などとんでもない!爆発物として没収され、捨てられてしまう。これが第一関門。
そして第二関門は、入った途端、買い物熱が湧き上がり、大谷さんのユニフォーム(私が行った時には、Mサイズが売り切れ。日本人男性にとってこのサイズが最も売れ筋だと思われる)Sサイズを2枚、ドジャーズのシール、キャップとサンバイザーを1つずつ、買ってなんと700ドル近く!!!最初は為替を考え計算していたのだが、そんなに何度も来ることはあるまいと、タガが外れた(笑)え〜こんなにすぐに大量に買って〜と私を見て呆れた人たちも結局は同額程度、別のショップでこっそり買っていた(笑)
冷静に考えると、これは球場で消費する額ではない!更にGrilled Dodgers Dog,8ドル、そしてヘルメットナチョス(トルティーヤに肉、とろけるチーズをかけたもの。この拙文の冒頭にある青いヘルメットに入ってくる)12ドル位、そしてお決まりのビールと考えたら、まあ呆れるほど凄い消費をしているのだ。では特別に美味しいかというと、う〜〜〜む、特にナチョスは冷えたら食べられたものではない。しかしながら、どうしてもヘルメットを持ち帰りたかったので無理矢理、皆で強制食事とあいなった。
また、これらの食事を売っているフロアが微妙に異なり、しかもたかが2階席であっても、登る階段数は多い。これも強制労働である。しかしながら、杖をつきながらのお年寄りや、日本人の2倍はあろうかというヒスパニック系のかなりふくよかな方でさえ、登っているのである、息を切らしながら。はてさて、どこにエレベータがあるのか分からずじまい。ホットドッグにマスタード入れ忘れでもしたら、この往復で多分1日の歩数分は稼げるかもしれない。
5. さて試合は?
偶然ではあるが、私の観た試合は、山本先発、大谷DHで、こればかりは1週間でもいれば違うものの、運が良かったとしか言いようがない。山本投手は負け投手にはならずにすんだものの、大谷さんのヒットと盗塁を見させていただき、結果は負けたものの、満足のいくものであった。
シートの値段はそれぞれではあるものの、この広いグッズ売り場で一体一日の売り上げ単価はどのくらいになるのか?そして原価もきっとそんなに高いものであるわけではないので、粗利は相当なものだと思われる。
たった一人の大スター選手がいるだけで、放映権料、CM料(球団側は必ずコミッションを取る)、こんな普通の私でさえ、ありゃまぁのお買い物総額、観戦そのものを目的としてきている方々を考えればその交通費、宿泊代も含めて一人当たりの観光消費額は相当なものとなる。
6.まとめます
そう、二刀流を許した球団が、この恩恵に預かっている。天才というのは一見あり得ないことをする人々だ。スポーツ界も同様であろう。一人の天才を潰すことなく、型にはめることなく、のびのびとやらせる環境をどのように整えるかで、人々の行動と購買意欲は変わってくる。
日本は型にはめようとしていないか?イノベーションの機会を観光という分野で生かそうとしていないか?
たかがスポーツ、されどスポーツツーリズムである。
インバウンドの数では圧倒的にフランスが世界一だが、アメリカは一人当たりの観光消費額が圧倒的な世界一である(2023年調べ)。
コンテンツをまとめあげ、一つのエコシステムにすること。この視点は「こと消費」と言われる今日の大事な一面である。
追記)試合終了後の人の押し出しの仕方はさすがロジスティックに長けている、アメリカだと感じ入った。そう人流にも車流にもどこにも渋滞は出なかったのである。
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