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サトシさんとピカチュウと私たちの旅


 私は尊敬と親しみをこめて、アニメ「ポケットモンスター」の主人公を「サトシさん」と呼んでいる。1994年生まれの私にとって、「ポケモン」なしでは自分の人生を振り返られないほど、身近なものだった。

 5才上の兄の影響で、私が「ポケモン」を好きになったのは、物心がつく前のこと。3歳の頃には、大好きなピカチュウの着ぐるみを身にまとって、自宅の庭で遊ぶ様子や家族と旅行へ出かけた写真が残っていて、幼稚園の夏祭りでは自作のピカチュウのお面をかぶった。小学生になると、サトシさんが初めてポケモンリーグに挑むもリザードンが言うことを聞かない歯がゆい回をVHSに録画して何度も、何度も観た。放課後には友人3人と川辺に集まり、ルビー・サファイアのゲーム対決に明け暮れ、漫画版も読み込んだ。

 大人になってからも「ポケモン」は大切な存在だった。特にコロナ禍では本当に支えてもらった。2020年4月、緊急事態宣言が発令された時、社会人になってから、激務だった私にとって、ずっと家にいるという環境は新鮮だったが、退屈でもあった。そんな時、Amazonプライムで「ポケモン」のアニメシリーズを見返した。「作画が好きじゃない」という先入観から嫌煙していた「サン&ムーン」を初めて見て、そのストーリーの面白さに驚いた。

 それまで旅をしてきたサトシさんが、始めてスクールライフを満喫するシリーズ。スクールという拠点をおいたことで、サトシさんだけでなく、カキ、スイレン、マオ、マーマネ、リーリエといったスクールメイトや主要キャラを多様に、丁寧に描き、シリーズを通してアローラ地方の過ごしやすい天気のような温かさに包まれている。特に好きな回は、しっかり者のマオが父親と気持ちがすれ違ってしまう「家出のマオとヤレユータン!」。ほかにも「アクジキング襲来!Zワザ大決戦!!」を観ると、サトシさんを始め主要キャラの成長を感じ、涙腺が崩壊。退屈しのぎで見始めたが、最後には「サン&ムーン」が終わってしまうことが悲しくなるほどだった。

自分の結婚式のウェルカムドール

 結婚式では、ピカチュウとヒトカゲのぬいぐるみでウェルカムドールを用意した。子供を出産する時、陣痛が始まっているのに「ピカチュウたんけんたい」をiPadで観て、助産師さんにドン引きされたこともあった。産後も私が小さい時に買ってもらったマリルのぬいぐるみが、子どもの遊び相手になってくれて、助かった。人生の楽しい時も、辛い時も、門出も、どんな時もポケモンはそばにいてくれた。

 そして、2023年3月24日。サトシさんが卒業した。心構えでいたつもりだったが、最終回は涙がにじむ。それでも、いつも一緒に横を歩いてくれたポケモンに感謝の思いを込めて、サトシさんの門出を見届けた。

 NEXT TIME …A NEW BEGINNING!

 サトシさんとピカチュウの旅は、まだまだ続く。サトシさんたちと歩んできた私たちの人生もまだまだ続く。続くったら続く。

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