拝啓
拝啓
秋風にのってどこからともなく金木犀の甘美な香りが漂ってくるようになりましたね。お元気にお過ごしのことと存じます。
さて、あなたがこの手紙を読んでいるということは、もう気が付いてしまったのですね。
どうやら困っているようですね。
私が初めに気づいたことですが、あなたも同じように気づいたようですね。少々遅い気がしますが、あなたらしいとも言えますね。
何かと嘘をついたり、ごまかしたりして「あれ」を避けようとしていますが、上手くいっていないみたいですね。
それにポーカーフェイスを気取っているあなたも「あれ」には逆らえないのですね。
それが少し面白いです。
それに、あなたはびっくりするぐらいに頭が固いのですね。
どうやってこれから過ごしたらよいのかわからないからと言って、そんなに小さくならなくても大丈夫ですよ。
そんなに虚勢を張らなくて大丈夫ですよ。
そんなに私を怖がらないでください。
私が変な事をやらかさないか始終見張らないでください。
確かに私が何かしたら失敗するかもしれません。
でも、何もしなかったら何も進みませんよ。
「私」が上手に行動するためにはあなたと私が一緒にいないといけないのですから。
私が少しでもあなたのお手伝いをするので、あなたはあなたなりに作戦を考えて、私を使って突き進んでください。
そういえば、この間はひどく言い争ってしまってごめんなさい。
あなたに気づいてほしかったのだけれども私としたことが、
というか私らしく まっすぐに言ってしまったみたいで、
あなたのことを考えていなかったわ。
これから、仲良く協力するためにこの花を手紙に添えました。
紫色のライラックです。
これからもお元気でいてください。
敬具
追伸
新しい色の口紅が欲しいのですが、どんな色がいいと思いますか?
感情は理性にそう手紙を出すと、好きなあの人への気持ちを膨らませながら、新しい色の口紅を探し始めた。
理性はその手紙を読んで、感情のあとを追って、もっと「私」に似合う色を教えに行った。
「私」は新しい口紅を買った。彼のことを考えながら。
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