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甘美な呪縛

昔の私は夢と妄想だった。
いつもどこでも私はお姫様で人魚姫で森に住む女の子で妖精だった。

少ししたら可愛いものとの違いが分かるようになって自分の顔をよく理解できた。
頭で考えているほどに可愛くもなくとても幼い女の子であることを理解した。お姫様は世の中を知った普通の女の子になった。

小学校に入れば人との違いが分かるようになった。そして好きな人の好みになることを覚えた。どうしたらあの子みたいになれるのか、見よう見まねで滑稽だった。普通の女の子は道化を覚えた。

中学校では…人の暗いところを知れるようになった。人として存在するもの全てに課される協調性とそれを違反した時の罰を知った。
そして人を好きになるという意味を知った。それは希望であり、喜びであり。そして呪縛であり束縛であった。
その人が私の全てになり元となる…私はその人に操られる人形だった。

今はどうだろうか…人形にならないように必死になって何も考えずにその人に浸るという誘惑から逃げようとしている。

それでも目が会う度に、姿を見かける度に私は甘美な呪縛を思い出す。

逃げ出そうとした人形はいつの日か人間になるだろう。甘美な呪縛を忘れるまでもう少し…


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