見出し画像

あの桜の木の下で ~fin~

最終回です! 全く読んでいない方はマガジンで一気見するのがおすすめです!冷雅と紅夜はどうなるのでしょうか(*´艸`*)

『愛しているらしい』
 そういわれ私(わたくし)はなぜ少し喜んでいたのだろうか。偽りの仮面をかぶっていることはわかっていた。でも相手に対する感情にまで偽りの仮面をつけていた。


仮面——仮面——仮面


 朔隼の顔を思いだそうとするたびに一部があやふやになる。
 仮面ばかりで本当の彼を見ていない。すべてが偽りだった。


 そして……自分が朔隼を殺したことをたびたび思いだす。自分がしなやかに蛇のように音もなく朔隼の背中を突き刺す。ドロッとした血が手を濡らす。そしてとどめのサーベル。ずっしりとした感触。顔に跳ね返ってきた生暖かい赤。朔隼の血が顔に触れていることに嫌悪は感じなかった。ただ何も感じなくなっただけだった。

 結局自分は何に怒って、何に戸惑っているのだろう。

 紅夜は寮のベッドから立ち上がった。今日は朔隼の部屋から出てきた文書についての発表がある日だ。


軍服をのろのろと着る。
誰かがノックしている。


「どなたですか?」
そして戸を開こうとした。しかし開かない。戸が壊れたとかそういう訳ではないらしい。反対側からも引かれているようなのだ。ふっと開くとすごい勢いで戸が開いた。


 驚いた顔をして立っていたのは冷雅だった。
「冷雅」
 驚いたのは紅夜の方もだ。
「あ、あの……一緒に軍本部に行かないか?」
 冷雅は柄にもなく顔を赤くしていた。
「わかったわ」


 冷雅がすっとエスコートするように手を差し出したのをみて紅夜は心が少しだけ軽くなったような気がした。


 軍に行くただの道を軍服を着て歩いている。それだけなのに紅夜は今からパーティーに行くような気持ちになっていた。


 軍のホールに入る。見慣れた景色だったが冷雅が隣にいるのでいつもと違うような気がした。前、一緒に通った時は心の中の秘密が多すぎた。今は冷雅は何もかも知っている。


 それに対して私(わたくし)の中にある朔隼に対する疑問。
「朔隼は、火影家の次期当主で、天皇陛下を操っていた。陛下は権力を月影家にとられると錯覚し、月影家を滅ぼした。錯覚させたのは朔隼だ。陛下を暗殺したあとで、紅夜を殺し、羅貴の兄上が天皇になった時に裏から完璧に操られるようにしておきたかったようだ」
 冷雅は唐突に話し出した。そして唐突に話が終わった。
 そのまま無言で歩き続ける。


 紅夜は冷静に今入ってきた情報を理解しようとした。
 朔隼はすべて偽りだった。それは私(わたくし)を故意にだまそうとしていた訳ではない。ただ仕事だったのだ。別に自分の気まぐれで動いていたわけではない。ただ仕事の中にいた自分が不覚にも生き残してしまったのが私だったという事だ。


 最後に彼が好きだったのかもしれないと言ったのは唯一自分に課していた仕事から抜け出した朔隼の正直な思いだったのかもしれない。

「教えてくれてありがとう」
 紅夜はそういうと冷雅の方を向いた。十五の時から変わらないキリリとした目は決心したような光を見せていた。


「山の中にある、あの桜の木の下に来てくれないか」
 冷雅はそういうと足早に軍に入って行ってしまった。耳が真っ赤だ。
 紅夜は冷雅が頼んできたことから何をしようとしているかは察した。そして紅夜は自分に聞いてみた。


『また、冷雅を愛することができるのか』
 紅夜は軍服を翻して歩き出した。軍人らしく堂々と。そして恋する乙女らしく頬を染めて。


あとがき
いかがだったでしょうか。初めて投稿した物語が終わるなんて、感動です!
初めからここまで読んでくださった皆さん! ありがとうございました!
「ふ、なんだ。やっぱり冷雅とくっつくじゃねえか」と思った方、素直に手をあげてください。はい、ありがとうございます。いや、やっぱり冷雅好きなんで(作者が)汗(-_-;)
また、コメント欄で感想を教えてくださるとうれしいです! あ、それと、スピンオフでどんな物語が読みたいか以下の選択肢から教えてくれると助かります!(めっちゃ悩んでいる人ここに在り)一個でも、二個でも三個でも大丈夫です!
①IF話。例えば 朔隼が死ななかったら……とか
②後日談
③あの時あの人はどう思っていたのか


 本当に読んでくださってありがとうございました!紅夜と冷雅と羅貴、そして朔隼を書くのは本当に楽しかったです!またスピンオフ回をお楽しみに!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?