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"エクセレント・プラットフォーム"とは

著書『エクセレント・カンパニー』でトム・ピーターズは、革新的で卓越した企業の特質を分析した。今回は、高校時代から好きな彼に習い、プラットフォームの"エクセレンス" を紐解く

"エクセレント・プラットフォーム"とは

私の答えはシンプルで

成長を続けながら
経済性が高まる
仕組みを合わせ持つ
プラットフォーム

現実に起こる『規模の"不"経済』

成長すれば「規模の経済」で効率が高まるのは神話であり、急成長のどこかで「規模の"不"経済」が起きるのが現実

Unit Cost: "不"経済画像1

出典: Platform vs. Linear: Business Models

エクセレンスカーブ(Eカーブ)

「規模の"不"経済」に対抗する仕組みを構築して、エクセレンスカーブ(Eカーブ)を実現したい

Unit Cost: エクセレンスカーブ画像2

Eカーブを実現する3つのEX

経済性の指標であるユニットエコノミクスを改善する要素は、(a) 効率的に顧客獲得し、(b) ローコストで回して、(c) 顧客単価を上げる の3つ

カーブを実現する3EX
(a) マーケティング・エクセレンス(MKT-EX)
 累積マーケ投資が増えるほど
 顧客獲得効率(CPA)が改善
(b) オペレーショナル・エクセレンス(OP-EX)
 累積トランザクション量が増えるほど
 コスト効率(Unit Cost)が改善
(c) カテゴリ・イクスパンジョン (CTG-EX)
 商材カテゴリが増えるほど
 顧客単価(ARPU)が高まる

それでは、3EXをみていく

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a. マーケティング・エクセレンス(MKT-EX)

最強の顧客獲得チャネルは今も、昔も「営業」。但し、営業人員を拡張しながら、営業あたりの獲得効率を高めるのは至難の業

規模の不経済 営業

"不"経済が起きる要因: 営業
 ・初期は少数精鋭チームであり、提案力が高い
 ・初期はホットリードを回るため、営業効率が高い
 ・営業ノウハウが個人に蓄積

では、「規模の経済」を効かせるケース

規模の経済 TVCM

経済性が高まる要因:TVCM:
 ・純粋想起が獲得できれば、自然流入が増える
 ・マスアプローチなので、リストの枯渇がない
 ・認知とマーケノウハウが組織に蓄積

他の事例はネットワーク効果。ネットワーク外部性が効くことで、成長と共に獲得効率が良くなる

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b. オペレーショナル・エクセレンス(OP-EX)

「立ち上げ期」には、マルチ業務を引き受け、気の利く柔軟さを合わせ持つ神オペレーターが存在する。但し、それは一度きりの神様からの贈り物。採用・育成の再現性はない

成長が続く過程で神オペに頼り切って、属人化・複雑化したオペレーションを続けた先には、「規模の"不"経済」が潜んでいる

規模の不経済 属人オペ

ラクスルでは、テックチームがトランザクションを半自動化して生産性を飛躍的に高めることでOP-EXを磨いている

プロダクト戦略

ポイントは完全自動化しないこと。DevOps的な開発アプローチを実践。テクノロジーとオペレーションをハイブリッド化して[1.5]を目指す

半自動化

テクノロジーはOP-EXを極める唯一無二の武器だが、得意不得意がある。神オペの完全自動化はできない。アマゾンの倉庫は、自動搬送ロボットが運び、ヒトが梱包する

ハンマー釘病に罹らず、半自動化でテクノロジーの社会実装を実現したい

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c. カテゴリ・イクスパンジョン(CTG-EX)

単一カテゴリのチャーンを抑え、競合シェアを奪えば、顧客単価は高まる。但し、市場の成熟と共に、お財布の大きな顧客は減り、顧客内シェアの伸びしろも小さくなる

顧客単価は「商材カテゴリを増やし、お財布を広げる」ことで、永続的に高まる。Amazonが書籍で始まり、物販、コンテンツまでの拡張して、コンシューマーのお財布を広げたのがお手本

Amazonのお財布を広げる仕組み
・リコメンデーション: 財布を広げるマーケティング
・Amazon プライム:   財布を広げるインセンティブ
・Amazon Market Place:財布を広げるラインナップ
・Fulfillment by Amazon:  同時購入の物流費削減
・Amazon Pay:        複数カテゴリ決済の手間削減

シングルカテゴリと複数カテゴリを扱うプラットフォームは、事業組織・SCM・アーキテクチャーまで異なる

プラットフォームの真骨頂であるカテゴリ拡張性と財布を広げる仕組み化を怠らず"カテゴリ・イクスパンジョン"に早期から投資したい

ここまで3EXをみてきた

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"エクセレンス"を無視するとき

「立ち上げ期」は、往々にしてエクセレンスと真逆のアプローチがいい
・マーケ:少数精鋭の営業で、顧客解像度を高める
・オペレーション:エクセルと属人で神オペを回す
・カテゴリ:トラフィックを生むカテゴリを深掘り

"エクセレンス"を考えだすとき

「立ち上げ期」を乗り越えたら、「規模の"不"経済」の顕在化まで放っておきたい気持ちを抑えて、すぐに考えだすのが理想

そのまま急成長すると、営業・属人・シングルカテゴリに最適化した人財要件や組織文化となり、想像以上にエクセレンスへの変革がハードになる

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まとめ

エクセレンス・ジレンマ
(真の拡張性 vs. 足元の効率・売上)

足元の効率化の先に、エクセレンスはない。足元の売上と効率化の魔力に打ち勝つ勇気が試される。目線を下げず、プラットフォームの10Xを信じてエクセレンスを磨きたい。

終盤を制するのは"エクセレンス"

戦いの序盤は、最先端のテクノロジーやビジネスモデルがもてはやされるが、終盤(End Of The Game)は "エクセレンス" が常に差別化の源泉。終盤を制して、"最後のひとり"になることを目指したい

未来の経済性への解像度

ベゾスが1997年に、未来のアマゾンの勝ち筋をほぼ完ぺきに予言しているビデオがある。"エクセレンス"を磨くためには、未来の事業成長とその経済性を高解像度で描き、未来の最適解を選ぶ能力が求められる


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